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福祉住環境コーディネーター・作業療法士が教える住環境整備の評価と支援~基礎編~

こんにちは,作業療法士のu.s.OTです.

今回は,自分としては書きやすい住宅改修,特に住環境整備論~基礎編~をテーマに書こうと思います.

ちなみに僕は,10年前くらいに福祉住環境コーディネーター2級という東京商工会議所が認定している民間資格を取得しました.

福祉住環境コーディネーターとは,対象者ができるだけ自立してその人らしく生活できるように住環境を提案するアドバイザーです.

資格は1級~3級までありますが2級で年間2万5千人が受験しており,そのうち15%がPT/OTの保有資格者で合格率は近年50%程度です.

興味がある方は受験してみてください^ ^

福祉住環境コーディネーター検定試験®

 

作業療法は環境療法

皆さん,担当した対象者の生活環境や住環境の評価ってどのようにしていますか?もしくは重要視していますか?

もちろん,病院,施設,通所など領域によってかなりの違いがあると思います.

2015年のデータを参考までに挙げると身障系の作業療法士の30%程度が臨床業務で生活環境の評価を行っているようです.

ん?

身障作業療法士の30%しか生活環境の評価を行っていない・・・

介護保険領域に至っては20%程度の作業療法士しか生活環境の評価を行っていないようです.

ちなみに筋力や関節可動域などの評価はどちらの領域も80%程度の作業療法士が評価しているとのこと.

 

なんだか偏っていると思うのは気のせいでしょうか?

日本作業療法士協会 作業療法士白書

 

ICF観点からみた:住環境評価の視点

以下に僕が住環境を評価する際の視点をICFにて分類,列挙します.

ただ,列挙しただけだとつまらないので,なぜその視点が必要か,どのようにその視点を活かすのか,リーズニングを少々付け加えます.

健康状態

☆疾患特性など

→これについては説明不要でしょう.疾患による特徴はもちろん重要ですね.

心身機能・身体構造

☆身体機能・認知機能

→身体機能や認知機能も説明不要でしょう.活動や参加につながるのでもちろん重要です.ただ,現状の身体・認知機能を踏まえるだけでなく環境調整によって機能維持や向上をさせていく視点も重要だと思います.

活動・参加

☆ADL/IADL,動線について

→これについてはリハビリ専門職が住環境を整備する際には基本的な事項として評価すると思います.

例えば,屋外から屋内へ移動する際の玄関アプローチ,上り框,自室への動線,自室から食卓やトイレ,浴室への移動,それぞれのADL形態に合わせた住環境整備対象者を自立支援に結び付ける視点が必要です.また,ADLだけでなくIADLの遂行状況を把握し環境整備することも重要だと思います.基本技術は後述します.

☆楽しみや生きがいについて

→当然のことながら人の生活は基本的なADL遂行のみで構成されている訳ではありません.その人らしい充実した生活には楽しみや生きがいを感じられる活動も住環境整備によって遂行可能になると良いと思います.これは役割との関連があるIADLにも共通することですね.

環境因子

☆使える制度

必要な改修や福祉用具が介護保険の住宅改修対象なのか貸与や購入にて対応可能か知識が必要です.また,障害者への補装具費支給制度(車いすなど)についても把握が必要でしょう.

☆家族構成

介助者が家族のどなたかを把握するのも重要です.また,トイレや浴室などの共有スペースは対象者以外の家族もADLを遂行する際に使い勝手が良いように考慮する必要があります.

☆時間帯や季節について

→対象者の生活を日中だけでなく,転倒しやすい夜間や早朝なども考慮して環境整備する必要があると思います.また,玄関アプローチなどは夏季と冬季では自然環境に大きな差がでるので,どちらの季節も想定した環境整備が必要です.

☆予算について

→こちらも当然ですね.予算は有限の場合が大半ですからしっかり考慮すべきですね.

個人因子

☆年齢・性別など

→案外,重要なのが基本的な個人因子ですね.特に対象者の年齢は,今後何年間自宅で生活する想定なのかそれに応じた予算にもなるでしょうから重視すべき項目です.

 

住環境整備の基本技術

基本技術を少しだけ紹介します.

玄関アプローチ

車いす自走を想定する場合,スロープの勾配は1/12(高さ1m/距離12m)~1/15が望ましい.

玄関アプローチ・上り框の段差

段差(蹴上げ)は15㎝程度が望ましい.30㎝以上の段差は式台などを使い等分する.

和洋室の床段差(敷居)

躓きやすく転倒につながるためすりつけ板で段差解消する.

建具(引き戸・開き戸)

開き戸は開閉時にバランスを崩し転倒につながる恐れがあるので引き戸が望ましい.

便座の高さ

一般的には39㎝程度.身障者用は45㎝が多い.

座面が高いと立ち上がりがしやすい.しかし踵が浮くくらい座面が高いと副交感神経が働かず排便反射が誘発されないので注意が必要です.

浴室

転倒しやすい.浴室内の動線や洗体動作の姿勢確保に手すりや福祉用具の使用が望ましい.

浴槽縁の高さ

浴槽の深さと浴槽縁の高さに大きな差があると転倒につながりやすい.

浴槽台などで高さ調整が望ましい.

 

終わりに

今回は住環境整備論~基礎編~をお話ししましたが、いかがでしたでしょうか?

今後,応用編を紹介できたらと思います.

 

僕は現在,週に1度訪問リハビリで利用者さんを担当していますが定期的に住環境の評価と支援を行っています.

最近の出来事として介護保険の住宅改修費を既に満額使われた利用者さんへの段差解消すりつけ板や把手(引き戸のとって)などの簡単な改修であれば僕自身が材料の準備や施工までやってしまうことがあります.
※もちろん,本人,家族,ケアマネさんへの十分な説明のもとです

 

これも作業療法士の強みだなぁと手前味噌です笑

本日は以上です.

最後までご覧いただきありがとうございました.

 

参考資料

福祉住環境コーディネーター検定試験2級公式テキスト改訂5版 [ 東京商工会議所 ]
OT・PTのための住環境整備論第2版 [ 野村歓 ]

ABOUT ME
たけ
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理学療法士&ピラティスインストラクターとして姿勢・パフォーマンス改善の専門家として活動中!発信情報や経歴の詳細は以下のリンクよりご覧いただけます。
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