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必ずおさえておきたい!深部静脈血栓症の臨床症状とD-dimer基準値

こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

リハビリを実施する際、まず最初に何をしているでしょうか?

患者さんの調子を伺う、Vital signを測定するetc…

色々あるかと思いますが深部静脈血栓症の有無もこれらと同様にルーチンな評価を行っていますでしょうか?

忘れているという方は、必要性を再認識していただく機会になければ幸いです。

 

深部静脈血栓症の発症率

肺塞栓症研究会共同作業部会の報告では、急性肺血栓塞栓症と確定診断された309例中、院外発症150例(49%)、院内発症159例(51%)と、急性肺塞栓症は院内発症が多く、院内発症では特に術後が多い(110例/159例=69%)と報告されています。

・・これを見ると、急性期に多いようですが、院外発症も同程度の数値を呈している点に着目する必要があるかと思います。

深部静脈血栓症や肺塞栓症は、「回復期や生活期のリハだからあまり遭遇する機会はない」と思われる方も多いかと思いますが、これらの時期に携わっておられる方でも、急性期同様に遭遇する可能性があるものと認識し、十分に注意しましょう。

脳卒中ガイドラインでも注意すべき二次的合併症として挙げられていますね。

 

なぜ深部静脈血栓症に気をつけるのか?

深部静脈血栓症の有無に気をつけなければならない理由は、急性肺塞栓の誘引となることが多く、無症状から突然死を来たすこともあるからです。

 

突然死!!?

 

そうです。

深部静脈血栓症を有する患者さんに運動を行わせる場合、特別な治療がなされていなければリハ中に肺塞栓症が起こることにより「突然死」が発生する可能性もあるのです。
※肺塞栓の臨床症状は肺血管床を閉塞する血栓の大きさや患者さんの心肺予備能、肺梗塞の有無などによって程度が異なります。

>文献1より引用

 

深部静脈血栓症は、下肢や骨盤内の静脈に発生することが多く、急性肺塞栓症の塞栓源の90%以上は下肢あるいは骨盤内の深部静脈であるといわれています。

下肢に血栓があった場合、歩行などの運動による下肢筋の収縮に伴う静脈還流量の増加(筋ポンプ作用)は血栓の遊離を引き起こすと推測されており、肺塞栓症研究会共同作業部会調査(後ろ向き)研究では、57%が起立や歩行、22%が排便・排尿に伴って発症していたと報告しています。

急性肺血栓塞栓症を発症した場合の死亡率は14%です(心原性ショックを呈した症例では30%、心原性ショックを呈さなかった症例では6%)。

この数値が多いか少ないかはさておき、深部静脈血栓症を有している場合は、「肺塞栓による死の危険があるというリスクがあることを、常に頭に入れておきましょう。

そして、リハ実施前には、患者さんを危険にさらさすことがないように、深部静脈血栓症の可能性をできる限り否定できる状態であることを確認しましょう。

深部静脈血栓症の有無の診断方法は、以下のようなアルゴリズムで実施されますが、今回の記事では、私たちでも容易に実施できる(身体)臨床所見の確認方法と、短時間で簡単に実施できるためによく利用される血液検査(D-dimer)のみを取り上げます。


>文献1より一部改変引用

 

掲載した方法だけでも知っていれば、深部静脈血栓症がある患者さんを不用意に運動させたりすることは少なくなると思いますし、早期発見や早期治療を行うことにつながるかもしれません。

 

臨床所見 ~フィジカルアセスメント~

深部静脈に生じた新鮮な静脈血栓は、血管壁に炎症を生じさせるとともに、静脈を閉塞させて末梢静脈圧を上昇させます。

また、静脈拡張や新鮮血栓から放出される化学物質は、静脈外膜や中膜あるいは周囲軟部組織の刺激受容体を刺激します。

これらの機序より、浮腫、不快感、鈍痛などの症状が発生し、以下にまめるような所見を呈します。

なお、深部静脈血栓症を有している場合は、小さな血栓がパラパラと肺に飛んでくような感じで肺塞栓症を呈している場合も少なくはないため、肺塞栓症の自覚症状も合わせて覚えておくと良いかと思います。
※軽症の場合は、記載したような所見がわかりにくいことが多いので十分な注意を払いましょう!

※Homan’s sign:膝を軽く押さえて足関節を背屈させると腓腹部に疼痛が生じる
※Bancroft’s sign:下腿を前後に圧迫した際には疼痛が生じるが両側から圧迫した場合は疼痛が生じない

 

 

また、危険因子や症状所見から臨床確率を点数化して評価する方法にWellsスコアがあります。Wellsスコアの合計点0点の低臨床確率の症例は、これに後述のDダイマー正常という条件が加われば、安全に深部静脈血栓症が除外できるといわれています。

 

血液検査 ~D-dimer~

深部静脈血栓症の急性期に上昇する凝固線溶マーカーには多数の指標がありますが、診断にはD-dimerが有用です。

D-dimerは、簡単に言うと血栓が分解されてできる分解産物の最小単位・最終形態(フィブリン形成→プラスミンによるフィブリン分解→FDP→D-dimer)です。

つまり、分解産物の最小単位であるためにアーチファクトがなく、D-dimerが高値を示しているということは、血栓が形成傾向であるということを示します。

 

基準値 <2~3μg/mL

 

ただし、血栓形成を示すような病態は深部静脈血栓症や肺塞栓症のみではありません。

 

このように、D-dimerが上昇する病態はたくさんありますね。

臨床では、D-dimerが陰性の場合をもって深部静脈血栓症を否定します。

D-dimerが基準範囲内であれば深部静脈血栓症は98~99%が否定可能といわれています。

療法士が直接的に診断や安静度を変えたりするところはないですが、D-dimerみて基準範囲内であれば離床しても良いというようなルールがある病院もあると思いますので、ご参考までに!

D-dimerの値の正常化は、深部静脈血栓症の治療に用いられる抗凝固療法の継続期間や終了時期の判断の参考にもなります。

 

深部静脈血栓症の疑いが強い場合の対応

これまでに述べたような深部静脈血栓症の臨床所見に該当し、深部静脈血栓症の疑いが強い場合には、基本的には下肢運動は禁止し早急に主治医へ報告を行いましょう。

そして、下肢運動を伴うようなリハプログラムは、確定診断、重症度などの診察を行っていただき、それに応じた治療を行った後に再開しましょう。

深部静脈血栓症・肺塞栓はリハ実施中の急変だけに限らず、早期発見と適切な治療がその後の臨床経過や死亡率に与える影響が大きいため、患者さんと接する時間が長い私たちは、日ごろから十分な注意を払っておく必要があるかと思います。

日頃から確認する習慣をつけておきたいものです。

 

参考資料

1)循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2008 年度合同研究班報告) 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版):https://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf
2)Elf JL, Strandberg K, Nilsson C, et al. Clinical probability assessment and D-dimer determination in patients with suspected deep vein thrombosis, a prospective multicenter management study. Thromb Res 2009; 123: 612-616.
3)Nakamura M, Fujioka H, et al. Clinical characteristics of acute pulmonary thromboembolism in Japan: results of a multicenter registry in the Japanese Society of Pulmonary Embolism Research. Clin Cardiol 2001; 24: 132-138.

 

 

本日は以上で終わります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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