理学療法士のだいきです
本日は臨床実習において学生がどのように見学するのが良いのか解説してみたいと思います。
臨床実習の受け入れ先なのでうちでもよく見る場面ですが…
バイザーPT「リハビリ室に来られる患者さんやほかのPTの治療を自由に見学してきていいよ」
学生「分かりました」
…そこから、立ったまま動けない学生、PTの治療の見学についたけど本当に見ているだけの学生、見学しつつそのまま夢の中へ旅立ってしまう学生(ウトウト状態からヘッドバンキングを披露してくれた学生もいました(笑)))…等々
後からバイザーからの指摘がたくさん出そうな見学を行う学生が後を絶ちません。
ですが、バイザーPTの指導が適切なのか、学生が何を見るかを確認しておかないと上記のようなケースが出てきてしまい、PTの仕事に支障をきたしたり患者さんへの迷惑につながりかねません。
「そもそも」をもう一つ言うなれば…「学生が寝てしまうぐらいの疲労を溜めてしまった」「ポイントの解説が無い見学、興味をそそらない見学だったのかもしれない・・・」等々 指導者側も反省すべき点があると思います。
「学生としてはどのように見学を行うのが良いのか」
「指導者としてどのような指導を行うと良いか」
二つの立場を経験した僕が解説してみたいと思います。
今回は学生としての立場で解説してみます。
指導者としての指導法に関しては次回解説します。
臨床実習学生として「何」を「どう」見ると良いか
学生=自身
として解説していきます。
まずは臨床実習で学生として実習しているのですが実習場所は臨床現場です。
程度の違いはありますが臨床現場では患者さんが・利用者さんが自分の目標に向かってリハビリに励んでいる場所です。
場合によっては命のやり取りが行われている現場に自身も見学者とはいえ参加しているのです。
ボーっと立っていいとは思いません。
観察ではなく見学であるということ自分が関わるだけでリスクになるかもしれないことをしっかりと意識しておきましょう。
さて、以下に自身が行うべきポイントを僕なりに記載してみます。
まず見るべき対象ですが
「患者さん」「理学療法士」「環境」
と三つに分けて僕なりに解説します。
見学すべきポイント…患者さん
以下に解説していきます。
①「患者さんのすべての動作がチェックポイント」だと思います。
動作分析の方法に関してはほかのメンバーが動画で分かりやすく解説していますので是非併せてご覧ください。
理学療法士は動作分析が大切なんて話していますが学生さんとしてはなぜか歩行動作のみを分析しようとしている人に遭遇します…歩行する前に起き上がりや立ち上がりも見てますか?
起き上がりや立ち上がりにも体幹や下肢筋力を使う場面ってあると思います。
患者さんが止まっているとき・動いているときどの動作もすべて見学すべきポイント
と思って見学してみてはどうでしょうか?
②表情…第一印象ですが、表情が良いと経過が順調かもしれません。表情が硬いということは調子が悪かったりこれから始まるリハビリに緊張を示しているのかもしれません。
③身につけているもの…杖・歩行器 コルセット 頸椎カラー 補聴器 ストーマ 等々、身に着けているものを見学することでその方の目指していること、困っていることが分かってくるかもしれません。
④肢位やその方の生活空間…例えばベッドサイドであれば電動ベッドなのか、布団のたたむのは自身でたたんでおられるかなどでその方の生活習慣が見えてくるかもしれません。また常に片側にしか側臥位がとれない等、なにかその方の過ごされている肢位にも着目するポイントがあるかもしれません。
⑤雰囲気、訴え…厳密には見学ではないですが場合によっては主訴を言ってくれる場合や主訴を詳しく答えている場面もあるかもしれません。
⑥リスクを意識する…上記を見学していると「この動作の時には痛みが強くなりそうだな」「この話題は避けた方が良いのかも」「優しく触診しないと恐怖感を与えてしまうかもしれない」等 自身が問診や評価で関わる際のリスクが何となくわかってくることもあります。自身と患者さんのためにも危険なことは避けるべきですよね。見学の時から意識してみましょう。
更に年齢差や性別が違う方を見学する場合には、ハラスメントが発生することもあります。自身が話しかけること、患者さんが話しかけてくることが場合によってはどちらかに精神的ダメージを与える場合もあります。
①~⑥を踏まえた例ですが、病院での実習で高齢者の方の見学だとして…
①起き上がりや立ち上がりはゆっくり、手を膝の上についてゆっくり立ち上がる。歩き出すのにも時間がかかる。
②表情は立ち上がりや歩き出しで少ししかめっ面になる。苦しそう。
③両膝にサポーターを装着している、歩行は前腕支持型の歩行器を使用している。よく見ると補聴器を装着している。
④ベッドサイドでの見学の際、ベッド周りの棚や荷物置きはベッドの降り口周囲に集めてある。降り口に手すりがついている。布団を畳んだり、履物をそろえたりご自身でされている。
⑤雰囲気は穏やかそうな方。起き上がりの時には訴えは無いが、立ち上がりや歩き出しで「あいたたた」と痛そうな訴えが多い。
という方を見学したとしたら…もしかしたら、
・主訴はきっと痛み、立ち座りや歩くの際に特に?
・膝にサポーターつけてるから特に膝の痛み?しかも痛みによる筋出力の低下もあるかも?
・肢位や周りの環境(ベッドサイド であれば電動ベッドなのか、布団の畳み方 などで習慣が見えてくるかも)
・移動に困っているから歩行器使用している?荷物はベッドの降り口に集められている?
なんてことが予想されます。
そのうえで
「補聴器を装着しているので自身が話しかける時も声の大きさやトーンの配慮が必要そうだな」
「身の回りのことをご自身でされているのであまり介助しすぎると自尊心を傷つけてしまうかもしれないな」
「痛みがつらそうなので痛みに配慮した声掛けは必要そうだ、膝の痛みで動きが悪くなって転倒とかのリスクもあるかも…」
「高齢者なのでバイタルの変動や既往歴はどうなんだろうか」
などとリスクも考えつつ見学できます。
一例にすぎませんがこのように頭と目をたくさん使って見学できるとより良い見学ができるのではないかと思います。
見学すべきポイント…PTの見学
今の僕には業務中はなかなかできません。(笑)
学生の時にもっともっと見学したかったことです。
学生の立場の時に出来る幸せなことなのですが実際に治療を行っているPTの治療場面・介助場面をじっくりとじっくりと見学することができます。以下に紹介します。
①表情、声掛け、声のトーン…学生さんとして見学している目の前のPTは国家資格を取得リハビリを行っているプロです。
プロが実践している表情や、リスクや相手の心情に配慮した声掛け、患者さんのモチベーションを上げる声のトーンなど見て感じれることは盛りだくさんです。
②PTの徒手療法する際の立ち位置・手つき・動かす速度等…PTが運動療法を行っている際に患者さんのどの位置に立ってどんな感じで手を動かしているか、じっくりと見学することは大切だと思います。数年後には自身も行っていることかもしれないので。そう思うと真剣に見学できるはずです。
また先ほどの患者さんの見学の話と組み合わせるとアプローチしている部位を見学することで見学の時点で患者さんの主訴や治療プログラムが見えてくるかもしれません。
先ほどの膝が痛そうな高齢者の方にPTが膝周囲をリラクゼーションしたり、立ちあがりの時に骨盤の前傾を促しつつ立位練習を行っている場面を見学したとしたら
やはり膝の痛みが主訴で膝周囲や膝に負担がかからないように動作指導を行っているのかな?
と推察することができます。
③PTが介助している位置や手の位置…PTが歩行介助等介助を行う際に、患者さんに対してどの位置に立ってどこに手を当てて介助しているかでその方のリスクや安全面の配慮が分かる場合もあります。
例えば患者さんの歩行練習中に左後方の近いところに位置している場合は左の膝折れや後側方へのバランスの崩れに対して備えた介助かもしれない。しかも距離が近いので膝折れのリスクは高いのかも?
なんて推察もできるかもしれません。
あとはPTそれぞれにルーチンやスタイルがあると思うので自身のなりたいPT像をイメージしつつ見学すると良いのかもしれません。自身と同じような体型をしたPTは特に自身に重ねるように見学するのがおすすめです。
野球の話になってしまいますが、野球少年がプロ野球観戦を行っているときなんかはまさに上記のような感じなのではないでしょうか?
PTをじっくり見学することで、目の前のプロを見ながら自分もいつかはなるんだと自身のPTになりたいモチベーションを高めることにも繋がると思います。
見学のポイント…環境
見学として出来そうなものとして人だけでなく患者さんとPTを囲んでいる環境面も見学できそうですね。
患者さんの見学のところでも触れて被るところがあるのですが…環境がベッドサイドなのか、リハビリ室なのかでも雰囲気が変わってきますし、囲っているものの配置等でも勉強になることがたくさんあると思います。
例えば座面の高さや、手すりの配置などです。
他には治療で使用した器具やクッション類等散らかっていても片づける必要がありそうですね。
敢えて置いているPTもいるのかもしれませんが、器具が散らかっていたらそっと整えたりするのも良いかもしれません。あるいは靴の向きや出しっぱなしの椅子にしてもそうです。さりげなく気づいたところは整理整頓しておくと良いかと思います。
椅子や道具など出したものを片づけたりしまったりしておくことで通行する人の転倒リスク軽減にもつながると思います。
PTとともにリスク管理(PTの死角になっている部分を補い安全を確保する)するつもりで見学すると良いかもしれません。
患者さん・PT以外の第三の目だと思って見学をしてみましょう。
熱心に治療し説明しているPTがいたとして、実は後方に点滴スタンドがある、後ろを人が通りそうだけどPTが気づいていない等あれば学生が気づいていれば未然に危険を防ぐことにも繋がります。
学生でも立派な戦力になれる瞬間ってきっとあると思います。
そんな意識で見学をしてみてはいかがでしょうか。
見学の際の注意点
見学を頑張るのはいいのですが、注意点もあります。以下に記載します。
メモを取りすぎて視線が下すぎる…熱心にメモを取るのも良いですがメモを取りすぎとそれだけ前述した患者さん・PT・環境から目を離すことにも繋がります。また視線が下すぎると患者さんやPTからすると「寝てる?」と疑いをかけられるかもしれません(笑)。
メモの取りすぎには注意しましょう。
立ち位置が近すぎる…これも熱心な学生さんに多いかもしれませんが、患者さん・PTに近すぎると圧迫感や威圧感を与えかねません。特に立ったままの見学で近くにいると目線が高いために患者さんの立場からすると威圧感を感じるケースもあります。
動作分析等夢中になりすぎ…これも熱心な学生さんに多いかもしれません動作を見逃さないように気が付いたら睨みつけるように、あるいは下から舐めまわすように視線を送っている学生を目にすることがあります。逆の立場であればいやだと思います。患者さんからすれば「じろじろ見られている」気持ちにもなりかねないので気をつけましょう。
自身の癖に注意…見学中「ペンを回す」、「足を小刻みに動かす」「すぐに首を回す」なんてことも場合によっては患者さんかPTから不快に思われます。いい印象を持ってもらうためにも気を付けた方が良い点です。
簡単にですが学生が臨床実習の見学の際に考えた方が良いポイントを解説してみました。
「患者さん」「PT」「環境」
患者さん…動作、表情、身に着けているもの、肢位や生活空間、雰囲気・訴え、リスクを意識する
PT…表情、声掛け、声のトーン、徒手療法する際の立ち位置・手つき・動かす速度、介助位置や介助の手の位置
環境面…治療空間に配置してあるもの、患者さんやPTにとってリスクになりうるもの
他にもポイントや見るべきものはいろいろあるのでしょうが…まずはこの三つを見学するつもりで実習に臨んでみてはいかがでしょうか。
近年は臨床参加型の実習を導入してきている実習地が増えています。
先ほども述べましたが「学生自身も戦力」になりえます。
なにか患者さんや実習施設のためになることは無いか考えながら見学に臨んでみてはいかがでしょうか?
もちろん解説したことが正しいとは限りませんが実習に臨むにあたって参考にしていただければと思います。
ちなみに今回解説していたことは僕が学生の頃の最終学年の見学の時に常に意識して取り組んでいた見学のポイントでもあります。
少しでも皆さんのお役に立てればと思います。
そして臨床実習が少しでも充実して楽しいものになることを願っております。
今回は以上で終わります。最後まで読んでいただいてありがとうございました
参考資料
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