こんにちは!藤沢肩関節機能研究会の郷間(@FujikataGoma)です。
今回は『腱板断裂好発部位の解剖』についてお話しさせていただきます。
今回の記事を読んでいただくことで、腱板周囲の解剖学的構造の特徴と腱板断裂に対する治療戦略や腱板断裂の予防についてのヒントが得られると思います。
~本記事は以下に1つでも該当する先生には特にオススメです~
▪そもそも腱板断裂というものを詳しく理解していない
▪腱板断裂の好発部位を知らない
▪腱板付着部の解剖について詳しく理解していない
▪腱板断裂疾患を担当しているけど、どこに注意すればいいかわからない
それでは一つずつ解説していきます。
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腱板断裂とは
腱板断裂は1788年Monroによって発見され
1911年Codmanによってはじめて手術的修復が行われました。
Codmanの著書である「The Shoulder」は現代の肩関節外科のバイブルとして、現在肩関節外科の定礎となっている名著です。
肩腱板筋群(Rotator cuff muscle)とは棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の総称です。
そして腱板断裂とはそれらの深層筋が不全断裂もしくは全層断裂した際に診断される整形外科疾患です。
腱板断裂の発生頻度は年齢とともに増加するため、退行性変化であると考えられています。
もちろん外傷性腱板断裂もあります(転倒、オーバーヘッドスポーツ、etc)
腱板断裂の好発部位
一般的に腱板断裂の好発部位は
”棘上筋と棘下筋の接合部(重なる部分)に多い”と言われています。
では実際はどのあたりで腱板断裂は好発するのでしょうか?
腱板断裂の好発部位は上腕二頭筋腱の約15mm後方と言われています。
☑腱板断裂の好発部位
・233人(64.7±10.2歳)360肩(全層断裂272肩,不全断裂88肩)
・断裂好発部位 上腕二頭筋腱の約15 mm後方
・断裂幅 平均16.3±12.1 mm
Kim HM,et al:Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears An Analysis of Three Hundred and SixtyShoulders.JBJSM92:1088-1096,2010
※ワシントン大学の研究のため、被験者の大半が欧米人の可能性があります。
では上腕二頭筋腱の約15 mm後方にはどんな組織が存在するのでしょうか?
皆川先生の解剖学的研究によると
☑棘上筋と棘下筋の接合部
・腱板断裂や軟部組織、骨異常の無い9名10肩の解剖調査
・上腕二頭筋腱の後方13〜17mmの位置は、棘上筋と棘下筋腱の接合部がある
Hiroshi Minagawa et al.Humeral Attachment of the Supraspinatus and InfraspinatusTendons: An Anatomic Study Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 14, No 3 (April), 1998: pp 302–306
と報告しています。
では骨ランドマークの場合は上腕頭筋長頭腱の15mm後方に何が存在するのでしょうか?
そうです。
上腕骨大結節の上腕骨大結節上小面(superior facet :SF)と上腕骨大結節後正面(middle facet:MF)の境界部にあたります。
ではこの境界部には何が位置しているのでしょうか?
ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、
従来、養成校の解剖学の授業では
棘上筋➡上腕骨大結節上小面(superior facet :SF)
棘下筋➡上腕骨大結節後正面(middle facet:MF)と学んだと思います。
かく言う私も棘上筋はSF、棘下筋はMFと教えられ、一生懸命暗記していました。
では、今現在の常識とされている付着部はどのようになっているのでしょうか?
棘上筋と棘下筋の付着部
棘上筋:大結節の前内側部のみに付着する。約1/5の例では大結節にとどまらず、結節間溝をまたぐように乗り越えて小結節の上前部にまで達している。
棘下筋:大結節上面の前外側部にまで達している。
望月智之.他 : 棘上筋および棘下筋の前腕骨挿入:回旋腱板の足跡に関する新しい解剖学的所見. JBJS 90.5(2008):962-969
これらの情報から
腱板断裂の好発部位は棘下筋と考えたほうが妥当ではないか?ということも考えられますね。
腱板断裂に対する治療戦略
みなさんはエコーで腱板の断裂を見つけた(観察できた)場合や
医師からの診断された患者さんを担当する場合は
どのような点に注意しますか?
どこが切れているのか?
どのくらい切れているのか?
切れている組織は何か?
その組織はどのような動きをしているのか?
どのような運動を制限するべきか?
どのような運動が行いにくいのか?
どのようにプランを立案していくのか?
を考えることはとても大切なことだと思います。
これらに関しては、実際の臨床現場ではほとんどがケースバイケースです。
様々な書籍のフローチャートにも目を通してみましたが全ての条件に対応するのは難しいと思いました。
”この疾患の時はこうする!”
”この切れ方はこれでよくなる!”みたいなものはないですよね💦
では、どのように治療を立案していけばいいのか?
私が最も意識していることは『マイナスにしない、させないこと』です。
もちろん『リハビリをやったほうが良くなる介入』をできるのであればそれに越したことはありません。
みなさんならどうですか?
すごく良くなることもあれば、悪くしてしまうこともあるセラピストと
あまり効果がでないこともあるけど、絶対にマイナス(悪化)にさせないセラピスト。
どちらがいいかは人それぞれだと思いますが、私なら後者に担当してもらいたいです。
何が言いたいかというと、
”治療立案において少しでもマイナスになりうるリスクファクターを把握し除外していくことが重要”だと考えています。
そのために何が必要かというと、ミクロなレベルまで解剖学的、運動学的、生理学的な理解をすることだと思います。
もちろん私もまだまだですが、皆さんも一緒に学んでいきましょう!
ということで、次回は腱板断裂に対する治療戦略についてもう少し掘り下げた解説をしていきたいと思いますので、ぜひ来月の記事もご覧ください(^-^)✨
また、今回の記事に対して、批判的な見解も述べていきたいと思いますので合わせてご覧ください👍!!
私自身、本記事を執筆しながら自身の治療に対してたくさん反省点が出てきました。
解剖学的、構造的な理解をしていたにも関わらず
”腱板断裂は棘上筋と棘下筋の境目に多い”という昔の解釈がなかなか消えず
頭の中を整理しきれていませんでした(^-^;
この記事をまとめることで、私自身も頭の中を整理できたのでとてもいい機会になりました(^-^)
この場をお借りして感謝申し上げます✨
まとめ
▪腱板断裂の発生頻度は年齢とともに増加する。
▪腱板断裂の基本は退行性変化である。
▪腱板断裂の好発部位は上腕二頭筋腱の約15mm後方である。
▪上腕二頭筋腱の約15mm後方(腱板断裂好発部位)は大結節のSFとMFの境界部が存在する。
▪腱板断裂好発部位は棘下筋(SFとMFの境界部)である。
▪棘上筋の作用は外転+屈曲、棘下筋の作用は外転+外旋と推測できる。
▪治療は何よりもリスクファクターを把握し除外することが重要である。
以上、藤沢肩関節機能研究会 郷間でした(^ ^)
参考文献
・Kim HM.et al:Location and Initiation of Degenerative Rotator Cuff Tears An Analysis of Three Hundred and SixtyShoulders.JBJSM92:1088-1096,2010
・Hiroshi Minagawa.et al:Humeral Attachment of the Supraspinatus and InfraspinatusTendons: An Anatomic Study Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, Vol 14, No 3 (April), 1998: pp 302–306
・望月智之.他 : 棘上筋および棘下筋の前腕骨挿入:回旋腱板の足跡に関する新しい解剖学的所見. JBJS 90.5(2008):962-969
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・藤沢肩関節機能研究会の講師(月1~2回)
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・理学療法士
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・STAR スポーツリズムトレーニングディフューザー
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