整形外科

整形外科疾患の理学療法におけるバーチャルリアリティ応用のトレンド(上肢編)

はじめに

こんにちは、北川孝(@Takapon_PT_PhD)です。

 

前回のシリーズ記事では、前十字靭帯再建術後患者や足関節捻挫後患者に対する

VRを用いたリハビリの近年の報告例についての情報をシェアさせて頂きました。

整形外科疾患の理学療法におけるバーチャルリアリティ応用のトレンド(下肢編②)海外の理学療法の研究においては、バーチャルリアリティを活用したものが各疾患において報告されてきています。本記事で下肢の運動器疾患に対するバーチャルリアリティを活用した理学療法にフォーカスをあて、近年のトレンドをチェックしていきます。...

本記事では前回に引き続き、上肢の運動器疾患に対するVR活用リハビリの

いくつか報告のうち、個人的に読んでいて特におもしろかったものを

ピックアップしてご紹介させて頂きます。

 

それでは早速、内容をチェックしていきましょう。

 

肩峰下インピンジメント症候群に対するVRを用いたリハビリテーション

トルコの大学からの2017年の報告では、肩峰下インピンジメント症候群

およびscapular dyskinesis(肩甲骨の運動異常)症例30名に対し、

Nintendo Wiiを利用したVRエクササイズプログラムの介入による有用性を

RCT(ランダム化比較試験)で検討しております。

 

6週間、週に2回(45分ずつ)介入を行い、コントロール群と比較した結果として、

疼痛の程度や肩甲骨の運動異常に対して部分的・短期的にではあるものの、

改善の傾向がみられたというものでした。

 

いくつかの研究のlimitations(限界)はあるものの、

個人的には非常に興味深い内容の論文でした。

(詳細は原文をご参照下さい)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6197467/

 

手関節を中心としたCRPSに対するVRを用いた運動療法

2018年のスイスの大学からの報告では、CRPS(複合性局所疼痛症候群)に

対するVRを利用したリハビリテーションの有用性に関するものが出版されております。

 

一旦発症するとかなり経過に難渋することの多い本症候群ですが、

先駆的な研究者らにより、ミラーセラピーのコンセプトとVRを組み合わせた

デジタル治療が開発されたとのことです。

 

こちらの報告も、対象はやや小規模ながらもしっかりとRCTにて検証を図っており、

本研究の結果では、疼痛の軽減、患肢運動機能の改善、心拍変動の調整がみられたという

ものでした。

根本的な症状の回復までは至らずとも、少しでもあのような辛い症状が

軽減する可能性があるのであれば、素晴らしいものではないかと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。国内でもVRを医療に応用した事例は

散見されてきておりますが、リハビリテーション界隈ではまだまだVRを活用した

研究報告はまばらではないかと思います。

 

本シリーズの最終回となる次回記事では、

体幹の運動器疾患に対するVRリハビリテーションの実践例を

シェアさせて頂きたいと思います。

 

次回もどうぞ、お楽しみにされてくださいね。

参考文献

  1. NO Pekyavas et al., Comparison of virtual reality exergaming and home exercise programs in patients with subacromial impingement syndrome and scapular dyskinesis: Short term effect. Acta Orthop Traumatol Turc. 2017 May;51(3):238-242.
  2. M Solcà et al., Heartbeat-enhanced immersive virtual reality to treat complex regional pain syndrome. Neurology. 2018 Jul 31;91(5):e479-e489.
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たかぽん
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医学博士 / 理学療法士 / ポートフォリオリサーチャー / エビデンスキュレーター 整形外科×理学療法に関連したエビデンスを、私見も交えつつシェアしていきたいと思います。 勢いのある若手〜学術活動にも勤しむ中堅のセラピスト(主にPT)向けのコンテンツを配信していきます。
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