その他

ロコモティブシンドロームに対する効果は?(ロコトレなど)

ロコトレ(ロコモーショントレーニング)

 

はじめに

こんにちは、cascade (@cascade1510)です。

 

前回は、「ロコモティブシンドローム」について、その評価の仕方や基準、そしてロコモティブシンドロームを予防・改善していくための「ロコトレ」についても紹介しました。

ロコモティブシンドロームについて本記事ではロコモティブシンドロームについてどんなものか、評価法やトレーニングなど詳しく解説しています。...

 

このロコモティブシンドロームについては、日本整形外科学会が2007年に提唱してから、はや13年が経とうとしているわけですが、既に様々な切り口から研究が進んできています。

 

私自身も、このロコモティブシンドロームの評価法の1つである2ステップテストにおけるバランス評価との相関などを調べたりもしました。

この結果、片足立位時間やTUGといった評価と相関が見られることがわかり、このツーステップテストが簡便に歩行能力を評価することができることが示唆されました。

2ステップテストとバランス能力の関係

 

そして私の研究以外でもロコモティブシンドロームに関していろんな研究報告があります。

 

そして、みなさんが気になっているのは、

「じゃあ、ロコモティブシンドロームと判断された人はそのあとどうなってるの?」

「ロコトレなどのトレーニングの効果はでているの?」

こういったことではないでしょうか。

 

今回は、こんなロコモティブシンドロームに関する様々な報告の中から、主にロコトレを中心とした運動による効果についてまとめてみました。

 

ロコトレに関する報告はどのくらいある?

ロコモティブシンドロームに対する「ロコトレ」について、これをキーワードにして医学中央雑誌(医中誌)にて過去10年間で検索すると、141件が引っかかってきました。

※医学中央雑誌など、文献の検索方法や研究の進め方について、以下のnoteに詳しく書かれています。

研究ノススメ①研究の準備

 

さて、141件という結果。

もちろん、くまなく探すためにはこれだけでは不十分ですが、今回はこの結果から考えたいと思います。

 

その検索結果の中には、いわゆる学会発表での抄録が多く引っかかり、詳細がよく分からないものも多かったため、今回は原著論文として発表されているものに絞って紹介したいと思います。

 

わが国でのロコトレに関するおおまかな流れがつかめると思います。

 

筋力やバランス能力に対する効果

まずは、ロコモティブシンドロームに対するロコトレによって、筋力やバランス能力はどう変わるのか、という報告についてです。

 

石橋ら1)の報告では、地域在住高齢者を対象とした2ヵ月間の介入を行った結果、片脚起立時間、歩行速度、足趾把持力、膝伸展筋力を高めたことが確認されています。またロコモーションチェック(ロコチェック)によりロコモと判定された群において、より運動介入の効果が高い傾向にあったとしています。

 

また佐々木ら2)は26名(男性4名、女性22名、年齢69-90歳、平均79歳)について、ロコトレ開始前と、開始後の1ヵ月おきに3ヵ月後までの身体機能を、開眼片脚起立時間、timed up & go(TUG)、functional reach test(FR)、ロコチェックの該当項目数で評価し、ロコトレの効果を検討しています。

 

その結果、ロコトレ開始前後の比較で、開始1ヵ月ではいずれも有意な改善が見られず、開始2ヵ月で片脚(左脚)起立時間、FR、TUGで有意な改善が見られたことから、効果が出るまで少なくとも2ヵ月間以上のロコトレの継続が必要であるとしています。

 

運動の期間について

この運動の期間について、天尾ら3)の研究では、ロコモティブシンドローム該当者25名(50~70歳)を対象に、6ヵ月間ロコトレを実施する「早期群」と、3ヵ月後から3ヵ月間実施する「待機群」とに分け、ランダム化比較試験で比較しています。

 

その結果、それぞれの群を比較すると、「早期群」は「待機群」に比べ3ヵ月後の片脚立位時間が有意に向上し、さらに「早期群」内での比較では、膝屈曲筋力が初回・3ヵ月後に比べ6ヵ月後が有意に向上したとのことでした。

 

また、転倒不安に関する評価も行っており、初回に比べ6ヵ月後が有意に改善したという結果からロコトレ実施による6ヵ月以上の運動継続が運動機能を向上する可能性を示しています。

 

腰痛由来のロコモティブシンドローム

また高橋ら4)は、腰椎疾患由来のロコモティブシンドローム患者をA群とB群の2群に分け、A群はクリニックでの腰痛の運動療法とロコトレを、B群は通所リハビリテーションを行い、これら2群の改善度を比較した結果、A群では1ヵ月後から改善が得られ、3ヵ月後、さらに改善が得られた。それに対し、B群では改善がみられなかったという結果になっています。

 

このことから、腰痛の運動療法とロコトレが早期に転倒リスク軽減や要介護リスク軽減に繋がる可能性があるとしています。

 

ADLに対する効果

ここまでは、主に運動機能における効果についての報告をみてきました。

 

ではもうすこし「活動」に焦点を当てて、ADL(日常生活動作)に対する効果はどうなっているでしょうか?

 

小出5)は、施設の外来での透析患者27名(ADL自立群18名,要介助群9名)を対象に,週3回透析前または透析後に体操とロコトレを実施しています。

 

ADLの指標としてShort Physical Performance Battery(SPPB)、TUG、Life-Space Assessment(LSA)、転倒に対する自己効力感尺度、転倒回数を用いており、運動開始前、3ヵ月後、6ヵ月後、1年後に測定し評価しています。

 

その結果、運動開始3ヵ月後のSPPBとTUGの結果、要介助群は有意な改善は認めなかったが、ADL自立群のスコアは有意に改善しています。

 

6ヵ月以上運動を継続した対象者のLSAのスコアが有意に上昇し、1年以上の継続者の転倒に対する自己効力感が有意に上昇し、転倒回数も有意に減少しています。

 

これらの結果から、体操とロコトレは介護が必要になる前から始めることで、介護予防としての効果が期待できるとしています。

 

トレーニングを継続するための工夫

このように、ロコトレを中心とした運動・トレーニングを継続して行うことで、身体機能面や日常生活動作が向上することが分かっています。

 

しかしながら、実際問題このような運動というものは、なかなか続くものではなく、開始後3 ~ 6 ヵ月以内に運動をやめてしまう人が多いことも報告されています6)。

 

そこで、 幡野ら6)はロコトレとさらに独自に開発したロコモ予防のトレーニングを講義を交じえながら実施し、さらに実施記録をつけていくことをおこなった結果、ロコトレを「週に2 ~ 3 日以上実施した人」の割合、つまり継続した人の率は90%であったと高い割合を維持できたとしています。

 

アンケートにおいても

「膝の痛みが和らいだ」

「長靴を片足立ちで履けるようになった」

などの身体の変化が現れ、教室前後に実施した体力測定では、TUG・30秒椅子立ち上がりテスト・開眼片脚立ちの3 種目で有意に改善がみられています。

 

以上のことから、講義による動機づけ・実施記録による意識づけ・開眼片脚立ちタイム測定によるロコトレ効果の実感というサイクルを設定したこことがロコトレの継続につながるとともに、ロコトレを継続することで運動機能の向上を図ることができたのではないかと考えられています。

 

このように、運動を継続するための工夫について、ほかの研究をみてみると、ロコトレ以外にも水泳、ウォーキング、ランニング、太極拳などによってもロコモティブシンドロームに対して効果があると考えられる結果となっており、そのようなことから現在日本では各地でロコモ予防としてオリジナルの体操などさまざまな取り組みが行われています7)。

 

おわりに

今回は、ロコモティブシンドロームに関する様々な報告の中から、主にロコトレを中心とした運動による効果についてのいろいろな報告について原著論文をもとにまとめてみました。

 

やはり、ロコトレを中心とした運動には一定の効果があり、ロコモティブシンドロームと診断された人でも充分に改善していけることも理解できたと思います。

 

我々セラピストとして、このような客観的なデータを知っておくことは重要で、例えば、地域における介護予防に関する啓発を行う際にもこのようなデータや取り組みを知っておいた上で実施していくことでさらに実りのあるものになるはずです。

 

ぜひ、参考にしていただければ幸いです。

 

今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございます!

参考文献

1) 石橋 英明.【運動器病対策の基本戦略 ロコモとマーズ】ロコモに対する介入効果 ロコモーショントレーニング-片脚起立とスクワット-による運動機能改善効果:Orthopaedics24(7).57-63.2011.

2) 佐々木 佳都樹, 杉田 健彦, 菊地 保博,等. ロコモティブシンドロームを呈する高齢者に対するロコモーショントレーニングの効果: 東日本整形災害外科学会雑誌. 24 (1).53-56.2012.

3) 天尾 理恵, 大竹 祐子, 緒方 直史, 芳賀 信彦. ロコモティブシンドローム対象者に対するロコモーショントレーニング実施による動作能力と転倒意識の変化 ロコモーショントレーニング実施の有無による比較検討: 運動器リハビリテーション.25(1).68-75.2014.

4) 高橋 宏明, 牧野 善之, 田辺 秀樹. 腰椎疾患由来のロコモティブシンドローム患者に対する運動療法の効果: 日本臨床整形外科学会雑誌.39(1):47-52.2014.

5) 小出 薫. 研究報告 通院透析患者のADL維持を目指した体操とロコモーショントレーニングの効果.日本腎不全看護学会誌. 17(2):82-89.2015.

6) 幡野 真妃, 都築 千恵子, 渋谷 明,等.ロコモティブシンドローム予防教室の取り組み トレーニングの定着を目指して. 日本農村医学会雑誌. 65(5):984-993.2017.

7) 芳賀 信彦.【ロコモティブシンドローム・運動器疾患のリハビリテーション-up to date-】ロコモティブシンドローム予防 運動療法を中心に. The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine.53(12):900-902.2016.

 

 

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2020年4月大学教員へ/Physical Therapist /Ph.D in rehabilitation/ 大阪大学理学部高分子科学→修士(M.S.)→Teijin Limited研究職→大学リハ学科→博士/介護予防/訪問リハ/研究や国試の勉強などを発信 理学療法士として何ができるか、理学療法士の枠にこだわらずに何ができるか、ワクワクするような新たな可能性を追い求めていきましょう!
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