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糖尿病と理学療法⑦ 糖尿病神経障害に対する治療

こんにちは、ようぞうです。
今回は前回お話しした神経障害の原因と評価に続いて治療編です

糖尿病と理学療法⑥ 糖尿病神経障害の原因から評価まで糖尿病神経障害に対する理学療法って?と日々疑問に思ってませんか。ここでは糖尿病神経障害に対しての原因と評価について説明しています。こちらを読むことでちょっとでも糖尿病神経障害に近づけますよ。...

基本的な治療は単純に患者さん個人の努力による血糖コントロールです。特に単神経障害は血糖コントロールと血流障害の改善で予後が良い、とも言われています。

もちろん、リハビリテーション職がきちんと関わらなければならない部分もあります。では私たち、リハビリテーション職には何ができるのでしょうか

糖尿病神経障害のリハビリテーション

リハビリテーションが関わる部分は大きく2種類に分けて考えることができます。
まずは一つ目。血糖コントロールのための運動療法です。そしてもう一つが機能向上のためのリハビリテーションです。

①血糖コントロールのための運動療法

血糖コントロールのための運動療法ということで、「当たり前やん」というツッコミが来そうですが、わざわざこれを書くのには理由があります。

糖尿病に対する運動療法が血糖コントロールに対して有効であることは先人たちのおかげで当たり前になっています。したがってしっかりと運動をすることで血糖コントロールを行うことは糖尿病神経障害の発症及び進行の予防に役に立ちます
この当たり前のことを実行していくことが実は一番難しく、患者さんとリハビリテーション職との関係性の構築が大事になってきます。
また、その辺りは“糖尿病と療養指導”という形でいつか紹介させてもらいますね。

この関係性を構築していく上で、平たく言えば患者さん自ら快く運動をしてもらうために、発症途上にある患者さんに対して以下のデータを教えてあげてください。運動すると神経障害発症の予防ができるという根拠です。

・対象:神経障害の発症していない糖尿病患者(1型、2型の両方を含む78人)
・方法:週4時間の活発なトレッドミル歩行(心拍数の50〜85%)を4年間
・結果:
運動神経障害の発症 非介入群と運動群で17%vs0%
感覚神経障害の発症 非介入群と運動群で29.8%vs6.5%

(Exercise training can modify the natural history of diabetic peripheral neuropathy. Balducci.S et al)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16798472

ということで繰り返しになりますが、運動することは糖尿病神経障害の予防になります。これをぜひ患者さんにも紹介してあげてください。

②機能向上のためのリハビリテーション

前回の記載の中で、糖尿病神経障害が及ぼす影響に筋力低下、およびバランス障害、そして歩行能力低下を紹介しました。これは糖尿病神経障害の有無にかかわらず、私たちリハビリテーション職が頻繁に出会うことの多い症状です。

このような糖尿病神経障害を起因とする筋力低下でもリハビリテーションを行うことで筋力の改善効果が得られます。それを調べた報告は以下のとおりです。

・対象:2型糖尿病男性患者11名(最低10年間はまともに運動していない)
・方法:10週間の期間にわたって週3回のレジスタンストレーニング(上肢と下肢それぞれを対象に1RMの50%を2×10回、徐々に負荷は増加)と、高強度インターバルトレーニングを実施
・結果:最大筋力17%の改善、運動耐用能および血圧調整能力の改善
(Long-standing,insulin-treated type 2 diabetes patients with complications respond well to short-term resistance and interval exercise training.S.F.E.Praet et al)
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/18230822

ということでほんの一例ですが、糖尿病患者さんに対しても運動療法は有効というのがわかってもらえるでしょうか。

ここまで少し堅い書き方になってしまいましたが、糖尿病に罹患する患者さんってざっくりいうと運動習慣のない方が多いです(中にはステロイドなどの薬剤性のものが原因、という方もいますが…)。そんな方達だからこそ、年齢の割に筋力は低下し、バランス能力や歩行速度なども落ちてしまっているのは当然とも考えられます。

私たちリハビリテーション職の者がきちんと医学的にリスクを把握し、適切な負荷量を提供することが、私たちが患者さん達に提供できる部分だと考えます。またそれができることは他の医療職ではなく、リハビリテーション職だからこそだと考えます

まとめ

まとめ

・糖尿病神経障害のリハビリテーションの大きく分けて目的は2つあり、血糖コントロールのためと機能向上のために行う
・運動療法を含む血糖コントロールをしっかりと行うことで神経障害の発症・進行予防に効果的である
・神経障害を合併した糖尿病患者でも運動療法を行うことで筋力や運動耐用能などの向上が見られる

今回は神経障害の治療編としてかかせていただきました。ただこのまとめを見て気づく方もあるかもしれませんが、なにやら“もや”っとした感じが分かりますか。
実は現在の診療報酬体系ではこの目的のみでリハを行うことは難しいです。このため、糖尿病神経障害のみをターゲットにしたリハはほとんどされていないと思います(関わっても短期間の教育入院くらいかなぁ)。したがってこうして書かれてもピンとこないかもしれません。

ただ、自分の患者を振り返っていただくと糖尿病を合併している患者さんは普通におられます。その患者さんたちに運動を提供する際に上記のまとめに記載した目的を知っているのと知らないのとでは大きく変わります

なのでちょっとでも今回のお話を知っておいてもらえたらありがたいな、と思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
ようぞう
ようぞう
【理学療法士/日本糖尿病認定療養指導士】 ある時に思い立ち、町や村を直す設計技師から人の身体を治す理学療法士に転身しました。そうして憧れの理学療法士になり、理学療法士にできることを探していたら、糖尿病理学療法に行き当たりました。そこで思うことは糖尿病は誰にでもなりうる病気であること、そして誰にでも避けることのできる病気であることを知りました。僕が知ってることを紹介していくことで、少しでも糖尿病を知り、そして糖尿病理学療法という世界に興味をもって貰えたら嬉しいです。
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