整形外科

仙腸関節障害~骨盤アライメント評価と鑑別テストまとめ~

こんにちは、理学療法士のこじろうです!

前回は仙腸関節由来の腰臀部痛についての概要を説明させて頂きました。

今回は仙腸関節障害を鑑別するためのテストや骨盤のアライメント評価などを中心に説明したいと思います。

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骨盤マルアライメントの影響

骨盤に非対称性がみられる方では「蹴りにくい」「荷重が乗せにくい」といった、骨盤荷重伝達障害が起こりやすくなります。

骨盤の歪みがあると仙骨に傾斜や回旋が生じ、下位腰椎を介して上位の脊椎にもアライメント異常が生じます。

骨盤アライメントをみる上で以下の3つのポイントについて説明します。

寛骨対称性の評価

立位または背臥位にて上前腸骨棘(ASIS)と下前腸骨棘(PSIS)を触診により評価します。

矢状面では、前傾位にある寛骨においてASISは下方に、PSISは上方に位置します。

例えば写真のように右寛骨前傾、左寛骨後傾の場合、右ASISは下方へ、左ASISは上方に偏位します。このような場合に骨盤は非対称であるとわかります。

※右のASIS、PSISともに上方に偏位している場合は骨盤帯全体の左傾斜ということになります。

 

寛骨のマルアライメントに伴い、恥骨結合のずれが生じる場合があります。

その場合に股関節周囲筋の緊張に左右差が生じ、開排制限が出現することがあります。

仙骨マルアライメント

仙骨の前額面上での傾斜や水面上での回旋が生じ、寛骨の仙腸関節面に対して、仙骨の仙腸関節面がずれた状態になります。

その場合には仙腸関節をまたぐ靭帯や筋が伸張されるため、仙腸関節部や梨状筋、多裂筋などに疼痛を来たしやすくなり、更に大臀筋の機能低下も伴うことがあります。

立位または腹臥位で両側のPSIS間の垂直二等分線と仙骨の長軸との位置関係を確認します。この長軸が二等分線上に位置するものを正常とし、それに対して尾骨が左右のいずれかに偏位している状態を異常と判断します。

股関節の可動域制限とマルアライメント

股関節の可動域に左右差がある場合、寛骨の非対称アライメントを招きやすくなり、腰椎だけでなく、仙腸関節にもストレスが加わるようになります。

例えば次の点に注意してみてみます。

  • 一方に股関節伸展制限が強く左右差がある場合は、伸展制限が強い側の股関節前面筋の緊張が高く、骨盤は前傾しやすくなることも考えられます。
  • 大臀筋の緊張が高い場合は股関節屈曲時に前方のインピンジメントを生じたり、寛骨を後傾させると伴に、尾骨を引くことで仙骨を前額面上で傾斜させる原因となります。
  • 股関節の外転筋である中臀筋や小殿筋などの緊張が高くなると、立位において腸骨稜を外側に引くことで仙腸関節に離開ストレスが生じます。

以上、骨盤のアライメントをみる上では①~③はそれぞれが影響するため、セットで評価しましょう。

仙腸関節障害の鑑別テスト

前回の仙腸関節障害による疼痛の特徴でもお伝えしましたが、仙腸関節由来の疼痛の特徴として、骨盤固定操作による疼誘発テストの陰性化が挙げられます。

そのため、以下の①,②のテストでは骨盤非固定と固定した場合との2パターンで評価することが重要です。

固定した場合にテストが陰性化するか、疼痛が減弱するかをチェックします。

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ゲンスレンテスト(Gaenslen test)

健側の膝を抱え込ませることで股関節を屈曲位に保持し、骨盤を固定します。

その後、患側の股関節を伸展させて仙腸関節部の疼痛の誘発をみます。

パトリックテスト(Patrick test)

患側股関節に開排強制(外転・外旋)を加え疼痛の誘発をみます。

患側下肢は開排肢位とし、健側の下肢の上に足部が乗るようにします。

仙腸関節障害例では大転子後面から仙腸関節部に疼痛が出現します。
(※右写真の固定の手は左手で固定しても良い。)

Newtonテスト変法

腹臥位にて患側の仙腸関節部に直接圧迫を加えます。

仙腸関節を押す際に腸骨稜の頭側を押すのと尾側を押すのとでは仙腸関節にかかる力の方向が異なります。

それによって仙骨のうなづき運動(nutation)、起き上がり運動(counter-nutation)が強制され、疼痛が誘発されるものと考えられており、仙腸関節障害例での疼痛の誘発率は高いです。

Gilletテスト

立位となり、検者が母指でS2棘突起とPSISを触れ、PSISを触れた側の股関節を最大に屈曲させた時のS2棘突起とPSISとの距離をみます。

正常であればPSISは下方へ移動するが、患側ではPSISは下方へ下がりません。

鑑別テストの陽性率

仙腸関節障害例での陽性率はNewtonテスト変法で95%、ゲンスレンテストで60%、パトリックテストで45%との報告もあります。

 

診断の流れ

仙腸関節障害の診断の流れは以下の通りです。

  1. MRIやCTなどの画像では異常所見が出ないことを前提に診断を進める。
  2. 自覚疼痛部位を確認する。PSIS周囲での1本指さしテスト(前回の記事にて記載)があるかを確認する。
  3. 上記の仙腸関節障害の鑑別テストを用いて評価する。
  4. 圧痛点を確認する。(前回の記事にて記載)
  5. 仙腸関節ブロックで確定診断を行う。

 

前回と今回の記事にて仙腸関節障害の基本的な鑑別方法を記載しました。 まだまだ不十分でまとめきれていませんが今後はもう少し詳しく、疼痛部位などについて簡潔にまとめていけたらと思っています。 普段、なかなかとりきれない腰臀部痛の治療の参考になれば嬉しいです。 では、今回は以上で終了です。最後まで記事を読んで頂きありがとうございました。

参考文献

1)診断のつかない腰痛 仙腸関節の痛み
2)Sportsmedicine 2017 No.189 P12-30
3)仙腸関節の痛み 診断のつかない腰痛 [ 村上栄一 ]

 

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