皆さんこんにちは、理学療法士の眞本匠です。
普段は回復期病棟で働いておりまして、脳卒中や骨折、心不全や廃用症候群等を主にリハビリしております。
さて、これまでの私のCLINICIANS記事は、骨折や循環器、拘縮といった内容でしたが、
今回は違った分野をテーマにしてみました。
それは、バランスです。
バランスって複雑ですよね。。。
様々な要素が絡み合い、バランスとして現れるので、一口に語れないですし、取っつきにくくもあり。ただそれが、面白いところでもあります。
そんなわけで、今回はバランスを構成する中でも、知識を臨床で応用しやすい(私的に)
感覚の重みづけ
これに絞り、簡単にですがご紹介していきたいと思います。
感覚の重みづけとは?
そもそもこの言葉の意味が分からないと、話が進まないので。
そもそも、姿勢制御においては、【視覚・体性感覚・前庭感覚】の3感覚がとても重要です。これはお約束です。
この3感覚が、それぞれ姿勢制御の際のフィードバックとして貢献してくれるのですが、
姿勢の条件を変えると、視覚・体性感覚・前庭感覚の依存度がそれぞれ変化します。
これを、【感覚の重みづけ】と言います。
はい、こういうわけですね。
どうですか?この説明だけでスッキリしますか?
しませんよね。。というわけで、もう少し細かく説明します。
例えば、普通に立った状態では全く重心動揺が無く、安定しているとします。
ですが、閉眼すると一気に動揺が大きくなり、ステップ反応が出てしまう。。。
ここまでくると、視覚を遮断したとはいえ、あまりにも動揺が大きすぎます。
この場合は、視覚に重みを置いている姿勢制御をしている。
って話になります。なので、
視覚>体性感覚、前庭感覚
こういう関係性になります。
これこそが、感覚の重みづけといわれる所以です。
もう1パターン、ご紹介しますね。
例えば、安静立位では重心動揺なしの人がいたとします。
で、そこから閉眼します。ここまではさっきと同じ。ですが、全くといっていいほど動揺は増加しませんでした。
しかし、今度は支持面の環境を変化させます。
柔らかい素材のパッド上に立位をとり、閉眼していたのを今度はバッチリと開眼します。
これで、明らかな動揺が増加しますと、何の感覚が重みづけされていると思いますか?
はい、体性感覚ですね!
体性感覚>視覚、前庭感覚
この関係性が、成り立ちます。
ここまでで、感覚の重みづけの意味は、ご理解いただけたかと思います。
感覚の重みづけ ~評価の流れ~
アプローチの前に、まずは評価からですね。
3つの感覚のうち、どの感覚に重みを置いているのか。
これを見つけ出す評価ですね。
簡単に言うと、先ほどご紹介した2つの例が評価になっているわけですが、
手順を追ってご説明しますね。
①視覚・体性感覚・前庭感覚が障害される基礎疾患があるか
まずはこれを評価しておく必要があります。
何故なら、基本的には、障害されていない感覚に重みづけされるからです。
例えば、全盲の方なら、体性感覚、若しくは前庭感覚によって姿勢制御のフィードバックをしていると考えて、大方問題ありません。
脳卒中で足底感覚が脱失しているのなら、視覚、前庭感覚によってカバーしています。
まずはこれらを評価し、ある程度の予測を立てます。もちろん、私のやり方です。
では次。
②開眼、固い床面、頚部正中位で安静立位をとる。
開眼=視覚+、固い床面=体性感覚+、頚部正中位=前庭感覚+
つまり、3つの感覚をギラギラに活躍させた状態での立位を見ます。
これで明らかに不安定である場合、私的考察ですが、
A.3つの感覚とも機能が低下している。
B.3つの感覚以外の要素(例えばアライメントや筋力、反射)
こんな理由が考えられますね。
では、仮に全く動揺が無かったとしましょう。
となれば、次の評価が必要です。
では次。
③ ②と同じ姿勢のまま、閉眼する。
閉眼で、視覚の要素を排除します。
これで、
動揺が増える場合→視覚による重みづけが大きい。
動揺が変わらない場合→視覚にあまり依存していない。
こんな感じですね~。
これ、臨床ですると、本当に面白いです。同じくらいの筋力、認知機能にも関わらず、
5秒と持たず転倒しかける方もいれば、全く変わらない方もいます。
では次。
④ ②と同じ姿勢のまま、床面を不安定にする。
この評価をした結果、
動揺が増える場合→体性感覚による重みづけが大きい。
動揺が変わらない場合→体性感覚にあまり依存していない。
こうなりますね。
では、最後に
⑤ ③と④を同時に評価
これにより、視覚と体性感覚のフィードバックが限りなく減弱するので、前庭感覚を中心とした姿勢制御となります。
ですが、ここまですると大体の方は動揺が増加します。
なので、私は
③と④で、視覚と体性感覚の重みづけを見るのが臨床では特に重要と考えています。
感覚の重みづけを意識したアプローチ
さあ、いよいよアプローチの話に入っていきます。
簡単に図を作ったので、ご覧ください。
何だか小難しくまとめてはいますが、要は
評価した結果の
依存度が大きい感覚を更に高めるのか?
依存度が小さい感覚を高めていくのか?
この2択ですね。
どちらなのか、この選択が難しいところではありますが、やはりこれは個別性が高いです。
例えば、かなり極端に説明しますと、
全盲の方は視覚の依存度が小さいですよね?
ですが、かといって柔らかい床面の上でバランス課題をしたりはしませんよね?
まあ、こういう話です。
脳梗塞で、片側の足底だけ感覚が中等度鈍麻しているレベルなら、
ボディイメージといった考えも踏まえ、閉眼して体性感覚を高めた状態での課題が望ましいかもしれません。
この様に、どの感覚を狙うかは個別性が高いので、
基礎疾患や減弱している理由を紐解く必要が大きく絡んできます。
ちなみに、頸部の動きを起こすと、かなり動揺が大きくなります。
これは前庭感覚の刺激に繋がるので、課題に組み込むことをお勧めします。
※あまり速く動かすと、眩暈を引き起こす要因となるので注意してください。
まとめ
では、最後にこれまでの内容をまとめます。
・視覚・体性感覚・前庭感覚が障害される基礎疾患が無いかを評価。
・どの感覚に重みづけが大きく、どの感覚に依存度が小さいかを評価。
・基礎疾患を踏まえ、重みづけが大きい感覚を高めるか、依存度が小さい感覚を高めるかを判断しアプローチする。
補足:頸部の動きはおすすめですよ~。
では、今回はこの辺で!
失礼します!(^^)!
何か分かりにくいところがあれば、ツイッターのDMにご連絡いただければと思います。
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