徒手療法

腱板断裂好発部位の解剖

こんにちは!藤沢肩関節機能研究会の郷間(@FujikataGoma)です。

今回は『腱板断裂好発部位の解剖』についてお話しさせていただきます。

今回の記事を読んでいただくことで、腱板周囲の解剖学的構造の特徴と腱板断裂に対する治療戦略や腱板断裂の予防についてのヒントが得られると思います。

~本記事は以下に1つでも該当する先生には特にオススメです~
▪そもそも腱板断裂というものを詳しく理解していない
▪腱板断裂の好発部位を知らない
▪腱板付着部の解剖について詳しく理解していない
▪腱板断裂疾患を担当しているけど、どこに注意すればいいかわからない

それでは一つずつ解説していきます。

 

肩関節機能研究会リンク

 

ちなみに私たちが運営している肩関節機能研究会HPでは肩関節に関する記事を50記事以上投稿しています(^-^)

こちらに肩関節機能研究会HPのリンクもありますのでぜひご覧ください。

⇩肩関節機能研究会HP⇩

腱板断裂とは

画像14

腱板断裂は1788年Monroによって発見され
1911年Codmanによってはじめて手術的修復が行われました。
Codmanの著書であるThe Shoulderは現代の肩関節外科のバイブルとして、現在肩関節外科の定礎となっている名著です。

画像1

肩腱板筋群(Rotator cuff muscle)とは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称です。

そして腱板断裂とはそれらの深層筋が不全断裂もしくは全層断裂した際に診断される整形外科疾患です。

腱板断裂の発生頻度は年齢とともに増加するため、退行性変化であると考えられています。
もちろん外傷性腱板断裂もあります(転倒、オーバーヘッドスポーツ、etc)

腱板断裂の好発部位

一般的に腱板断裂の好発部位は
”棘上筋と棘下筋の接合部(重なる部分)に多い”と言われています。

では実際はどのあたりで腱板断裂は好発するのでしょうか?

画像14

腱板断裂の好発部位は上腕二頭筋腱の約15mm後方と言われています。

☑腱板断裂の好発部位
・233人(64.7±10.2歳)360肩(全層断裂272肩,不全断裂88肩)
・断裂好発部位  上腕二頭筋腱の約15 mm後方
・断裂幅 平均16.3±12.1 mm 
Kim HM,et al:Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears An Analysis of Three Hundred and SixtyShoulders.JBJSM92:1088-1096,2010

※ワシントン大学の研究のため、被験者の大半が欧米人の可能性があります。

では上腕二頭筋腱の約15 mm後方にはどんな組織が存在するのでしょうか?

皆川先生の解剖学的研究によると

☑棘上筋と棘下筋の接合部
・腱板断裂や軟部組織、骨異常の無い9名10肩の解剖調査
・上腕二頭筋腱の後方13〜17mmの位置は、棘上筋と棘下筋腱の接合部がある
Hiroshi Minagawa et al.Humeral Attachment of the Supraspinatus and InfraspinatusTendons: An Anatomic Study Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 14, No 3 (April), 1998: pp 302–306

と報告しています。

では骨ランドマークの場合は上腕頭筋長頭腱の15mm後方に何が存在するのでしょうか?

画像7

そうです。
上腕骨大結節の上腕骨大結節上小面(superior facet :SF)と上腕骨大結節後正面(middle facet:MF)の境界部にあたります。

ではこの境界部には何が位置しているのでしょうか?

ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、
従来、養成校の解剖学の授業では
棘上筋➡上腕骨大結節上小面(superior facet :SF)
棘下筋➡上腕骨大結節後正面(middle facet:MF)と学んだと思います。

かく言う私も棘上筋はSF、棘下筋はMFと教えられ、一生懸命暗記していました。

では、今現在の常識とされている付着部はどのようになっているのでしょうか?

スクリーンショット (816)

棘上筋と棘下筋の付着部
棘上筋:
大結節の前内側部のみに付着する。約1/5の例では大結節にとどまらず、結節間溝をまたぐように乗り越えて小結節の上前部にまで達している。

棘下筋:大結節上面の前外側部にまで達している。
望月智之.他 : 棘上筋および棘下筋の前腕骨挿入:回旋腱板の足跡に関する新しい解剖学的所見. JBJS 90.5(2008):962-969

これらの情報から

スクリーンショット (818)

腱板断裂の好発部位は棘下筋と考えたほうが妥当ではないか?ということも考えられますね。

腱板断裂に対する治療戦略

みなさんはエコーで腱板の断裂を見つけた(観察できた)場合や
医師からの診断された患者さんを担当する場合は
どのような点に注意しますか?

どこが切れているのか?
どのくらい切れているのか?
切れている組織は何か?
その組織はどのような動きをしているのか?
どのような運動を制限するべきか?
どのような運動が行いにくいのか?
どのようにプランを立案していくのか?

を考えることはとても大切なことだと思います。

これらに関しては、実際の臨床現場ではほとんどがケースバイケースです。
様々な書籍のフローチャートにも目を通してみましたが全ての条件に対応するのは難しいと思いました。
”この疾患の時はこうする!”
”この切れ方はこれでよくなる!”みたいなものはないですよね💦

では、どのように治療を立案していけばいいのか?

私が最も意識していることはマイナスにしない、させないことです。
もちろん『リハビリをやったほうが良くなる介入』をできるのであればそれに越したことはありません。

みなさんならどうですか?
すごく良くなることもあれば、悪くしてしまうこともあるセラピスト

あまり効果がでないこともあるけど、絶対にマイナス(悪化)にさせないセラピスト

どちらがいいかは人それぞれだと思いますが、私なら後者に担当してもらいたいです。

何が言いたいかというと、
治療立案において少しでもマイナスになりうるリスクファクターを把握し除外していくことが重要”だと考えています。

そのために何が必要かというと、ミクロなレベルまで解剖学的、運動学的、生理学的な理解をすることだと思います。

もちろん私もまだまだですが、皆さんも一緒に学んでいきましょう!

ということで、次回は腱板断裂に対する治療戦略についてもう少し掘り下げた解説をしていきたいと思いますので、ぜひ来月の記事もご覧ください(^-^)✨
また、今回の記事に対して、批判的な見解も述べていきたいと思いますので合わせてご覧ください👍!!

私自身、本記事を執筆しながら自身の治療に対してたくさん反省点が出てきました。

解剖学的、構造的な理解をしていたにも関わらず
腱板断裂は棘上筋と棘下筋の境目に多い”という昔の解釈がなかなか消えず
頭の中を整理しきれていませんでした(^-^;

この記事をまとめることで、私自身も頭の中を整理できたのでとてもいい機会になりました(^-^)
この場をお借りして感謝申し上げます✨

まとめ

▪腱板断裂の発生頻度は年齢とともに増加する。
▪腱板断裂の基本は退行性変化である。
▪腱板断裂の好発部位は上腕二頭筋腱の約15mm後方である。
▪上腕二頭筋腱の約15mm後方(腱板断裂好発部位)は大結節のSFとMFの境界部が存在する。
▪腱板断裂好発部位は棘下筋(SFとMFの境界部)である。
▪棘上筋の作用は外転+屈曲、棘下筋の作用は外転+外旋と推測できる。
▪治療は何よりもリスクファクターを把握し除外することが重要である。

以上、藤沢肩関節機能研究会 郷間でした(^ ^)

参考文献

・Kim HM.et al:Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears An Analysis of Three Hundred and SixtyShoulders.JBJSM92:1088-1096,2010

・Hiroshi Minagawa.et al:Humeral Attachment of the Supraspinatus and InfraspinatusTendons: An Anatomic Study Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 14, No 3 (April), 1998: pp 302–306

・望月智之.他 : 棘上筋および棘下筋の前腕骨挿入:回旋腱板の足跡に関する新しい解剖学的所見. JBJS 90.5(2008):962-969

 

肩関節機能研究会リンク

 

ちなみに私たちが運営している肩関節機能研究会HPでは肩関節に関する記事を50記事以上投稿しています(^-^)

こちらに肩関節機能研究会HPのリンクもありますのでぜひご覧ください。

⇩肩関節機能研究会HP⇩

 

実践!ゼロから学べる肩肘の臨床マガジン

今回執筆した『ガイドラインに基づく肩関節周囲炎治療のススメ』のような内容をより詳しく丁寧に解説した記事を提供しています。

肩肘関節治療に従事している理学療法士5名が肩肘の治療に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術共有する『肩肘マガジン』は毎月5記事以上投稿しています。

興味のある方は是非ご一読ください(^-^)

肩肘マガジンを見てみる

肩関節関連記事

⇩藤沢肩関節機能研究会note第一弾⇩
研究会で普段使用している資料の全てを公開しています。

https://note.com/fujikatasociety/n/nc09076ef960b

藤沢肩関節機能研究会note第二弾
研究会で普段使用している資料の全てを公開しています。

https://note.com/fujikatasociety/n/n2544677b87fd

 

藤沢肩関節機能研究会

藤沢肩関節機能研究会では、肩関節を中心にエコーを用いた動態評価から徒手療法を学ぶ研修会を毎月藤沢で開催しています。
ご興味のある先生方はお気軽にご連絡ください(^-^)

肩関節を中心にエコーを用いた動態評価と治療技術を磨く研修会
藤沢肩関節機能研究会LINE@officialaccount
藤沢肩関節機能研究会勉強会情

学生から臨床経験5年前後にフォーカスをあてたハンズオン中心の肩関節セミナー
藤沢肩関節機能研究会フレッシュマンセミナーのLINE@officialaccount
藤肩藤肩研究会フレッシュマンセミナー情報

 

 

 

 

プロフィール

【ライター】
郷間光正(ごうまこうせい)

【主な仕事】
・整形外科クリニックでのリハビリテーション
・パーソナルトレーニング、パーソナルケア(週2~3件)
・藤沢肩関節機能研究会の講師(月1~2回)

【資格】
・理学療法士
・運動器認定理学療法士(スポーツ領域)
・STAR スポーツリズムトレーニングディフューザー
・STAR リズムステップディフューザー

【専門分野・得意分野】
・肩関節(一般整形外科、スポーツ整形外科)
・肘関節(一般整形外科、スポーツ整形外科)
・エコーによる動態評価
・レントゲン、CT、MRI 読影術

【各種リンク】
藤沢肩関節機能研究会ホームページ➡ホームページ
Twitter➡藤沢肩関節機能研究会 郷間(@FujikataGoma)
Note➡藤沢肩関節機能研究会 郷間
マガジン➡肩肘マガジン

ABOUT ME
藤沢肩関節機能研究会 郷間
藤沢肩関節機能研究会 郷間
職業:理学療法士/整形外科勤務/パーソナルトレーニング/資格:運動器認定理学療法士(スポーツ領域)/活動:藤沢肩関節機能研究会代表/藤沢肩関節機能研究会では神奈川県藤沢市で毎月エコーを用いた肩肘関節の動態評価と臨床応用技術を磨く研修会を開催しています。 皆さんによりよい肩・肘関節の情報を発信していきます!
スポーツをしている方やトレーナーへおすすめしたいグッズ&トレーニングレッスン

 

スポーツに関わるなら絶対持っておきたいグッズ

特におすすめしたいのが全身の筋膜リリースや体幹トレーニングができちゃうフォームローラー!

一本持っているだけで全身を隈なく調整できちゃうのでちょーおすすめ(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾アスリートや優秀なトレーナーの方は必ずマイフォームローラーを持っていって過言ではないです。

専門家がおすすめするフォームローラー4選

 

パフォーマンスを上げる必見レッスン

スポーツといえば動きを鍛えるトレーニングを行うことが非常に重要です。

そこでおすすめしたいのがピラティス!ピラティスは“動き”を鍛えるトレーニングとして注目されており、多くの有名アスリートも導入しているエクササイズです。

ピラティスインストクター資格を持っている代表たけの一番おすすめはPHIピラティスのレッスンですので興味がある方はぜひ一度受けてみてください!

インストラクター資格も取れますのでトレーナーの方も必見です。

PHI Pilates

 

なお、おすすめはPHI Pilatesですが、信頼がおけるだけありレッスンはそれなりに高額です。体験をしたいという程度であれば、有名どころで格安のbasisがおすすめ!体験レッスンは安すぎて驚きます。

↓basisピラティスレッスン↓

 

専門家向けYoutube動画

CLINICIANSのYoutubeでは臨床に役立つ動画を無料で公開しています!ぜひチャンネル登録を!

Youtubeを見てみる

 

一般向け体のケア&エクササイズ動画

こちらのYoutubeでは、専門家も勉強になる体のケアやパフォーマンスアップに関する動画を無料で公開しています!ぜひチャンネル登録を!

Youtubeを見てみる

 

スキルアップを倍加速させるnote

noteでは無料で体の専門家向けに結果の出せる評価・治療技術をお腹いっぱいになるぐらい充実のコンテンツで提供しています!こちらもぜひチェックを!!

noteを見てみる