こんにちは、cascade (@cascade1510 )です!
突然ですが、「臨床推論」という言葉は聞いたことがありますでしょうか?
英語では「クリニカルリーズニング(clinical reasoning, CR)」となっており、こちらのほうがなじみがある人もいるかもしれません。
ざっくり内容を見る
はじめに(多職種連携と臨床推論)
「臨床推論」とは、本来、医師などが診断をするときや治療を決定するための思考プロセスのことをいいますが、その他の職種においても、患者さんの状態や対象者のために最善の行動をとるために行っていることだと理解してください。
このブログを読まれているセラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の方々も、聞いたことがなくても、おそらく日々の臨床を行っていくうえで知らず知らずのうちに実践していることかもしれません。
例えば、
「右の股関節を屈曲したときに強い痛みがでるようだけど、この原因は何だろう?」
とか、
「歩くことが難しい現状では歩行器などの補助具が必要ではないか?」
とか、
「そもそもこの患者さんのニーズに対してどのように進めていくべきだろうか?」
など、現場ではいろいろ考えることと思いますが、その一つひとつが臨床推論だといえます。
このCLINICIANSのブログでもメンバーのシュウさんが先日作業療法におけるクリニカルリーズニングについて解説しています。
ところで、医師や看護師や臨床検査技師などその他の職種の人たちについてはどうでしょう?
実は、それぞれの職種にはそれぞれの臨床推論があります。
たとえば看護師の養成校では看護師の養成校なりに特徴的な教育をおこなったりしているなど、やはりそれぞれの職種における教育にはそれぞれ異なっている部分があるようです。
そして、これはなにも医師や看護師など医療系の職種だけに限りません。
「社会福祉士」や「ケアマネジャー」、「介護福祉士」など、様々な職種がありますが、それぞれの考え方が存在するはずです。
そのため、その他の職種が考えている過程を理解することは、チームでおこなっている限りとても大事なことであるはずなんです。
私はこれまでに、多職種連携に関する記事を書いており、連携のコツなどを論文ベースからひも解いたりしています。
今回は、そんな多職種連携についてより深いコミュニケーションを図るべく、他職種における臨床推論について紹介しながら、
我々はそれを踏まえてどのように考えてどのように動けばよいか、などを考察していきたいと思います。
医師の臨床推論
まず医療の中でも重要な役割をはたす「医師」についてです。
おおまかな流れとしては、図のようになります。
一般情報を収集し、主訴を確認して、診察をし、検査結果などから診断をして、患者さんや家族に説明と同意を得たあと治療方針を決めて、治療をおこない、チーム全体への指示を出す、といった流れです。
例えば外来で受診した患者さんについて考えてみましょう。
医師は、受診の理由と異常な姿勢やケガなどの視診を参考に病歴を聴きます。
病歴を聞きながら常に考えられる疾患や状態を頭に置き、詳しく問診を続けます。
その中で、家族の病気(家族歴)、本人の生活習慣などを聴きながら、触診や打診、聴診などをおこない、どの部分を中心に診察していくかを考えていきます。
身体的診察のあとに、臨床検査や生理検査、画像検査、また専門職による評価の指示を出して、正確な診断をおこなっていきます。
診断後は、本人・家族の了解のもとに決定された治療方針や目標設定にあわせて治療をおこないます。
治療後は、薬の管理やアフターフォローのために、他の職種や他の機関に指示を出していきます。
と、このような流れになります。
チーム医療の中においては、看護師や薬剤師、我々セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)、ソーシャルワーカーなど、チームのメンバーから意見を聞いて、患者さんにとって最善の医療を実践するのが医師の役割ともいえます。
看護師の臨床推論
つぎに「看護師」についてみていきましょう。
看護師の仕事は、主に患者さんや利用者さんの療養上の世話と診療の補助です。
そして、看護師には、図のように看護過程の5つのステップというものがあります。
1.アセスメント
「アセスメント」は日本語では「査定」や「評価」と訳されます。ここでは情報収集と解釈・分析・判断を行います。
2.看護診断
ここでの診断は、看護師が自らの職務責任範囲内で担う看護上の問題のことです。
3.計画立案
明確になった看護上の問題に対して、解決すべき問題の優先順位を決め、目標設定し、達成するための具体的な看護の計画を立てます。
一般には、観察計画(O-P)、直接ケア計画(T-P)、指導計画(E-P)の3つに分かれます。
4.看護の実施
計画に沿って実施します。必要あれば、その場で修正しながら計画を立て直して実施します。
5.評価
実施した看護援助を評価します。
これらの5つのステップはその順番というよりも、互いに関係しあっているため、必要に応じて各ステップに戻り、看護過程を繰り返していきます。
社会福祉士の実践過程
次に、「社会福祉士」についてみていきましょう。
社会福祉士の基盤となる「ソーシャルワーク」については、国際ソーシャルワーカー連盟により以下のように定義されています。
ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、人間関係における問題解決を図り、人々のエンパワーメントと解放を促していく。ソーシャルワークは人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人々がその環境と相互に影響しあう接点に介入する。人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。(国際ソーシャルワーカー連盟より)
要するに、「人権」と「社会正義」を重んじて、患者や対象者だけでなくその家族や取り巻く環境にも働きかけ、より良い支援へ導くことを目標としています。
ソーシャルワークの展開過程は、次の7つの過程によって展開されます。
1.インテーク
「インテーク」は患者さんや対象者に最初に会う場面です。
まずは信頼関係(ラポール)を築く重要な場面となります
2.アセスメント
「アセスメント」として、情報収集をおこない、問題の原因を分析し、解決にむけて考えていきます。
3.プランニング
「プランニング」は、アセスメントで収集した情報をもとに、目標設定を患者さんとともに考え計画する過程です。
情報がたりなければアセスメントを再度おこないます。
4.インターベンション(介入)
「インターベンション」とは、プランニングに基づいて支援を実施することです。
制度にしたがって関連機関へ連絡したり申請する書類の作成を手伝ったりします。
5.モニタリング
「モニタリング」として、経過観察をおこないます。計画通りに進んでいない場合は再アセスメントをしてプランニングを再度おこなったりします。
6.評価
プランニングでの最終目標が達成され、患者さんのニーズが満たされているか判断します。
7.終結
援助の目的が達成されたり、患者さんが他機関に送られた場合、「終結」となります。
ここで一旦は終了となるものの、フォローアップも求められ、新たな問題があればまた再開されることもあります。
ケアマネジャーの実践過程
「ケアマネジャー(介護支援専門員)」は介護保険において中心的な役割を持つ職種です。
そのため、介護保険制度に基づいて対象者とその家族の生活を支えていきます。
大きな流れとしては、図のようになります。
- インテーク(契約・受理面接・相談)
- アセスメント(ニーズの分析)
- ケアプランの作成(計画の立案・調整)
- サービス担当者会議
- ケアプランの実施
- モニタリング(中途の評価)
- フォローアップ(または終結)
先ほどの社会福祉士とは似ている点も多いですが、やはり介護保険の制度に従っていくため、介護保険制度に特徴的な「ケアプラン」や「サービス担当者会議」など、特徴的な用語があります。
セラピスト(PT/OT/ST)の臨床推論
では、我々セラピスト(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)についてはどのような臨床推論を用いて行っているでしょうか?
いま一度考えてみましょう。
おおまかな流れは図のようになると思います。ほんとあくまで大まかにです。
このおおまかな流れの中を軸として、その中で例えばICFに基づいた環境因子や個人因子を考慮しながら、その人の機能面や能力面の状態把握など行いながらどう進めていくかを計画して、そしてそれを実行する。
といった感じになると思います。
自職種として、ある程度理解しているものとして、ここでは省略します。
まとめ
今回は他の職種の臨床推論ということで、主に代表的な職種を取り上げてみましたが、実際にはそのほかにも様々な業種・職種があり、そして地域の住民や家族などをチームとして前に進んでいかなければなりません。
それぞれの職種はたとえば急性期や回復期といった医療での場面が中心であったり、自宅や施設など在宅での生活場面が中心であったりします。
そして、それぞれの職種の特徴をいかした考え方や進めかたの流れを持っています。
だからといって、それぞれの職種がそれぞれ専門的な立場から一方的に発言をするだけではチームとしてうまくまとまらないし、前に進まないこともあります。
一方、我々PTやOTといったセラピストは医療の場面や在宅の場面など、ある程度どの期間にも長くかかわり続けることもできる職種だと思っています。
そういう意味では重要な役割を担っているともいえます。
やはり、他の職種の意図を深く理解したうえで、チームのメンバーの一員として専門的立場と状況を考えながらコミュニケーションをとっていく必要があります。
そして、最も重要なことは、「なんのために多職種で連携しているのか」に立ち返ることだと思います。
なんのためかといえば、言ってしまえば「対象者やその家族のため」だといえます。
連携だけを考えることに主眼を置くと、ともすれば連携するという手段だけが先走って当の本人を置いてけぼりにさせてしまいがちになります。
肝心の対象者のニーズや目標を踏まえて、それに沿って連携して方向性を決めていきたいものです。
今回は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。
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