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論文の書き方シリーズ② ー臨床の疑問をどうやって測るのか?ー

こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fracturepreventです!

日々診療を行う中で、

データにとしてとっておければいいな!と思うことがあると思います。

または、疑問として調べてみたいことが生まれてくると思います。

しかし

研究は非常に敷居の高いもの。

何を測ればいいのか。。

さらには難しい統計手法をしないといけない。。わからない。。となりがちです。

 

研究はシンプルに言えば

1)比較する2)関係を見る3)予測する

 

この3つに分類されます。

 

さらには1)-3)すべてにおいて

目の前の調べたいこと、疑問に思ったことを

 

何らかの物差しを使って計測すること

が最初のステップになります。

 

本日は研究疑問を調査するにあたり必要な”計測する尺度”を決めるポイント

についてシンプルにご説明します!

 

臨床の疑問をどう測る?

働き方改革が始まり、有給消化を促されていませんか?笑

実際にこれが始まってから、我々の業務の負担感や忙しさは軽減したのでしょうか?

この場合、”測る”ものは”忙しさ”ということになりますね。

”忙しさ”をどうか測ればいいのでしょうか?

□忙しい or  □忙しくない

の2択で聞く、

□とても忙しい、□まあまあ忙しい、□忙しくない、□全くひま

といったことも思いつきますし、

仕事のストレステスト

といった点数化できる心理検査もありますね。
これら全てを”尺度”といいます。
例えば理学療法では”痛み”の変化を調査することもありますね。

VAS(visual analogue scale)

Face scale

もしくは

腰痛に特化したQOL評価ODIなど、、

 

様々な”痛みを測るのに特化した尺度”があります。
一体、どれが自分の調査したいことに適しているのでしょうか?

 

研究を始める第一歩は尺度を決めることとでしょう。

尺度の種類

4つの尺度について説明します。

■名義尺度:他と区別し分類するための名称のようなもの 

       例:男女、血液型、所属学部、学籍番号

■順序尺度:順序や大小には意味があるが間隔には意味がないもの

       例:1位 / 2位 / 3位…、1. 好き / 2. ふつう / 3. 嫌い、

■間隔尺度:目盛が等間隔になっているもので、間隔に意味があるもの

       例:温度、西暦

■比例尺度:0が原点であり、間隔と比率に意味があるもの

       例:身長、速度、睡眠時間、値段、

間隔尺度と比率尺度は理解が難しいですが、

2つとも等間隔の数値データと考えてもらってもいいでしょう。

 

自分の研究で使う尺度が、何尺度かを明確にしておく必要があります

どの尺度を使うべき?

例えば、ACL損傷術後の患者さんの膝屈曲筋力を計測するのに、
MMTで良いでしょうか?
MMTは”順序”尺度です。
術後数ヶ月もすればグレード5には到達し、そこから変化は捉えにくいですよね。
そうなるとサイベックスマシンなどの筋力測定器が適していると思います。
また、過去の同じような研究でどのような尺度を使っているか?これも非常に重要です。
なぜなら、研究結果としてまとまった時に、
”はじめに”や”考察”で
過去の研究や報告と比較してどうだったのかを述べる必要があります。
流石にMMTで計測した結果と、サイベックスマシンで計測した結果を比べて論じることはできませんよね。
また
勝手に自分で尺度を作ったとしても、
それが図りたいものを反映していない場合もあります。
尺度を測る研究を行って開発されている標準化されたものを使う
のが良いですね。
さらに
例えば握力のように誰が計測しても、同等の値が出て
精度が高く、国民基準値もある尺度が最も研究に用いるにはふさわしいと言えますね。

1)標準化されてる2)精度が高い3)国民基準値がある

その尺度大丈夫?

もう1つ、考えておくことは

その尺度の妥当性再現性です。

ゴニオメーターは関節の角度を測るのに妥当な物差しですよね。

一方で、”忙しさ”=ストレス検査はもしかすると妥当でないかもしれません。

 

その尺度が果たして、自分が目的としているものを測れるのか?

を十分検討する必要がありますね。

 

また、再現性も重要です。

同じ、ゴニオメーターを使ったとしても、何度か計測すると誤差が出たりしますし、

学生と理学療法士とでは誤差が大きいかもしれませんね。

天井効果と床効果

例えば関節可動域を測るには
少しの変化でも捉えれるようにしたいのであれば、単位の細かい尺度を使うべきですね。

デジタルゴニオメーター

で1度刻みで可動域を計測するのと

通常のゴニオメーターで5度刻みで計測するのでは結果が異なってくるのも明白です。

 

もし”1cm刻みの荒い物差し”を使うと

実際3.5cmあるものでも

”3cm”と測定されてしいます。。。

さらに

4cmしかない物差しで測ると、4cm以上の人は計測することができません。

全員が4cmとなってしまいます。

 

その逆に

4cm以上からしか目盛りがない物差しで測ると

それ以下の長さのものは計測できません。

具体的にいいうと

高齢者のように体力のばらつきのある集団で歩行速度を計測すれば、

遅い人から早い人まで様々となります。

よって、高齢者で歩行速度を計測するのは

”運動機能”を見るのにふさわしい尺度と言えると思います

(物差しの範囲に全ての被験者が収まりやすい)。

 

一方、

体力運動能力にばらつきのない健常成人の若者に歩行速度を計測しても差は出ません。

テストで言うと全員が100点を取れてしまいまうことになります

(被験者の結果はもの差しの範囲外)。

 

自分が使おうとしている尺度が

自分の対象患者の図りたいものに適しているのか?

十分に考える必要がありますね!

 

まとめ

1.何を測りたいのか明確にする

2. 測る物差しを検討する

3.物差しの妥当性と再現性を確認する

4.物差しの精度を確認する

最後まで読んでくださり、

ありがとうございました!

 

ABOUT ME
まっつぁん
まっつぁん
岡山で大学教員をしています。日々骨粗鬆症患者の診療にも携わりながらどうすれば骨折を減らせるのか、転倒を防げるのかを臨床、研究を通して考えています。 理念は社会貢献と人材育成。セラピストとしては骨粗鬆症の理学療法を確立することが目標です。学士(教育学) / 博士(保健学)/ 専門理学療法士(運動器)/認定理学療法士(運動器)/ 骨粗鬆症マネージャー / 転倒予防指導士 / 日本骨粗鬆症学会評議員 / 日本転倒予防学会評議員
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