こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fractureprevent)です!
今回は骨粗鬆症治療薬の一つ活性化ビタミンD3製剤エルデカルシトールの骨量上昇、転倒予防効果についてお話します。
骨粗鬆症治療・予防の基本
骨粗鬆症治療・予防の基本は運動療法、栄養療法、薬物療法です。
健常な中高年であれば、運動療法や栄養療法の組み合わせで骨量の維持が期待できますが、
すでに骨粗鬆症になっている人、骨折したことのある人ではそれだけで骨の健康を維持するのは不可能で薬物治療が必要となます。
骨粗鬆症の薬物治療の問題
骨粗鬆症の薬物治療で問題になっているのが、その治療率の低さと継続率の低さです。
降圧剤は多くの高齢者が服用しているのに対し、骨粗鬆症治療率は20%程度、さらに5年以内に半数の人が服薬をやめてしまっています。欧米や他のアジア地区よりも日本で骨折患者は増加しているのは薬物治療が十分にできていないからともいえます。
活性化ビタミンD3製剤エルデカルシトールの効果
骨粗鬆症治療薬は骨吸収を抑制するものやカルシウム製剤、副甲状腺ホルモン薬など様々なものがあります。今回紹介する活性化ビタミンD3製剤エルデカルシトールはカルシトリオール(1α,25-ジヒドロキシビタミンD3)の誘導体だそうで、消化管からのカルシウム吸収を増加させるだけでなく、破骨細胞(古い骨を吸収する細胞)の前駆細胞を骨表面から分離させたり、骨形成に直接作用することで骨密度を上げると言われています。
このエルデカルシトール投与と骨への負荷が、骨密度に及ぼす影響をラットで検証した基礎実験があります。ラットの骨に負荷をかけた場合と負荷をかけなかった場合では、負荷をかけかつエルデカルシトール高量投与した群で骨密度の大きな上昇を認めています(図1)。
つまり、活性化ビタミンD3と運動負荷によってさらに骨量を上昇させる可能性を示唆しています1)。
図1エルデカルシトールを投与したラットの脛骨の骨量をみた実験の結果
実際にエルデカルシトールの服用で骨折が減るのか?運動機能への関与もあり?
では実際に、このエルデカルシトールの服用で骨折も減るのでしょうか?
1000名以上の骨粗鬆症患者に、エルデカルシトールを投与し、他の薬を服用している群と比較した海外の治験の結果では、エルデカルシトールは新規の椎体骨折を26%減少させることができています。さらに他の治験では前腕骨折の発生も71%低下させており、優れた骨折予防効果を示しています。
加えてエルデカルシトールには運動機能にも関与するようです。エルデカルシトールを他の薬剤(アレンドロネート)と併用して服用した際、TUGや筋力のスコアが改善したことからバランス反応を改善させ、転倒も抑制できるのではないかといわれています。一方で、大腿骨近位部骨折の骨折抑制効果についてはエビデンスレベルはC(効果が証明されていない)と低いのが現状です(図2)2)。
図2 骨粗鬆症治療薬の有効性評価
自分の担当している骨粗鬆症、骨折した患者さんが治療薬を服用しているのか?
しているとしたらどのような薬なのか?
運動療法との併用で転倒予防効果があるのか?
など、基礎的な情報として取り入れておくことで、患者指導や運動療法の選択も変わってくるかもしれませんね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
参考資料
1)Effects of eldecalcitol on cortical bone response to mechanical loading in rats
2)骨粗鬆症の 予防と治療ガイドライン 2015年版
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