整形外科

頚椎後縦靭帯骨化症の基礎

こんにちは!理学療法士のこじろう(@reha_spine)です!!

CLINICIANSの中で主に腰痛や脊椎、運動器疾患に関する内容をアップしております。

今回は「頚椎後縦靭帯骨化症:OPLL」についての概要についてまとめましたので最後までご覧いただけると幸いです!

頚椎後縦靭帯骨化症について

頚椎椎体、椎間板の後面にあり脊柱管の前壁をなす後縦靭帯が肥厚、骨化し、脊髄を緩徐に圧迫して脊髄症状を引き起こす疾患です。厚生労働省指定の「難治性疾患」の1つでもあります。

脊髄は骨化巣により前方から圧迫されて変形し、乏血、静脈うっ滞をきたします。頚椎の伸展運動に伴い、前方の骨化巣と後方の黄色靭帯によってはさみうちにされることも脊髄症の発現に重要な要素となります。

また、脊髄症発症にはOPLLによる圧迫以外に、椎間板ヘルニアが関与しているものが約60%存在し、特にこの率は「分節型」で最も多いとされています(81%)。

発生率

日本人を対象としたOPLLの発生頻度は約3%といわれています。欧米では日本の約1/10の発症率といわれています。

男女比率

日本では男性の方が女性と比較して約2倍の頻度で罹患するといわれています。

遺伝的要素

患者の兄弟で頚椎OPLLが認められるのは約30%であり、遺伝的因子が強く関与しています。X線的に頚椎OPLLが認められても無症状の場合もあります。

注意としては難病を強調しすぎて患者家族に不安を与えるようなことには注意をしなければいけません。

X線分類

頚椎側面像でみると骨化の形態は分節型、連続型、混合型に分類されます。骨化巣が分節的に存在するものと、連続するもの、両者が混合するものです。

単純側面X線像で連続型骨化はとらえやすく、分節型の把握には側面断層撮影が有効となります。

CT像では骨化巣の横断面の形や大きさと脊柱管内の占拠の様子をとらえることができます。

また、OPLLでは胸椎・腰椎にも生じるため、脊椎全体の側面X線写真の撮影が望ましいとされています。

症状

OPLLは必ずしも症状を発現するとは限らず、無症候性のものもあります。

ある報告では、OPLLの有症状率は20%であり有症状群の約40%は脊髄症状を呈するとされています。

別の報告では有症状率は50%で、脊髄症状29%,神経根症状71%との報告もあります。

多くの患者では手指のしびれ、巧緻運動障害、下肢の痙性麻痺による歩行障害を主訴とします。

具体的な症状と頻度

・上肢のしびれ・痛み(74%)
・項・頚部痛(64%)
・下肢の腱反射異常(58%)
・上肢の感覚鈍麻(55%)
・上肢の腱反射異常(55%)

その他、膀胱直腸障害や下肢痛などが生じます。(胸椎OPLLでは頸椎OPLLに比べ胸腹部の締め付け感やしびれに加え、歩行障害や膀胱直腸障害が生じやすくなります。)

初期症状としては頸部痛、肩こり、手足のしびれ、手指の巧緻運動障害、歩行障害、脱力などが発症しやすいとされています。

症状出現の平均年齢は50歳前後とされています。

X線計測法

X線計測での脊髄圧迫の指標をご紹介します。

脊柱管狭窄率

脊柱管前後径に対する骨化巣の厚みの割合をいいます。

30~40%以上で脊髄症状が発生し、50%を超えると脊髄症が発生リスクが高く60%以上で脊髄症状が必発であるという報告があります。

有効脊柱管前後径

骨化巣から椎弓までの脊柱管の残りの距離をいいます。

米国の報告としては有効脊柱管前後径が9mmの場合には脊髄症発症の臨界であるとされています。

日本の研究では6mm以下の症例では全例脊髄症状が出現し、14mm以上であれば脊髄症は発症しないといわれています。

また、脊髄症状発現症例の平均8,2mmという報告もありますが、脊髄症発症の要因には動的因子の関与もあるため、単純に有効脊柱管前後径だけで脊髄症発症との関係を検討することは注意が必要となります。

6mm以上の症例では脊髄症の発現は動的因子の関与が大きいとも報告されています。

 

 

動的因子と脊髄圧迫

脊髄の前後径および脊髄の断面積は頸椎屈曲時に比べ伸展時に減少しますが、13,7%の割合で屈曲時に減少するという報告されています。これは頸椎後弯タイプが屈曲時により圧迫されやすいことが関係していると考えられます。

 

糖尿病との関係性

糖尿病患者におけるOPLL発症率は15,9%と、一般例における発症率2%と比較して高率であり、糖尿病合併しやすいといわれています。

 

脊髄症の術前重症度と予後の関係性

術前重症度は手術成績に影響はあるがそれを支持する中等度の質のエビデンスはないとされています

術前重症例は手術成績が悪い傾向にはありますが、罹患期間が影響するとされており、重症例でも罹患期間の短い症例では著明な改善を認めることもあります

 

術後の頸椎可動性について

頸椎の可動域は術前の約50-60%に減少するとの報告が多いですが、それを支持する中等度のエビデンスはないとされています。

 

合併症について

・周術期の合併症としては脊髄麻痺の悪化は約4%に生じる可能性がある。

・C5麻痺は5~10%程度の出現の可能性がある。片側性の上肢運動麻痺は椎弓形成術後の4%に生じ、術後6ヶ月でその70%が完全に回復したと報告されています。また、上肢麻痺発生の危険因子としては、脊柱管内骨化占拠率が高度、後方固定の併用、椎間孔部の前後径狭小、術前有症期間が長い、術前MRIでC4-5で髄内信号変化などが報告されています。

・術後血腫は3%程度で生じる

・椎弓形成術の蝶番側落ち込みが約6%に生じる可能性がある。蝶番側落ち込みは後弯変形では6〜9%に生じる可能性があります。

・後方手術では術前の50~60%に可動域が減少、前方法では術前の73%に減少したと報告されています。

・骨移植を要する前方手術では採骨部痛、呼吸困難、嚥下障害、反回神経麻痺、外側大腿皮神経領域の感覚麻痺なども生じる可能性がある。また、骨癒合不全が4~19%,移植骨の脱転・骨折は2~10%で生じる

・頸部痛、背部痛、上肢痛などの術後疼痛は17%に生じ、前方法と・後方法での差は明らかではない。

 

参考文献

・鳥巣岳彦:標準整形外科学,医学書院

・頸椎後縦靭帯骨化症診療ガイドライン

・脊柱靭帯骨化症診療ガイドライン2019

 

以上で今回の記事は終了となります。

今回はOPLLについての基礎的な部分を今回はまとめさせて頂きました。

最後までご覧頂きありがとうございました。

 

 

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