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下肢筋力と動作能力のまとめ(カットオフ値・基準値掲載)

“たけ”
“たけ”
こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

今回は下肢筋力と動作能力についてまとめました。カットオフ値も掲載していますのでご参考までに♪

筋力と動作能力には密接な関係がある

筋力と動作能力の関係は密接な関係があり、ある一定以上の筋力レベルまでは筋力は動作能力に影響を与えませんが、ある一定レベルを下回ると、筋力が低下するに従って動作能力も低下していきます。

この特性を活かして、私たちセラピストは筋力測定値から患者のおおよその動作能力を推定できます。

また、その逆に動作能力からおおよその筋力を推定することもできます。

測定した筋力数値や動作能力の変化はリハ治療効果の参考にもなりますね。

これを知っているのと知らないのでは治療の立て方が大違いです。

しっかり患者さんの機能面を評価している方は普段使っていると思いますので、当たり前の記事になってしまうのですが・・

僕は数値をよく忘れてしまうのでいつでも見られるようにと思ってアップしました!

僕みたいに忘れやすい方は有効活用してもらえたらと思います。(・ω・)ノ

運動器疾患のない高齢患者の膝関節伸展筋力体重比(測定値kgf/体重kg)と移動動作能力の関係(山﨑2002)

動作ができるレベルは以下の通りです。

連続歩行(院内独歩)

全例自立0.40kgf/kg以上
全例非自立0.25kgf/kg未満

階段昇降

・全例自立0.50kgf/kg以上
・全例非自立0.25kgf/kg未満

椅子からの立ち上がり

・全例自立0.35kgf/kg以上
・全例非自立0.20kgf/kg未満

全例自立と全例非自立の間は、その動作が自立してできるかできないかのグレーゾーンです。

数値が高いほど動作が自立してできる可能性は高くなります。

上記では動作ができる数値を掲載しましたが、逆にこれらの動作が自立してできているレベルであれば、表記している筋力値以上はあるとも考えることができます。

健常者の性別・年代別の等尺性膝伸展筋力値(平澤ら2004)

評価した等尺性膝関節伸展筋力値は、健常者を元にした標準値も報告されているので目安として覚えておきましょう。

筋力を測定された患者さんの多くは、自立してできるかどうかだけではなく、

「自分は標準的にみてどのくらいか?」

っといったところが気になる方も多いです。

また、自立していてもさらなる筋力向上が必要な場合など、目標値を提示してくれた方がやる気も出る場合が多いのではないかと思います。

男性

20歳代 0.96±0.13
30歳代 0.85±0.15
40歳代 0.78±0.12
50歳代 0.76±0.16
60歳代 0.64±0.13
70歳代 0.56±0.09
80歳代 0.49±0.07

女性

20歳代 0.74±0.14
30歳代 0.65±0.12
40歳代 0.64±0.13
50歳代 0.59±0.12
60歳代 0.50±0.09
70歳代 0.46±0.10
80歳代 0.39±0.05

脳卒中片麻痺者の非麻痺側膝伸展筋力と移動動作(川渕ら2002)

上記は対象が運動器疾患のない高齢者でしたが、疾患によっても動作遂行に必要な値は異なることがあります。

特に、左右の非対称性が出るような場合、脳卒中の場合は以下が報告されているのでこちらをご参照ください。

連続歩行

全例自立0.55kgf/kg以上

椅子からの立ち上り(40cm台)

全例自立0.60kgf/kg以上

床からの立ち上り

全例自立0.70kgf/kg以上

階段昇降

全例自立0.80kgf/kg以上

※上記のすべての動作において、0.30kgf/kg未満であった場合は全例非自立であった。

おまけ)歩行自立を判断するためには膝関節伸展筋力だけを考慮すれば良いのか?

山﨑らと川渕らの報告を参考にすると、片麻痺患者は運動器疾患のない高齢者と比較し、自立獲得はより高い筋力値が必要であることがわかります。

これは、麻痺側の随意性が障害される分を代償的に補えるだけの筋力が非麻痺側には必要であることを示しているかもしれないですね。

ただし、歩行の自立可否に限定して言うならば、川渕らが報告している筋力値未満でも自立は可能だと思います。

皆さんも臨床で筋力値が上記の自立値を下回る患者さんで自立していて不思議に感じたことはないでしょうか?

そうですね。

歩行自立の判断は筋力値だけでは一概に評価できません

僕が発表した論文では、脳卒中患者の歩行自立可否はTUG認知機能半側空間無視の有無非麻痺側下肢筋力値の4つの因子で高い精度の予測ができるという結果が出ました。

つまり、歩行自立を判断するためには、膝関節伸展筋力以外にも認知機能やその他の部位の筋力、これらを含めたバランス能力も必要になるということですね。

上記にご紹介した筋力値の論文の結果は、あくまで認知機能が顕著に低下していない方の結果ですので、歩行自立を判断する場合にはその他の要因も検討することが重要になります。

これまで、脳卒中患者の歩行自立の予測に関する研究の多くは、高次脳機能障害などの認知機能低下を呈する症例を除外した報告が多く、臨床では認知機能が低下した症例の自立予測が経験則に近い状態で行われている現状でした。

そんな現状があって僕が前向きにやったのがこの研究でした。

この結果を利用すれば、臨床で誰でも同じように、そして簡便に、認知機能が低下した症例の自立予測もできる可能性があります。

ただし、自分がやった研究にも今後の改善点が以下のように多数あります。

・同一施設内での妥当性の検証しかおこなっておらず、他施設での運用の検討が必要
・症例数を増やして再検討する必要がある
・症例数を追加して検討している最中、やはりデュアルタスクやステッピングを定量的に評価できるバッテリーを入れる必要性を感じた
などなど…

課題は多いですが、今の所はまだ良い論文が出てきていないようなので、困った方は読んで使用可否を検討してみてください。

ご参考までに(o^^o)

メディカルオンライン:高次脳機能障害の影響を加味した脳卒中患者の歩行自立の判断基準の検討

動作能力から下肢筋力値を推定する方法

筋力測定器がない場合や、何らかの理由で筋力測定が正確に実施できない場合には、以下の動作能力からおおよその筋力を判断する方法が役に立ちます。こちらは立ち上がりと段差昇降の能力から筋力値を推定する方法です。

運動器疾患のない高齢者の等尺性膝関節伸展筋力と立ち上がり動作の関係(大森2004)

対象者に台の上に座ってもらい、上肢を使わず(両手を胸の前で組んで)立ち上がれるかどうかを評価します。

※以下に表記している膝関節伸展筋力値は、上記まで一側とは異なり両側下肢の平均を体重で割った値で報告されていることにご注意ください。

40cmからの立ち上がり
全例可能な筋力値35%以上(可能な患者の最低値は20%)

30cmからの立ち上がり
全例可能な筋力値45%以上(可能な患者の最低値は20%)

20cmからの立ち上がり 
全例可能な筋力値30%以上(可能な患者の最低値は30%)

運動器疾患のない高齢者の等速性膝関節伸展筋力と昇段動作の関係(青木2001)

※以下に表記している膝関節伸展筋力値は、等速性膝関節伸展筋力でNm/kgであることにご注意ください。

・10cm台への昇段
全例可能な筋力値0.90Nm/kg以上(可能な患者の最低値は0.45Nm/kg)

・20cm台への昇段
全例可能な筋力値1.00Nm/kg以上(可能な患者の最低値は0.57Nm/kg)

・30cm台への昇段
全例可能な筋力値1.20Nm/kg以上(可能な患者の最低値は0.81Nm/kg)

・40cm台への昇段
全例可能な筋力値1.40Nm/kg以上(可能な患者の最低値は0.95Nm/kg)

この両者を使用すると、動作からおおよその筋力値を推定することができ、換算した推定値から歩行自立可能かどうかも判断できますね。

ただし、この評価方法は、関節可動域制限などがあると動作自体に高い筋力が必要となるため、筋力値が実際に患者が有しているよりも低く評価される場合があるのでご注意ください。

本日は以上で終わりです。

今回は簡単なまとめ記事なので、ほぼほぼ数値の提示だけで終わりますw

ちょっとあっさりし過ぎて味気ない気がしますが、筋力と動作の関係を使えば患者さんに色々還元できることがありますので、上手く利用して「この人のリハの質は高い!」と患者さんに思われるような臨床を展開しましょう♪

最後までお読みいただきありがとうございました!

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参考資料

・山崎裕司,他:等尺性膝伸展筋力と移動動作の関連一運動器疾患のない高齢患
者を対象として一.総合リハビリテーション.2002;30:747-752.
・川渕 正敬,他:脳卒中片麻痺者の非麻痺側膝伸展筋力と移動動作の関連.高知
リハビリテーション学院紀要 .2011;12:29-33.
・大森圭貢,他:高齢者における等尺性膝伸展筋力と立ち上がり能力の関連.理学療法学.31;2004:106-112.
・青木詩子,他:昇段能力と膝伸展筋力の関係.PTジャーナル.2001;35:907-910.

今回ご紹介した筋力の評価方法の一部を含め、転倒リスクの評価方法やカットオフ値に関してならこちらにも結構書いてます↓

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