その他

脳卒中におけるレベル別住環境整備について

脳卒中の住環境整備

はじめに

こんにちは、訪問リハビリテーション業務を10年間おこなっているcascade (@cascade1510 です!

 

私はこれまでに、主に地域でのリハビリテーションに関するテーマで記事を書いてきています。

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前回はYouTubeによる動画にて、生活環境について解説していきました。

https://youtu.be/lVokFkLp5Z4

その人と家族の周りにある人やモノ、施設や移動手段などすべてが生活環境となっている、という話でした。

 

その生活環境を良くするためには、「住環境整備」という観点が必要となります。

この住環境整備については理学療法士や作業療法士などのセラピストとして、訪問リハビリテーションなどの地域に関わっている人はもちろんのこと、病院やクリニックでのリハビリテーションにおいても退院後の生活など、切っても切り離せないものです。

 

対象者の住環境整備を検討するためには、まずその対象者について知らなければいけません。

そしてその対象者自身の疾患によっても住環境整備の視点が異なってきます。

 

そこで今回から、各疾患別における住環境整備についてそのポイントについて説明していきたいと思います。

まず初めに今回は、脳血管障害(脳卒中)についての大事な視点について移動動作のレベル別に分けてまとめましたので参考にしていただけたら幸いです。

 

脳血管障害(脳卒中)の住環境整備とは?

脳血管障害(脳卒中)には、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞がありますが、脳血管障害の7~8割を占めるのは脳梗塞となっています。

近年は、脳血管障害による死亡率は低下しているものの、依然として死亡原因の上位には入っていますし、厚生労働省の平成28年のデータ(図)では要介護の原因として認知症に次いで2番目に多い状況となっています。

要介護の原因(厚生労働省より)

脳血管障害では本人の移動レベルとともに、片麻痺の状況や麻痺の症状に合わせた住環境整備が必要となります。

 

それでは、各レベル別にみていきたいと思います。

 

屋外歩行レベル

この屋外歩行レベルは、杖や下肢装具など使用しているかどうかに関わらず屋外を独りで歩行可能なレベルを指します。

このレベルでは、基本的に身の周りの基本動作がおおむね自立しているものの、両手を使用するようなADLもしくはIADLなどの生活動作に不便を感じたりすることがあります。

 

ここでの住環境整備としては、麻痺側の上肢や手指を補ったり、片手で代償できる環境をつくることがあげられます。

また、ADLの中では入浴動作での浴槽のまたぎ動作や、トイレでの立ち上がり動作などに不安定さがあることも多いので、手すりの設置安定した家具の設置などにより動作を安定させ転倒を防ぐ配慮も必要です。

 

屋内歩行レベル

屋内歩行レベルは、杖、つたい、介助歩行で屋内を移動できるが、買い物や通院などでは車椅子を必要とするレベルを指します。

このレベルでは、食事や整容動作は自立しているが、起居動作や歩行・段差昇降に介助を要することもあります。

生活における住環境整備としては、まず手すりなど移動を安全にするための整備を行います。そのうえでできるだけ玄関と同じ階で生活できるようにしたり、布団で寝ていたものをベッドに変えたりするなど、和式生活から洋式生活への転換も考慮に入れる必要があります。

 

車椅子レベル

車椅子レベル屋内でも屋外でも車椅子を使用しているレベルを指します。

このレベルでは、下肢や体幹の麻痺が重いことにより車椅子を使用せざるを得ないことも多いかと思われます。

日常生活では、立位保持や立ち上がり動作が困難であり、車椅子への移乗動作も介助が必要になったりします。

また車椅子を使用して移動や方向転換できる動線を確保するために廊下の幅を広げたり場合によっては手すりを無くすなどの住宅改修を行ったりすることも考えます。

そしてこの車椅子レベルでは、電動ベッドなどの特殊寝台や以上の際の介助量軽減のためのリフトの導入を考慮することもあります。

なお、入浴動作について、浴槽をまたぐことが難しいことが多いので、主にシャワー浴となることが多いですが、浴槽でのリフトの使用や介助によりお風呂に入ることも可能になるので、本人の意思や家族と相談しながら決定していくことがよいかと思われます。

 

寝たきりレベル

寝たきりレベル日常生活のほとんどを介助により行われるレベルで、多岐にわたっての住環境整備が必要となります。

寝返りや起き上がり動作にも介助を要するため、スライディングシート体位変換器などの福祉用具や福祉機器などにより介助量の軽減を図ります。

ADLでは食事動作にも介助が必要であることが多く、自宅では訪問介護サービスなどもうまく利用してなるべく介護する人の身体的・精神的負担を減らしていくよう検討する必要もあります。

この寝たきりレベルにおいては、通所や入院などで外出する場合に備えて移動手段も大いに検討する必要があります。

車椅子で移動する場合は、移乗動作での介助量の確認、車椅子での座位姿勢が安定に安楽にとれるかの評価をおこなうことも必要で、図のようにクッションによるポジショニングなどで姿勢の安定を図ることもあります。

そして場合によっては玄関の段差に対する段差解消機スロープなど設置する必要もあります。

 

おわりに

今回は脳血管障害における住環境整備についてまとめました。

各疾患別にそれぞれ必要なことはありますし、それぞれの移動レベルに応じた対策をとっていくことはとても重要だということを伝えたつもりではあります。

しかしそれより大事なことは、その人その人の個別性にあった症状や性格、家族の意向などを総合して考えていくことであり、そこに関わる多職種が一つの目標に向かって一丸となって進んでいくことだと思っています。

 

今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

 

ABOUT ME
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2020年4月より大学教員/Physical Therapist /Ph.D in rehabilitation/ 大阪大学理学部高分子科学→修士(M.S.)→Teijin Limited研究職→大学リハ学科→博士/介護予防/訪問リハ/研究や国試の勉強などを発信 理学療法士として何ができるか、理学療法士の枠にこだわらずに何ができるか、ワクワクするような新たな可能性を追い求めていきましょう!
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