整形外科

整形外科疾患の理学療法におけるバーチャルリアリティ応用のトレンド(下肢編①)

こんにちは、たかぽん(@Takapon_PT_PhD)です。

最近はテクノロジーの理学療法応用を個人的な興味の対象として、

調べ物をすることが多いです。

 

今回から4記事に分割して、

私が主に臨床・研究のターゲットとしている整形外科疾患において、

近年注目されているテクノロジーの1つである、

バーチャルリアリティ(Virtual reality、以下VR)のトレンドについて、

ご紹介していきたいと思います。

 

VRという言葉、最近はよく聞くようになってきたかと思います。

 

 

似た用語であるAR(Augmented Reality=拡張現実)との違いも、

この際復習しておくといいかもしれませんね。

 

こちらの動画が具体例も挙げられ、理解しやすいかと思います。

       (ディスカバリーチャンネル「今さら聞けないARとVRの違い | Dbox」)

 

本記事では、膝関節疾患に対する臨床応用例を、

その後は順次、各関節の整形外科疾患に対する臨床応用例を、

いくつか学術的な報告があるものを中心にピックアップしてお伝えしたいと思います。

 

変形性膝関節症に対するVRを用いた理学療法

オランダのある研究グループでは、変形性膝関節症患者に対する臨床応用を目指し、

ウェアラブルな視覚フィードバックシステムを用いた歩行トレーニングの方法が

開発されています。1)

 

イメージとしてはこんな様子です。

       (Cleveland Clinic “CAREN Virtual Reality Treadmill: Take a Video Tour”)

 

中国の別の研究グループではそれよりも以前に、シンプルなVR装置を用いた

変形性膝関節症患者に対するVR利用の可能性を報告しています。2)

 

これらのデバイスを活用した介入を行うことで、下肢のバイオメカニクス指標、

膝関節機能(ROM、疼痛、筋力等)、歩行能力の改善が期待されています。

 

人工膝関節全置換術後におけるVRを用いた理学療法

一方、人工膝関節全置換術を施行された患者に対するVRを用いた

理学療法の報告は、多々なされています。

 

2016年の韓国からの報告では、VRを用いることで運動を積極的に行うように

モチベーションを向上が図れたとの前向きな報告3)が、

 

2018年の中国から出たRCT(ランダム化比較試験)では、

術後早期から臥位のままでも(ボートを漕ぐようなVR介入を行うものを)積極的に

活用することで、

従来型のリハビリテーションよりも術後疼痛の軽減ならびに機能回復が良好であったとの

報告4)があります。

RCTとしても質も決して低くない結果・内容でした。

とても興味深いですね。

 

また2019年の米国からの報告5)では、telerehabilitation(テレリハビリテーション、

遠隔でのリモートによるリハビリ指導など)であっても、

VRを用いた介入を行うことで痛みや機能スコアをしっかりと計測していったところ、

決して悪くない結果であったことが述べられております。

 

昨今の情勢を踏まえると、遠隔診療に続き、遠隔リハビリテーションというのも

いよいよ我が国でも現実味を帯びてくるのかもしれません。

 

もちろん

転倒リスクがほぼない方である

あるいは

遠隔リハを行うための環境設定およびデバイスの使用が可能である方

が前提となるため、

 

このあたりが難しいご高齢の方にすぐさま浸透するのは課題も多いかと思います。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。海外の報告をいろいろつまみ読みしていますと、

医療のトレンドや未来が垣間見えてくるので、とても楽しいです。

 

もちろん文化的、あるいは法律面での課題等があるため

すぐさま海外のリハビリテーションが本邦に導入されてくるというものではありません。

 

しかし、人生100年時代においては、おそらく今回ご紹介した例に代表されるような、

さまざまな近年のテクノロジーを活用したリハビリテーションというのは、

我々が人生の後半において活用していかざるを得ない可能性も大いにあります。

 

またそうでなくとも、我々が医療・リハビリテーションをいざ受けるようになる

年代の頃には、すっかりと普及してきているという可能性もあります。

 

完全な予測というのは不可能だと思いますが、

ある程度でいいので、未来のシナリオが想定できると、安心感が得られます。

 

本シリーズで、ぜひ未来の理学療法・リハビリテーションに

思いを馳せて頂けたらと思います。

 

参考文献

  1. A Karatsidis et al., Validation of Wearable Visual Feedback for Retraining Foot Progression Angle Using Inertial Sensors and an Augmented Reality Headset. J Neuroeng Rehabil . 2018 Aug 15;15(1):78.
  2. DH Lin et al., Comparison of Proprioceptive Functions Between Computerized Proprioception Facilitation Exercise and Closed Kinetic Chain Exercise in Patients With Knee Osteoarthritis. Clin Rheumatol . 2007 Apr;26(4):520-8.
  3. M Lee at al., Patient Perspectives on Virtual Reality-Based Rehabilitation After Knee Surgery: Importance of Level of Difficulty. J Rehabil Res Dev . 2016;53(2):239-52.
  4. Jin C et al., Virtual reality intervention in postoperative rehabilitation after total knee arthroplasty: a prospective and randomized controlled clinical trial. International Journal of Clinical and Experimental Medicine 2018 Jun;11(6):6119-6124.
  5. M Chughtai et al., Rehabilitation in Total and Unicompartmental Knee Arthroplasty. J Knee Surg . 2019 Jan;32(1):105-110.
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たかぽん
たかぽん
医学博士 / 理学療法士 / ポートフォリオリサーチャー / エビデンスキュレーター 整形外科×理学療法に関連したエビデンスを、私見も交えつつシェアしていきたいと思います。 勢いのある若手〜学術活動にも勤しむ中堅のセラピスト(主にPT)向けのコンテンツを配信していきます。
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