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末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)挿入時の注意点〜特徴・管理・手技・ポイント〜

“たけ”
“たけ”
今日はいつものようにベッドサイドで患者さんの治療に伺うと、上腕部に初めて見るタイプの点滴が挿入されていました。

壁に張り紙がしてあり、「右上肢はPICCあるので血圧測定や採血禁止!」との張り紙あり・・

「ピーアイシーシー?」

なんだそれ?っというような感じでよくわからなかったため、論文を読みあさってPICCについて詳細に調べてみました。

末梢留置型中心静脈カテーテル(PICC)挿入時の注意点、特徴・管理・手技や、注意するポイントが分かったのでこれについてお話しします。

 

PICCとは

PICC(peripherally inserted central catheter:PICC)とは、末梢留置型中心静脈カテーテルのこと。

一般的に「ピーアイシーシー」ではなくピックと呼ばれてます。

名前の通り末梢の静脈(肘の辺にある尺側皮静脈、橈側皮静脈、肘正中皮静脈など)を穿刺し、ここから長いカテーテルを腋窩静脈、鎖骨下静脈を経由させ、体の中心部の上大静脈まで挿入するものです。

 

PICCの特徴・管理・手技

PICCの特徴を簡単にまとめると以下のようになります。

メリット

◉(中心静脈と比較し)合併症リスクや感染リスクを低減できる
◉適切に管理を行えば、基本的には末梢静脈留置針のような定期的な入れ替えが必要ない=長期間留置・治療が可能
採血のルートとしても使える
◉上記のような処置に伴う患者の負担軽減
◉カテーテル先端は中心静脈に留置されるため、高カロリー輸液や刺激の高い薬剤の投与においても静脈炎のリスクを低減できる
保険点数がとれる

デメリット

◉透析患者でシャントを造設している方には使用できない
◉前腕に挿入されている場合、肘の過屈曲によって点滴の滴下不良が起こったり、静脈炎の発生頻度が高くなりやすい
◉カテーテルが詰まって使えなくなることがある

PICCの特徴や管理、挿入手技などの詳細はメーカーサイトにわかりやすい詳細(画像・動画有)がありましたので、気になる方はそちらをご参照ください。
グローションカテーテル (株)メディコンさんHP

 

PICCが挿入されている患者さんの運動・リハをする際の注意点

PICCの特徴から考えられる運動・リハをする際の注意点は以下になります。

・体の外に出ているカテーテル部分に引っかからない引っ張らない

・PICCが挿入されている側で血圧測定をしない

前腕部に挿入されている場合に肘の過屈曲をしない

なお、僕は上腕部に挿入されている場合は「肩の過剰なROM(屈曲・外転・伸展・水平外転など)の運動をしてはいけない」かも・・っと思ったのですが、自分で論文を検索した限りではこれに関する制限は特に見つかりませんでした。

しかし、カテーテルの挿入手技や長さをチョイスする方法は色々あるみたいでしたので、結局は主治医に確認をとらないとわからないという結論に至りました。

なお、主治医に確認して動かして良いと判断された場合でも、機械的刺激にて静脈炎を助長する可能性は否定できないと思われますので、これを予防するためにも上肢の素早い運動などは避けた方が良いかと思います。

ROMなどの上肢の運動を行う際は愛護的に行いましょう。

 

最も注意しておきたいポイント

PICC症例を担当した時に最も注意したいのはPICC留置中のCRBSI(Catheter Relatcd Blood Stream lnfection:カテーテル関連血流感染症)の発症です。

以下のような症状が出ている際は、感染が疑わしいので医師に報告しましょう。

・38℃以上の発熱を認めた場合

・挿入部または挿入部の周囲に疼痛熱感腫脹膿汁がある場合

PICCに沿って痛みを訴える場合

カテーテルの抜去は、以下の静脈炎スケールのグレード3に進行するか、痛みや不快感が増大する場合に考慮されるようです。

米国輸液看護師協会の輸液看護基準による静脈炎スケール(2011)

グレード0:臨床的徴候なし
グレード1:発赤あり(疼痛の有無は問わない)
グレード2:発赤および/もしくは腫脹を伴う疼痛あり
グレード3:発赤を伴う疼痛あり、赤い索条、索条硬結が触知可能
グレード4:発赤を伴うとうつ有り、赤い索条、長さ2.5cm以上の索条硬結が触知
可能、排膿あり

 

参考資料

・井上 善文:【中心静脈栄養法の合併症と対策 最新の知見・工夫から】 最も安全な中心静脈カテーテル挿入経路としてのPICC.栄養-評価と治療.2009;26(4):306-309.
・井上 善文:【栄養療法のピットフォール-よりよい栄養ケアのために】 (Part3.)静脈栄養 末梢挿入式中心静脈カテーテル(PICC)の挿入と管理上のコツ.臨床栄養.2015;126(6):858-865.
・横須賀 とも子:合併症、患者ストレスの少ない末梢挿入式中心静脈カテーテルの使い方(第3回) PICC留置後の管理ポイント.レジデントノート.2014;16(7).1368-1369.

 

 

本日は以上で終わります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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たけ
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