こんにちは、理学療法士のこじろうです!
皆さんは臨床や日常の中で「腰殿部痛」によく遭遇することがあると思います。
腰臀部痛には筋、筋膜、椎間関節、神経、仙腸関節由来など様々な要因が隠れています。
その中でも今回は仙腸関節由来の腰臀部痛の特徴について、ざっくりまとめてみました。
仙腸関節痛は臨床でよく見落とされる
仙腸関節痛は臨床の現場でよく見落とされることが多いと言われています。
それは、画像診断による所見が乏しいこと、更に仙腸関節は可動性が低く、痛みにあまり関与しないと考えられてきたからです。
近年では少しずつ仙腸関節の機能について明らかになり、仙腸関節由来の疼痛の存在を理解されるようになってきました。
過去の研究報告からみた仙腸関節の問題
仙腸関節性疼痛に着目した専攻研究をみてみると以下のように報告されています。
①慢性腰痛者213名においてX線評価により、仙腸関節炎の存在を横断的に調査した研究では31,7%の腰痛者は仙腸関節の変性または関節炎を有していた。
②痛無症候者において500名の骨盤CT画像を用いて評価した研究では、仙腸関節に何らかの変性を有する者は65,1%,重度な変性を有する者は30,5%と報告されている。
③腰椎固定術後に症状が3ヶ月以上継続する腰痛者のうち仙腸関節に起因する疼痛を疑われた130名のうち、関節腔内ブロックで除痛が得られたのは21名(16%)との報告がある。
④腰椎固定術後に腰臀部痛が新たに発症した65例を対象とした研究では固定椎間数は1椎間に比べて3椎間、4椎間以上にて仙腸関節性疼痛が出現しやすいという報告がある。
①~④の報告をまとめると、仙腸関節障害を有する人は仙腸関節に何らかの変性がある一方で、変性があるからといって必ず疼痛があるわけでもない。
また仙腸関節障害は術後に生じることもあり、症状の持続期間が長い場合や固定椎間数が多い場合は仙腸関節由来の疼痛である可能性が高まるということになります。
仙腸関節の運動学
仙腸関節では、主に矢状面で比較的小さな回転・並進運動がみられます。
可動域の測定データにはばらつきがみられますが、平均値は回転運動が0,2~2°、並進が1~2mmの範囲内です。
回転運動とは腸骨上の仙骨、または仙骨上の腸骨の回転のこと。
仙腸関節由来の疼痛の特徴
臨床上で仙腸関節の機能障害を有しているかを判断するためには、仙腸関節由来の疼痛の特徴を知っている必要があります。
仙腸関節由来の疼痛には以下のような特徴があります。
- 臀部~大腿外側の連続しない疼痛(分節的)。
- しばしば下肢痛を伴うが同部に圧痛はない。
- 上後腸骨棘(PSIS)付近の臀部痛、鼠径部痛が多い。
- 特徴的な圧痛点はPSIS、腸後仙腸靭帯、仙結節靭帯、腸骨筋、多裂筋、梨状筋、大臀筋深層線維。
- 片側性が多い。
- 患側下の側臥位での疼痛。
- あぐら姿勢での疼痛。
- PSISでのone point indication sig(疼痛部位がPSISであり、広い範囲でなく指一本で示せる範囲内であるか)。
- 骨盤固定操作による疼痛の軽減と誘発テストの陰性化。
- 大臀筋や多裂筋の機能低下を生じることがある。
- 立位での運動機能低下が引き起こされる(蹴りにくい、荷重が乗せづらいといった荷重伝達障害)。
- 仙腸関節ベルトが有効。
- 仙腸関節ブロックが有効。
仙腸関節のブロックは理学療法士が行うことはできないから仙腸関節性の疼痛は確定できないけど、医師に指示をもらっている人は医師に報告・相談が必要だし、医師がいない状況で運動指導をされている人はその他に類似する症状を呈する病態の除外をしてある程度は仙腸関節性の判断がつくから除外に関する知識を持っておく必要があるね。
続けて仙腸関節由来の疼痛と鑑別すべきポイントについても話をしていきます。
仙腸関節由来の疼痛と鑑別すべきポイント
仙腸関節由来の疼痛は以下の病態と類似している症状を呈しているので、これらとの鑑別をしっかり行っておきましょう。
- 臀部にpalmar sigh(臀部に手の平で疼痛部位を示す)がある場合:梨状筋症候群、椎間関節由来、椎間板由来、神経根由来、上・中臀皮神経由来との鑑別
- 鼠径部痛:股関節疾患の否定と股関節前方組織の所見を確認
- 下肢痛:腰椎椎間板ヘルニア、坐骨神経痛との鑑別
仙腸関節由来の疼痛の特徴は著書や文献を見ていくと、多くの特徴があります。
そこで今回は「仙腸関節スコア」というものをご紹介させて頂きます。
仙腸関節スコア
仙腸関節スコアは、仙腸関節障害と腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症との鑑別に用いることができる簡易的なツールです。
<一本指さしてテスト>
人差し指を使って疼痛部位を指してもらう。その場所がPSIS上か、PSISから2cm以内の場所であれば陽性と判断。
<Newtonテスト変法>
腹臥位にて検査者の手掌を患者の腸骨翼に置き、仙腸関節をスライドさせるように押す。疼痛があれば陽性。
本日は以上で終わりましょう。
今回は仙腸関節由来の疼痛についてざっくりとまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?
腰臀部痛には様々な原因が潜んでいますので、どこの組織由来の疼痛なのかをしっかり評価をすることがまず大切だと思います。
著書や文献によって、もっと多くの特徴や評価、治療方法などがあると思いますので、今後も随時投稿していきたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました!
参考資料
・筋骨格系のキネシオロジー 原著第3版 [ P. D. Andrew,有馬 慶美,日高 正巳 ]
・阪本飛鳥:仙腸関節機能障害の病態.Sportsmedicine2017 No189:2-6
・小椋浩徳:3D-MRIに基づく骨盤の歪み(マルアライメント).Sportsmedicine2017 No189:7-12
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