CLNICIANSのしーご(@Hs041300)です。
胸を開くと幸せになる!
Open the chest-Happy Heartという言葉をご存じでしょうか。
胸には“幸せ”が詰まっているといわれています!
猫背姿勢のように胸を閉じていると
身体もうつむいてしんどくなりませんか?
今回は胸を開く為に必要な
肩甲骨の外旋機能!についてお話ししたいと思います。
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肩甲骨の外旋機能とは?
肩甲骨外旋(内旋)には肩鎖関節を軸に可動します!
肩鎖関節に関しては鎖骨よりも肩峰の関節での動きが主体と言われています。
しかし肩鎖関節は胸鎖関節のように可動範囲は大きくなく
二次的な回旋適合運動を行う関節です。
肩鎖関節の骨運動学
⚫︎上方回旋(UR)、下方回旋(DR)
⚫︎水平面での回旋適合→外旋(ER)、内旋(IR)
⚫︎矢状面での回旋適合→前傾(AT)、後傾(PT)
肩鎖関節だけでなく、胸鎖関節も可動するのでは?と思った人もいると思います。
肩鎖関節と胸鎖関節が複合した動き肩甲骨前突と後退とは?
先ほど示したように肩鎖関節では
肩甲骨が
⚫︎外旋
⚫︎内旋
に可動します。
そして胸鎖関節軸では下記の図のように
肩甲骨が
⚫︎前突(外転)
⚫︎後退(内転)
に可動します。
いわゆる
⚫︎前突とは胸鎖関節での前突(肩甲骨外転)+肩鎖関節での内旋
⚫︎後退とは胸鎖関節での後退(肩甲骨内転)+肩鎖関節での外旋
を表します。
このように水平面上での動きを捉える。
しかし肩甲骨の動きは1軸だけでなく2軸、3軸と動く為難しいのです…
今回は水平面上の動きを中心にお話ししていきます。
そうすると肩甲骨の水平面上の動きでの問題はどのようなものが挙げるられるでしょうか。
肩甲骨外旋と後傾制限する”小胸筋”
小胸筋は唯一肋骨から肩甲骨前面に付着する筋肉といわれています。
小胸筋の作用は肩甲骨の
⚫︎下方回旋
⚫︎前傾
⚫︎内旋
であり、また肩甲帯のプロトラクションにも関与しています。
小胸筋の短縮を有する者は上肢挙上時の
肩甲骨外旋と後傾が低下すると報告されています(Borstad JD, 2005)
いわゆる猫背にする筋肉です。
また腱板病変を持っている人たちは
⚫︎肩甲骨の後傾が明らかに低下
⚫︎肩甲骨上方回旋量は健者とほとんど変化なし
(Kijima.T:2016)
そして小胸筋の短縮は肩甲骨外旋と後傾を明らかに制限すると言われています。(Borstad,JD:2005)
小胸筋の短縮は肩峰下スペースを低下させ、腱板病変を促進していきます…
”小胸筋”はどのように伸ばすのか…
小胸筋のストレッチングを検討した先行研究において
⚫︎Murakiら(2009)は新鮮凍結遺体を対象とし、
筋の伸長量を計測することで
肩関節屈曲30°から肘関節を支点にして上腕骨長軸方向に圧を加える方法(Retraction)
が小胸筋を最も伸長すると報告。
⚫︎Borstadら(2005)は健常者を対象とし、
烏口突起と第4胸肋関節の距離を計測することでストレッチング対象側の
肩関節外転90°、肘関節屈曲90°で前腕を壁に当て、肩関節水平外転を行うセルフ・ストレッチング
が効果的なストレッチングであると報告した。
⚫︎Roseら(2016)は
肩関節外転90°、肘関節屈曲90°で前腕を壁に当て、肩関節水平外転を行うセルフ・ストレッチングを6週間実施したが小胸筋の長さ、
肩甲骨運動に変化はなく筋肉の再教育が必要と考察している。
最近の研究では
・梅原ら(2019)は
超音波診断装置せん断波エラストグラフィーを用いて肩甲骨異常運動の一因である小胸筋の伸張性と肩甲骨運動の関連を検討し、運動療法の一種であるストレッチングの重要性を提示した。
検討したストレッチ方法では
⚫︎水平外転90°
⚫︎水平外転150°
において小胸筋は最も伸長されることが示され、
⚫︎肩関節外転40°~120°における肩甲骨外旋
⚫︎肩関節外転30°~120°における肩甲骨後傾
が増加したと報告されている。
しかしRoseらの報告にあるように小胸筋の改善を進めるためには筋の再教育が必要だと私も感じています。
肩甲骨外旋機能改善に必要な筋肉とは?
⚫︎僧帽筋中部線維
補助的に
⚫︎菱形筋
⚫︎僧帽筋下部線維が働く
大学生投手を対象とした研究で
腹臥位にて肩 関節最大自動水平外転を行うような種目で介入
⚫︎僧帽筋中部線維の筋肥大に伴い
⚫︎投球時の肩甲骨外旋角度は増大したと述べられている。
また肩甲骨外旋にもフォースカップルがあるのはご存知でしょうか?
肩甲骨外旋の機能として
⚫︎僧帽筋中部線維
⚫︎前鋸筋が協調的に働きます
このように肩甲骨の外旋機能改善には筋機能の改善が必須です。
最後に
⚫︎肩甲骨の外旋と後傾を阻害する”小胸筋”は肩峰下スペースを狭小化させ、
腱板変性を招く…
⚫︎投球動作など肩甲骨外旋機能が重要な”オーバヘッドスポーツ”において重要である。
⚫︎肩甲骨外旋にはフォースカップル機構があり
”僧帽筋中部線維”と”前鋸筋”が協調的に作用する。
このように肩甲骨の外旋に着目した動きは非常に重要です!
ぜひ今回の知識を臨床に生かしてみてください!
ご拝読ありがとうございました!
参考文献
Borstad JD, et al. The effect of long versus short pectoralis minor resting length on scapular kinematics in healthy individuals. J Orthop Sports Phys Ther. 2005 Apr;35(4):227-38.
Borstad JD, et al. Comparison of three stretches for the pectoralis minor muscle. J Shoulder Elbow Surg. 2006 May-Jun;15(3):324-30.
Muraki T, et al. Lengthening of the pectoralis minor muscle during passive shoulder motions and stretching techniques: a cadaveric biomechanical study. Phys Ther. 2009 Apr;89(4):333-41.
Rosa DP, et al. Effects of a stretching protocol for the pectoralis minor on muscle length, function, and scapular kinematics in individuals with and without shoulder pain. J Hand Ther. 2016 Oct 18. pii: S0894-1130(16)30107-7.
Kijima T, et al. In vivo 3-dimensional analysis of scapular and glenohumeral kinematics: comparison of symptomatic or asymptomatic shoulders with rotator cuff tears and healthy shoulders. J Shoulder Elbow Surg. 2015 Nov;24(11):1817-26.
梅原ら,小胸筋の伸張性と肩甲骨運動の関連―せん断波エラストグラフィーの理学療法応用―日本基礎理学療法学雑誌 第22巻 1 号.2019
Donald A.Neumann,et a,lKinesiologic considerations for targeting activation of scapulothoracic muscles – part 1: serratus anterior.Brazilian Journal of Physical TherapyVolume 23, Issue 6, November–December 2019, Pages 459-466
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