こんにちは
理学療法士のだいきです。
臨床実習において学生が理学療法の場面を見学しに来ることがあると思います。
その時に理学療法士としてどんな感じで指導していますか?
前回投稿では学生の立場で何を考えてどのように見学すればよいのかポイントを解説しました。
前回投稿と今回の投稿を合わせて読んでいただければさらに理解が深まるかと思います。
今回は特に、初めて学生指導を担当するセラピストに読んでいただきたい内容です。
それではよろしくお願いします。
ざっくり内容を見る
学生を見学させる前に
学生さんが実習をしていて臨床の現場、理学療法の治療現場をすることがあると思いますが、事前に打ち合わせが必要だと思います。
いざ患者さんの見学をしていて、理学療法士が考える粗相や禁忌を学生さんは知らずにしてしまう・話してしまうことがあると思います。
患者さんの身に何か起きてからではもう遅いです。
患者さんに何か不利益が起きてしまう。しかも学生さんが関わったことが原因で…となると患者さんも学生さんも辛いです。その時に適切に対応できなかった理学療法士にも問題があると思います。
学生時代、僕とともに勉強していた学生のこんな場面を見てしまいました…
学生「患者さんの見学よろしいでしょうか?」
患者さん「良いですよ、頑張って勉強してください」
PT「良いよ、膝の痛みがある方だよ、少し問診してみようか?」
学生「ありがとうございます膝が痛いと聞いたのですが、おいくつですか?」
患者さん「え?56歳だけど…」
学生「へえそうなんですね 僕のお父さんと同じぐらいです。痛いけど頑張ってるんですね、大変ですね。息子さんは僕と同い年ぐらいですかね?」
患者さん「いや、実は離婚してる。息子は、もう自分のところにはいない。(以降無言)」
学生「あ…(以降無言)」
PT「(# ゚Д゚)」…(なんでそんなこと聞いた??)
といった場面を見たのですが…
学生からしたら何とか自分と相手の緊張感を和らげようと家族の話題を振ってみたそうです。
実は患者さんは離婚歴があり、一人暮らしでした。
見学する前から分かっていたら良かったと思います。PTからすれば自由に話す中で問診して情報収集して欲しいという願いがありましたが、あっという間に重苦しい雰囲気の時間になっていきました。
見学や会話とは言え、一言がきっかけで患者さんの精神的ダメージやクレームにも繋がりかねません。
その時に見学させて、問診させていたのは理学療法士です。理学療法士の責任にもなると思います。
見学する前から、
治療中に学生が発言しても良いか?学生がいきなり話をするのが大丈夫なのか?聞くとすればどんなことを問診するのか?などを事前に打ち合わせ出来ていれば防げれたはずです。
学生が見学につく際のリスクを考えておいた方が良いと思います。
先ほどの件のように学生が見学につくことで
・患者さんの禁忌な話題に触れてしまう
・見学の態度(表情や無言のプレッシャー、あるいは寝てしまう等々)が患者さんに不快感を与えてしまう
・患者さんが過度に緊張してしまう、場合によってはバイタルの変化が生じることも
・患者さんが見学されることで張り切って過度に動いてしまう
・学生が過度に緊張してしまっていて患者さんが気を遣ってしまう
・患者さんが学生さんの方に気を取られてしまい本来の治療が進行しにくくなる
・PTが学生に対して熱心な説明をしすぎることで患者さんに不快感を与える
等が起こりうることも考えていた方が良いかもしれません。
見学の際に患者さんへの見学の許可と説明、学生への事前の説明を行っておいた方が良いかもしれません。
患者さんからしたら学生の学年や勉強してきたことの様子が分かりません。
PTが察して例えば養成校一年生で初めての見学実習の場合は
「実は初めて実習にきて、いろいろ見て学んでいる最中です。知識や技術もまだまだかもしれませんが一生懸命見学しています。どうかお願いします」
なんて感じでPTが患者さんへ一言言っておけば患者さんにも理解していただけることがあるかと思います。
また上記に加えてただの治療場面の見学ですが「ハラスメント」が発生する可能性があることも念頭に置いておいた方が良いです。
例えば…
高齢男性患者さんに対して若い女性セラピストが見学についたときに患者さんが張り切ってしまい「彼氏いるの?」「スタイルいいね」「可愛いなあ、男性からモテるでしょ?」…なんて会話が出てしまい学生さんが不快感を感じるケース。(セクシュアルハラスメントですね…)
高齢男性患者さんに若い男性学生がついたときに患者さんが「お前は平成生まれか?、近頃の若い者はなっとらん」とお説教が始まったしまい、ただ見学だったのに学生が傷ついてしまったたケース(今はエイジハラスメント、パワーハラスメントなんて言いますが…)
先ほどのように患者さんに対して学生が発言したことで患者さんが不快感を感じるケース。
若い女性患者さんに対して男性の学生がついて、見学とはいえ女性の体を熱心に舐めまわすように見てしまい(学生はあくまで真剣に動作分析をしているのですが…)患者さんが不快な思いをしたケース。
等々…
相互にハラスメントが起きてしまう可能性があることも念頭に置いておいた方が良いかと思います。多くのケースはハラスメントをした本人は悪気があった行っていなかったケースが大半ですが…「その場を和ませようとした」「見ているだけだったので不快感を感じていると知らなかった」など後で理由を聞くことがありますが
仲良くなったつもり・信頼関係を築けたつもりでの発言や態度はハラスメント発生の原因になります。
患者さんと学生の間にいるPTがそういったことを防げれるかということも大事になってきます。
そのうえで前回投稿したような部分を意識しつつ学生には見学をしてもらうと良いのではないでしょうか?
前回投稿のポイントを以下に載せておきます。
「患者さん」「PT」「環境」
患者さん…動作、表情、身に着けているもの、肢位や生活空間、雰囲気・訴え、リスクを意識する
PT…表情、声掛け、声のトーン、徒手療法する際の立ち位置・手つき・動かす速度、介助位置や介助の手の位置
環境面…治療空間に配置してあるもの、患者さんやPTにとってリスクになりうるもの
他にもポイントや見るべきものはいろいろあるのでしょうが…まずはこの三つを見学させるつもりで実習に臨んでみてはいかがでしょうか。
また緊張している学生や、どこを見学すべきかわからない学生に関しては
「今から膝の症例を見てもらいます。歩行動作の観察から治療を開始するので、膝や股関節回りの動きを見てみよう、特にこの方は右の変形性膝関節症があるよ、痛くて本人さんも悩んでいるから今回の見学ではしつこく痛みに関して追及しすぎないように気を付けよう」
なんて見学すると良い部位やこれから行うことを最初に案内しておくと良いです。
先ほどは患者さんの見学を行うことでのデメリットを紹介しましたが見学につくことでもちろんメリットも生じます。
経験や今まで僕が聞いた話になってしまいますが、
・学生の見学によって患者さんのモチベーションが上がった
・学生の見学によってPTのモチベーションが上がった
・患者さんも学生に対して患者さん自身の体の状態を熱心に指導してくださり、勉強になった。(患者さんの職業柄、例えば元社長であった、元教員であった、なんてケースが今までもありました)
・優しい患者さんは自ら症例になっても良いと申し出ていただけたありがたいケースもありました。
・学生の見学や質問でPTや患者さんの間に今までなかった斬新な考えや治療のアイディアが生まれた。
・学生さんが見学して雰囲気が良くなった。患者さんの笑顔が増えた・緊張がほぐれた。波及して職場の雰囲気が良くなった。(実は患者さんは元野球選手、学生も野球をしており共通の話題で会話が弾んだ、なんてこともありました)
・PTの死角や見えない場所を見学でカバーしてしたので事故やリスクを回避できた。(移乗や歩行介助の際に学生が補助してくれたことで安全が確保できたなんてケースもありました)
・見学についた学生がさりげなーく、患者さんの歩行器の配置や靴をそろえたり、クッションや布団を整頓したことで整理整頓につながった、患者さんからお褒めの言葉をいただいた。
もちろん、見学が終了した際にはしっかりと学生から、PTからそれぞれ患者さんに対してお礼を伝えるべきです。「ありがとう」その一言も患者さんにとっては自身存在価値観を高める大切な言葉になる場合もあります。
以前にもこんな記事が載っていますよ。
学生とPTとが行うすべてのことが患者さんの良くなるために繋がれば幸いです。
今回は以上で終わります。
最後まで読んでいただいてありがとうございました!
参考文献
・実践!理学療法スキル 新人3年目までに身につけたい [ 小林賢 ]
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