整形外科

運動連鎖について

こんにちはリョウ(@HealthCare_ryo)です。

今回は運動連鎖についてのお話です。

 

1.運動連鎖の概要

運動連鎖は臨床を行う上でとても重要な知識です。

 

しかし、学生時代にはほぼ学習することはありません。

 

そんな運動連鎖だからこそ苦手意識を持っている人は多いです。

 

ですが、歩行の際の骨盤から足部への運動や足部から骨盤への運動など、知らず知らずのうちに自身の体の中でも生じています。

 

例えば、立位の状態で骨盤を前傾してみてください。

 

すると膝関節は伸展しますよね?

 

これが『運動連鎖』です。

 

なのでなにも難しく考えることはせず、自分の身体の中で生じている動きに着目すればいいのです。

 

 

 

1-1 運動連鎖の罠

 

上記の様に言うと、

 

「でも正常な運動連鎖のパターンが分からない」

 

と思う方もいると思います。

 

これが運動連鎖の罠です。

 

運動連鎖に正常も異常もありません。

 

こう言うと少々乱暴ですがこれは、

 

運動連鎖パターンからの逸脱がすべて悪ではない

 

からです。

 

運動連鎖を覚えるとなんでもかんでも運動連鎖のパターンに当てはめて考えようとしてしまいます。

 

ですがそれは間違いです。

 

 

 

1-2 運動連鎖からの逸脱は『悪』ではない

 

大事なので何度も言いますが運動連鎖からの逸脱は悪ではありません

 

先ほどの立位で骨盤を前傾すると膝が伸展するという運動連鎖で考えてみましょう。

 

例えば、あなたはいま20㎏の重い荷物を持っています。

 

この荷物を運ぶ時にどのような姿勢で運びますか?

 

おそらくこの記事を読んでいる方は医療従事者だと思いますので、無防備に腰を丸めて猫背で膝を伸ばして運ぶことはしないでしょう。

 

腰を落として骨盤を前傾させて膝を軽く曲げていわゆるパワーポジションの姿勢で重い荷物を運ぶでしょう。

 

その方が力学的に身体への負担が少ないためですね。

 

この場合は骨盤は前傾しているのに膝は曲がりますよね。

 

ですが異常だから膝を曲げているわけではありませんよね。

 

他にも例えば、片足立ちでバランスをとっている時、スポーツの時、などはいわゆる通常の運動連鎖パターンをとらないことが多々あります。

 

ですが異常なわけではありませんよね。

 

運動連鎖はあくまで運動連鎖であり、それがすべてではありません。

 

決して運動連鎖パターンからの逸脱を悪・異常と安易に捉えないでください。

 

 

 

1-3 運動連鎖と姿勢制御

 

ヒトが重力下で生き、立位を維持するには『姿勢制御』が必要です。

 

重心を支持基底面内にとどめておくための力学的な原則があります。

 

上述した片足立ちでの立位保持など、姿勢を制御するためには容易に運動連鎖パターンからの逸脱が生じます。

 

なので、症例を通して運動連鎖を評価するときには、

 

その運動は運動連鎖パターンが破綻しての異常なものなのか、それとも姿勢制御を行うために必要なものなのか、

 

を評価するようにしましょう。

 

 

 

2.下行性運動連鎖

 

ではここまでで、

 

・運動連鎖がすべてではない
・運動連鎖パターンからの逸脱が悪ではない

 

という事が理解できましたら、ここから先の実際の運動連鎖パターンを見ていきましょう。

 

下肢の運動連鎖には大きく分けて2種類存在します。

 

それは下行性運動連鎖と上行性運動連鎖です。

 

以下では下行性運動連鎖、上行性運動連鎖のパターンを示していきます。

 

 

 

2-1 下行性運動連鎖:骨盤前傾

 

 

下行性運動連鎖:骨盤前傾

骨盤前傾

股関節:屈曲・内転・内旋

大腿骨:後方・内側・内旋

膝関節:伸展・外反・外旋

脛骨:後方・内側・内旋

足関節:底屈・回内

前足部:回外

 

 

 

2-2 下行性運動連鎖:骨盤後傾

 

 

下行性運動連鎖:骨盤後傾

骨盤後傾

股関節:伸展・外転・外旋

大腿骨:前方・外側・外旋

膝関節:屈曲・内反・内旋

脛骨:前方・外側・外旋

足関節:背屈・回外

前足部:回内

 

 

 

2-3 下行性運動連鎖:骨盤前方回旋

 

 

下行性運動連鎖:骨盤前方回旋

骨盤前方回旋

股関節:伸展・外転・外旋

大腿骨:前方・内側・内旋

膝関節:屈曲・外反・外旋

脛骨:前方・内側・内旋

足関節:背屈・回内

前足部:回外

 

 

 

2-4 下行性運動連鎖:骨盤後方回旋

 

 

下行性運動連鎖:骨盤後方回旋

骨盤後方回旋

股関節:屈曲・内転・内旋

大腿骨:後方・外側・外旋

膝関節:伸展・内反・内旋

脛骨:後方・外側・外旋

足関節:底屈・回外

前足部:回内

 

 

 

3.上行性運動連鎖

 

上行性運動連鎖を利用した臨床上の最たるものは『インソール』です。

インソールについてはタツ(@tatsu_bridge)さんがnoteの足マガジン内でグラインダーを使わないインソール作成をシリーズで解説されているので、有料ですがグラインダーがなくて困っている人には下記記事は必見です。

足マガジン『グラインダーを使わないインソール』

 

 

3-1 上行性運動連鎖:足関節回内

 

 

上行性運動連鎖:足関節回内

骨盤:前傾・前方回旋

股関節:屈曲・内転・内旋

大腿骨:前方・内側・内旋

膝関節:屈曲・外反・内旋

脛骨:前方・内側・内旋

足関節:回内

 

3-2 上行性運動連鎖:足関節回外

 

 

上行性運動連鎖:足関節回内

骨盤:後傾・後方回旋

股関節:伸展・外転・外旋

大腿骨:後方・外側・外旋

膝関節:伸展・内反・外旋

脛骨:後方・外側・外旋

足関節:回外

 

 

おわりに

 

今回解説した下肢運動連鎖はれぞれスライド1枚でわかりやすくまとめて臨床ノートにしています。

下記のnote記事から無料でご覧いただけますので是非ともご利用下さい。

 

臨床ノート【下行性運動連鎖編】

 

 

 

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