整形外科

整形外科疾患の理学療法におけるバーチャルリアリティ応用のトレンド(下肢編②)

はじめに

こんにちは、北川孝(@Takapon_PT_PhD)です。

前回の記事では、変形性膝関節症患者や人工膝関節全置換術後患者に対する

VRを用いたリハビリの近年の報告例についての情報をシェアさせて頂きました。

整形外科疾患の理学療法におけるバーチャルリアリティ応用のトレンド(下肢編①)海外の理学療法の研究においては、バーチャルリアリティを活用したものが各疾患において報告されてきています。本シリーズでは整形外科疾患に対するバーチャルリアリティを活用した理学療法にフォーカスをあて、近年のトレンドをチェックしていきます。...

本記事では前回に引き続き、下肢の運動器疾患に対するVR活用リハビリの

いくつか報告のうち、個人的に読んでいて特におもしろかったものを

ピックアップしてご紹介させて頂きます。

 

それでは早速、内容をチェックしていきましょう!

 

前十字靭帯再建術後におけるVRを用いたリハビリテーション

オランダの大学からの報告では、前十字靭帯再建術後患者に対する

VRを用いたリハビリテーションによる、膝バイオメカニクスへの有用性に関する報告を

公表しています。

 

こちらの研究は健常者と前十字靭帯再建術後患者の各20名に対し介入を行い、

後者の方が運動パターンの変化が大きかったという報告になりますので、

実際これらをフル活用したリハビリテーションが、そうでなかった場合とで

比較したランダム化比較試験を今後なされるのが望ましいかなと思います。

 

前十字靭帯損傷は若年者に多いですので、こういったテクノロジーを活用した

リハビリテーションならば、

患者のモチベーションにもいい影響があるかもしれませんので、

個人的には心理的な中長期的効果もありそうな気がします。

 

プロフェッショナルレベルや、受傷後1年後くらいに非常に熱い想いを込めるような

部活動の大会がある方は術後のリハビリテーションの意欲も非常に高く、

こちらからお願いする以上の自主トレーニングなどを行ってくださったりもします。

 

しかしレクリエーションレベル、あるいは一般生活レベルの方の場合、

どうしても自主トレーニングなどのコンプライアンス(やってくださる程度)は

低くなりがちですよね。。

 

今後の更なり臨床研究に、期待です!

 

足関節捻挫後におけるVRを用いた運動療法

今度はスイスの大学からの報告になります。

こちらは皆さんももしかしたら使用されたことがあるかもしれません。

本邦が生み出した日本製VR、Wii FitTMを利用した研究報告です。

 

学生さんや新人さんなど、若い方々が創意工夫をこらして実験・症例報告などを

されているの身の回りでもしばしば見てきましたが、

しっかりと臨床研究として、実際の患者さんにも応用されているものもあるのですね。

 

6週間の介入により、歩行速度やケイデンス、歩幅などに改善がみられたということで、

これまたやはり、プロスポーツ選手などではなく、今ひとつケガ(今回で言えば捻挫)の

あとのリハビリに身が入らないような方で、特に若い患者さんであれば、

ゲーム要素を取り入れて行えますので、リハビリにも身が入り、とても有効そうですね。

 

問題は、他の高価な医療機器と似たように、どのリハビリテーション室にも

あるというわけではない点でしょうか。

しかしながら高いとはいっても家庭用ゲーム機ですので、頑張れば手の届く金額ですし

病院・施設の機器購入の権限を持っている方にお願いしてみる価値は

あるかもしれませんね。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。国内ではまだまだVRをリハビリテーションに応用した

研究報告は多くはないかと思いますが、海外では多数なされてきています。

 

医学系を中心とした英語論文のメジャーな検索エンジンである”PubMed”を用いて、

“Virtual Reality” AND rehabilitation

などといったように、VRとリハビリという2つのキーワードを組み合わせるだけでも、

2000を越える研究報告がヒットします。

 

時間が許すなら、全部読みたいくらいです…

 

さすがに全てをご紹介はしきれませんが、本シリーズではもう残り2回の記事を通して、

上肢の運動器疾患、および体幹の運動器疾患に対する、

それぞれのVRリハビリテーションの実践例をシェアさせて頂きたいと思います。

 

次回もどうぞ、お楽しみにされてくださいね。

参考文献

  1. Gokeler A et al., Immersive Virtual Reality Improves Movement Patterns in Patients After ACL Reconstruction: Implications for Enhanced Criteria-Based Return-To-Sport Rehabilitation. Knee Surg Sports Traumatol Arthrosc . 2016 Jul;24(7):2280-6.
  2. IM Punt et al., Effect of Wii Fit™ Exercise Therapy on Gait Parameters in Ankle Sprain Patients: A Randomized Controlled Trial. Gait Posture . 2017 Oct;58:52-58.
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たかぽん
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医学博士 / 理学療法士 / ポートフォリオリサーチャー / エビデンスキュレーター 整形外科×理学療法に関連したエビデンスを、私見も交えつつシェアしていきたいと思います。 勢いのある若手〜学術活動にも勤しむ中堅のセラピスト(主にPT)向けのコンテンツを配信していきます。
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