整形外科

梨状筋症候群についての基礎知識〜症状、機能解剖、腰椎疾患との鑑別〜

こんにちは、理学療法士のこじろうです!

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今回は梨状筋症候群について基本的な知識レベルで話をしていきたいと思います。

あまり多くない疾患の印象がありましたが、意外と発生率は多いようで す。

梨状筋症候群の症状は腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症でも生じる坐骨神経症状です。

梨状筋症候群に対してリハビリを行い、症状が軽減したという報告もされています。

今回の記事を読んで頂き、リハビリで治療可能な坐骨神経症状を見逃さないようにしてい きましょう。

 

梨状筋について

まず復習ですが梨状筋の起始、停止、支配神経を頭に入れておいてください。

以下の通りです。

起始

仙骨前面

停止

大転子尖端の後縁

支配神経

仙骨神経叢(S1・S2)

 

梨状筋症候群とは?

梨状筋下孔を通過する坐骨神経は、梨状筋との間において絞扼を受けやすく、それによる 坐骨神経障害を梨状筋症候群と呼びます。

症状は坐骨神経の刺激症状と軽い麻痺症状が生じるとされています。

 

梨状筋症候群の原因は梨状筋の腫大や筋緊張の異常、坐骨神経周囲の癒着、坐骨神経および梨状筋の解剖学的な破格が関与しています。

梨状筋症候群を呈した症例の病理学的所見では、筋の線維化や変性、ヘモグロビンの沈着など筋自体にも多くの異常を認めます。

 

また、坐骨神経に関しては Beaton分類b型(脛骨神経部が梨状筋の下を通り、腓骨神経部が梨状筋の間に挟まれるようにして出てくる)、神経周囲の癒着、神経の圧痕が認められた との報告もあります。

 

梨状筋症候群の症状

主訴で多いのは疼痛であり、臀部痛や大腿部痛、下腿・足痛などに症状が出現します。

座位での症状悪化も特徴の1つとされており、座位をとると患側臀部を浮かす方もおられ ます。

 

一方で立位や歩行で増悪する場合もあります

また、安静時痛や夜間痛が出現する方もおられ、しびれや脱力感が生じる場合もあります

 

SLRテストでは陽性例は椎間板ヘルニアと比較すると少なく、陽性でも症状が出現する角 度がヘルニアよりも大きい特徴があります。

また、筋力低下は長母趾伸筋に生じやすく、その他は前脛骨筋や下腿三頭筋、臀筋群にも 生じると報告されています。

 

梨状筋症候群の研究報告

2001年〜2018年に梨状筋症候群を疑い、梨状筋切除術を施行された報告があります。

対象件数は110 例で性差はなし。

多くは片側性であり、両側性は約7%と少なく、年齢は10代〜80代と幅が広く、平均は61歳±12歳、最多年齢層は70代であったという特徴が報告されています。

 

また、この施設において全下肢神経痛症状の患者で診断が確定した2661名の中で腰椎椎間板ヘルニアと診断されたものは 536 例(20%)、梨状筋症候群は 130 例(5%)であり、その比率は4:1であったと報告されています。

この数字を見ると決してまれな疾患ではないということが分かります。

また、他の報告でも同等の比率であったとされているものもあ ります。

 

梨状筋周辺の解剖

大坐骨孔を梨状筋が走行することでその上方に形成される孔を「梨状筋上孔」といい、下 方に形成される孔を「梨状筋下孔」といい、梨状筋症候群を理解するにはここを通る組織のイメージができるための解剖学的知識がないといけません。

梨状筋上孔を通るもの

上殿神経、上殿動脈、上殿静脈

梨状筋下孔を通るもの

坐骨神経、下臀神経、陰部神経、下殿動脈、下殿静脈など

 

坐骨神経の解剖とバリエーション

坐骨神経はL4〜S3根由来で主成分はL5,S1根です。

坐骨神経は梨状筋の前方と上双子筋の後方を走行し、その部位で絞扼されるのが梨状筋症候群です。

通常では脛骨神経部、腓骨神経部とも梨状筋の下方で梨状筋下孔を通過する例がほとんど ですが、稀に腓骨神経部が梨状筋内を貫通する例や上方から梨状筋を挟む例などがありま す。

以下にバリエーションと割合を示します。

上記の図では総腓骨神経の圧迫有無で出る症状が異なるという点が非常に重要であるため、以下も覚えておくと良いです。

【坐骨神経・脛骨神経部支配の筋】大内転筋腱性部、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭

【坐骨神経・腓骨神経部支配の筋】大腿二頭筋短頭

※坐骨神経は大腿下 1/3 付近にて脛骨神経と総腓骨神経に分岐する。

 

梨状筋症候群の疼痛誘発テスト

Freiberg’s test(フライバーグテスト)

背臥位にて股関節を他動的に屈曲、内転、内旋方向に誘導し、臀部痛が誘発されれば陽性です。

このテストは梨状筋、上双子筋などを伸張させ、神経の絞扼を増強させ疼痛の有無をみるものです。

Pace’s test(ペーステスト)

座位にて両側の股関節を内転・内旋方向に誘導します。

被験者はこれに対抗するように股関節を外転・外旋させ、筋力低下および臀部痛が誘発されれば陽性です。

これは梨状筋や上双子筋などを収縮させることによって神経の絞扼を増強させ疼痛の有無をみるもの です。

※Freiberg’s test や Pace’s test の陽性率までは確認できていませんがとても高いというわけではないようです。

 

まとめ

今回、梨状筋症候群についてまとめてみました。

意外と発症しやすい疾患であるということが分かりました。

しかし、腰椎疾患と重なるような症状もあるため、鑑別が難しい症例 でもあるということも分かりました。

坐骨神経痛の原因が腰椎疾患だけではないということを認識し、画像所見も参考にしながら腰椎疾患を否定した上で、今回まとめた特徴を照らし合わせながら症状の鑑別を行うことが望ましいと思います。

今回まとめたものが少しでも臨床の参考になれば幸いです。

なお、以下の記事も参考になることと思いますのでぜひご覧ください。

最後までご覧いただきありがとうございました!

 

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参考資料

 

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整形外科病院勤務の理学療法士 腰痛/骨盤痛/ピラティス/運動器認定理学療法士/転倒予防指導士 運動器分野、特に腰痛・骨盤周囲の疼痛について発信、吸収していきたいと思います。
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