こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fractureprevent)です!
自分の臨床や研究分野の学術論文を読む方もおられれば、診療が忙しく
全く目にしたことがない方
読んだことがない方
読むのが億劫な方
が多いと思います。
今日はそんな方のために
診療に活かせる
初学者のための論文の読み方のコツ
を伝授します。
論文の構造を知る
まずは論文がどのような構造で構成されているかを知っておくことが重要です。
論文は以下のコンテンツからなっています。あとで詳しく説明しますが、物語や小説と違い、順に読む必要はありません!
タイトル
その研究の内容を最も端的に示したもの(論文の顔)
要旨
その論文の概要が目的、方法、結果、結論といった内容で端的に記述されている(学会抄録に近いもの)
はじめに
この研究分野の背景、今まで行われてきた研究のまとめ、この研究をする意義や経緯、研究の目的が記載されている
方法
研究対象者がどのような人か、どのようにして選ばれたのか。実験手法や統計学的分析方法
考察
結果からわかった主要事項数点に関して、過去の知見と照らし合わせながら結果の解釈が記載されている
タイトルと要約で論文の全体像をつかむ
もし理学療法士であれば、協会から送られてくる雑誌をまず手にしてみましょう(笑)
表紙に論文タイトルと著者名が書いてあります。
そこで自分の診療と直接関連するようなものを探してみましょう。
もしくは現在、気になっていることをキーワードに
グーグルスカラーなどで検索してみるのも論文を読むきっかけの一つですね。
もし気になるタイトルを見つけたら
いきなり、小説を読むように初学者が1行目から読んでいては日が暮れるどころか、論文を読むことがさらに苦痛になっていきます。
まずは要旨をよむこと(図1:例) です。
タイトルの下に要旨があります。
400字程度ですので簡単に読めますよね。
要旨を読むとどんな目的で、どんな結果だったのかが分かります。
まずはここで自分の診療に重要か、
つまり論文本体まで読み進める必要があるかを判断すべきです。
例えば
自分の診療している対象の患者と研究対象者が異なる
自分の診療現場では汎用できない
自分の診療現場では計測できない etc,,,
であれば
ここで読むのをやめて良いと思います。
しかし、要旨を読むだけでも、そのようなことがあるのだなと知識になります。
逆に
自分の診療している対象の患者と研究対象者が同じ
自分の診療現場で汎用できる
自分の診療現場で計測できる
ような内容であれば自分の診療に役立つかもしれません!
論文本体を読み進めることをお勧めします!
“はじめに”を飛ばして”方法”の“対象”へ進む
ついつい、
“はじめに“から読みたくなりますが、あえてそこは飛ばしましょう。
研究の目的についてはタイトルや要旨から理解できていますし、
前章でも書きましたが、自分の診療に近いものであればイメージが湧いているはずです。
“はじめに“をまず置いておいて”方法“の”対象“を読みましょう(図2)
どのような対象者に対して研究されたのかが記載されています。
ここが最も重要です。
例えば、人工股関節全置換術後の研究だったとしましょう。
自分の施設では従来型の前方アプローチが主で行われており、一方でその論文の対象者は最小侵襲手術の患者を集めており“健側の大腿四頭筋訓練が歩行自立度に影響する“という結果であったとしましょう。
全く違う手術であれば結果が変わってくるのは当然ですので、
この結果を自分の目の前に患者に当てはめて
“THAでは論文に大腿四頭筋訓練が大事と書いてあった”
と自分の患者にそのような理学療法を行うのはナンセンスということがお分かりだとと思います。
また脳卒中片麻痺患者であっても
急性期と回復期では状態が違うので
急性期の片麻痺患者へのアプローチが回復期の患者さんに当てはまるとは限りませんよね。
さらに話を戻して
仮にTHA前方アプローチの患者100名を集めた研究であったとしても、以下の二つを確認する必要があります。
・取り込み基準
・除外基準
その疾患の中でもどのような患者さんを研究対象者としたかが重要です。
例えば取り込み基準では
術前に歩行が自立していた人のみとか、
1次性OAのみとか、
入院患者でも限られた人が研究に取り込まれているかもしれません。
さらに除外基準で
認知症の患者さんは研究から除外したとか
合併症を生じた患者さんは除外したなど
研究には対象者の条件があるかと思います。
よくよく、自分の目の前の患者さんと同等な背景なのか?
を理解した上で論文を読まないと
間違って解釈し、
それを患者さんに実践しては根拠のない治療をおこなうことになります。
学術論文を読むためにはまず
どのような患者が対象なのかをよくよく理解することが
研究結果を診療に反映させるためには重要なのがわかったと思います。
結果の図表を見る
どんな対象者が研究対象かわかり、自分の診療している目の前の患者と一致、もしくは近い患者であればその研究結果は診療の一助になるかもしれませんね。
そこで“方法”の章になるわけですが、そこもあえて飛ばします。
結果の図表を見てみましょう
図表は研究結果の重要なものが記載されているので、そこで測定された調査項目が表の縦欄に書いてあります。
下の図3を見てみましょう。
非ロコモ、プレロコモ、ロコモの三群間での運動器疾患の罹患率が比較されています。例えばここで“ロコモ”をどう判断したのか?診断歴はどう聴取したのか?といったことを調べるためには“方法”に戻り確認すれば良いでしょう。
方法を読み返してみると
ロコモは“ロコモ度テスト”ではなく、“ロコモ5”というアンケートで聴取したことがわかります。
逆にTUGとか片足立ち時間などは一般化された測定なので、あえて方法を確認する必要はないかもしれませんね。
結果を読むには統計手法の知識が入ります。
P値、CI、F値、R2、、、いろいろ出てきます。
しかし
統計手法で見ているものは主に
- 2群(もしくはそれ以上)に差があるのか
- 2群に相関があるのか
- それは関連因子(危険因子)であるのか
にすぎません。
下の図を見ますとp値が0.05未満のものが脳血管疾患ですので、3群間のどこかで差があったのだな。ということがわかります。
難しい統計書を読んで、どのような解析方法があるのかなどを勉強するのはナンセンスです。論文の結果や方法を読んで、このような場合にはこのような解析方法を使うのか!という風に理解した方が早く覚えることができます。
また、統計解析の数値の裏を読むことは上級レベルです。
まずは平均値や標準偏差を眺めることが重要です。
例えば3群間で体重は有意差がありませんが、非ロコモとロコモでは平均が4キロ近く違います。
有意な差でなくともそこは結果に影響を与える重要なことかもしれません。
また睡眠導入剤使用の有無も有意な差はないですが、非ロコモとロコモでは倍以上違います。
これらはそもそも平均年齢が非ロコモとロコモでは8歳も違いますので、加齢による影響がすべての項目に影響を与えていることが考えられます。
どのような研究結果を読むにせよ、“年齢”については確認しておかねば結局のところ加齢が結果に影響しているだけの場合も多いにありえます。
そのような結果に影響を与える因子を調整して、研究結果を判断するのが
多変量解析といわれるもので、ほとんどの論文の最後の表はこの多変量解析の表が掲載されているはずです。
表の下に“年齢と性別で調整”と書いてあります。
つまり
年齢と性別の影響を加味してロコモと“転倒”“低骨密度”“サルコペニア”の関連性を見たということです。
結果、転倒は“年齢と性別”と独立して関連があったということになりますね。
結論を読む
結果の図表を見て、考察に入りたいところですが
考察の最後に“結論”が必ず記載されていますので、そこを読みましょう。
研究のまとめと著者が主張したいことが端的に書かれています。
まとめ
論文をざっくり読むコツをまとめました。
このような順番で読んでいけば研究内容の概要を知ることができ、
- どんな患者に対して
- 何を調べると
- 何と比べて
- 結果どうだったか
といった研究結果の基本的な骨子を知ることができます。
しかし、自分で研究を行うには、“批判的吟味”といってさらに論文を読み込む必要がありますし、今回のような斜め読みではその研究を理解することができません。
読み方が異なってきます。
現場で働く理学療法士が大半を占め、ほとんどの理学療法士が診療に従事しているわけですので、なるべく短時間に研究のエッセンスを抽出し診療のアイデアや参考にすることが重要です。
繰り返し、このように読んでいくことで論文に慣れてきますので、
せっかく送られてきた学会誌が封を開けずにゴミ箱に行かないように(笑)願うばかりです。
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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