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【転倒予防の基礎知識】交通事故死より多い高齢者の転倒・転落死

こんにちは 理学療法士の青木です。

今回は2本足で歩く人間にとって避けることのできない宿命かもしれない転倒についてです。

病院においても転倒により怪我をされ入院された方、入院中に転倒された方を多く目にします。

日常的に起こっている転倒ですが実は・・・・

不慮の事故のうち転倒・転落死は交通事故死を上回っているという厚生労働省の調べがあります。

よく目にする転倒ですが実は恐ろしいものなんです。

 

転倒とは

まず転倒の定義とはなんでしょうか?

皆さんは知っていますか?

「他人による外力、意識消失、脳卒中などにより突然発症した麻痺、てんかん発作によることなく、不注意によって、人が同一平面あるいは低い平面へ倒れること」

とされています。

高齢者の寿命が長くなるに従い、高齢者の転倒、転倒に伴う骨折や外傷が健康な生活を著しく損ない、健康寿命を縮める事が知られ転倒予防の重要性が広まってきました。

 

転倒と骨折との関係

高齢者に多いと言われている大腿骨頚部骨折

大腿骨頚部骨折は1年後になっても2割が寝たきりになるとも言われている恐ろしいものです(Tsuboi M et al, J Bone Joint Surg, 89-B, 2007)。

 

大腿骨頚部骨折は立った位置からの転倒によるものが70%以上を占めています。

言い換えれば転倒を防ぐ事で高齢者のほとんどの骨折を防ぐ事が出来るのではないでしょうか。

 

高齢者は転倒によりほぼ全てが骨折する?!

このうような記事がありました。

大腿骨近位部骨折について骨折の条件を理論的に考えると、骨折は骨折するのに必要な骨折荷重よりも転倒により加わる衝撃荷重が大きい場合に生じる。

骨に転倒を模した衝撃を機械的に与える実験により、若年者では7200N程度、高齢者では3440Nとされています。また、転倒による衝撃荷重は約5600Nとされているため、高齢者では骨折荷重を衝撃荷重を大きく上回るため理論的には転倒によりほぼ全てが骨折することになります。(日本転倒予防学会誌Vol.1:11-20 2015)

 

※実際は他の要因の関与も考えるためこれが全てではありませんが・・・

ですが高齢者の転倒はこれほど骨折リスクが高いとなれば転倒をほっておくわけにはなりません。

 

転倒の原因

転倒の要因は以下が関与が強いと報告されています。

内的要因(身体的要因)

・筋力低下(サルコペニア)

・注意力低下

・持久力低下  などなど・・・

外的要因(生活環境)

・照明が暗い

・大きな段差がある

・薬の副作用 などなど・・・

 

米国老年医学会による転倒予防ガイドラインでは

臀筋弱化、バランス低下、4種類以上の服薬の3因子のうち1つでも当てはまれば1年以内に転倒する確率は12%、全て揃えば100%と言われています。

 

みなさんも意識されている筋力低下、持久力低下なども因子としてあげられます。

しかし、その他にも多くの因子が存在するため、ただ歩くだけの運動では転倒予防には繋がらないことがわかります。

“たけ”
“たけ”
なるほど。これらの因子も加味して治療を行ったり生活環境や服薬などにも注目して総合的に介入・調整方法を判断していかないといけないというわけですね!

 

まとめ

分かっているようで、実はわかっていない転倒予防。

転倒には色々な原因があることがわかりましたでしょうか?

 

セラピストは筋力訓練、持久力訓練などの機能面ばかりに目が向きがちですが、環境、服薬状況など、転倒予防の観点から考えると本当はもっとしっかりと把握しなければいけない事がたくさんあります。

これを意識して考えることで、今よりも広い視野で患者さんの転倒予防に対する介入ができ、骨折、寝たきり、要介護となってしまう高齢者を少しでも減らしていく事が可能になるかもしれません。

この情報がそういった介入の一助になれば幸いです。

 

本日は以上で終わります。

最後までご覧いただきありがとうございました!


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たけ
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