こんにちは。理学療法士のこじろうです!
前回は、非特異的腰痛に含まれる「上殿皮神経障害」について投稿させて頂きました。
そこで今回は、やはり・・・
『中殿皮神経障害』
について少し話をしていきたいと思います。
腰痛診療ガイドライン2012では、腰痛の85%は原因が特定できない腰痛、つまり「非特異的腰痛」であると言われていました。
しかし、実際には問診と身体所見、理学所見、診断的神経ブロックなどを組み合わせれば正確な診断・治療を行うことが可能であると言われています。
以前に投稿しました、「原因がわからない腰痛は85%というのはもう間違い!?論文から分かる過去と現在の非特異的腰痛の考え方」でも話をしています。
そして今回は「非特異的腰痛」の中でも「中殿皮神経障害」について話をしていきたいと思います。
腰殿部痛には様々な要因があるため、1つずつ整理しておくと評価の幅が広がっていくこと間違いなしです!!
中殿皮神経について
中殿皮神経:middle cluneal nerve(MCN)
・S1-4の感覚枝(後根神経)の分枝。
・上後腸骨棘と下後腸骨棘の間で後仙腸靭帯を貫通し、内側から下外側へ向かう。
(下後腸骨棘の頭側近くに存在することが多い。)
・MCNは上殿皮神経(SCN)と殿部皮下で吻合があるため、SCN症状と合併することもあ
る。または仙腸関節付近にあるため、仙腸関節障害とも併発しやすく、症状が複雑化す
る。
殿部の皮膚の神経分布について
まずは、殿部を支配する感覚神経支配から話を進めていきます。
殿部の皮膚には腰神経の後枝にあたる「上殿皮神経」、
仙骨神経の後枝にあたる「中殿皮神経」、
仙骨神経の前枝によって形成される仙骨神経叢に由来する「下殿皮神経」、
腰神経叢由来の「腸骨下腹神経の外側枝」などが分布しています。
<図:右殿部の末梢神経デルマトーム>
つまり、まとめますと殿部の感覚神経支配は
仙骨神経叢と腰神経叢(脊髄神経の前枝)の一部と脊髄神経の後枝よりなります。
・仙骨神経叢由来:下殿皮神経(後大腿皮神経から)
・腰神経叢由来:腸骨下腹神経の外側枝
・脊髄神経の後枝:上殿皮神経(第1-3腰神経の後枝)と中殿皮神経(第1-3仙骨
神経の後枝)
中殿皮神経障害とは?
・上後腸骨棘と下後腸骨棘の間で後仙腸靭帯により絞扼され、腰殿部痛を引き起こします。
診断基準としては
- 症状は腰の運動や姿勢で悪化する殿部痛
- PSISから尾側35mmのやや外側に圧痛点がある。(中殿皮神経の絞扼部位でもあります。)
- 中殿皮神経ブロックで50%以上の症状改善が得られる。
中殿皮神経障害の症状
・症状が増悪しやすい姿勢としては、長時間の座位や立位、歩行、前屈などです。
・腰殿部痛に加え、下肢症状も併発することがあります。
中殿皮神経障害の要因
・筋緊張や何らかの動的因子による神経の牽引。
・後仙腸靭帯の炎症や肥厚。
・仙腸関節のずれや変形による神経の圧迫、牽引。
治療方針
・薬物療法や理学療法で改善しない場合は、中殿皮神経ブロックの適応となります。
ブロックの効果がなかったり、一時的な効果で再燃を繰り返す場合は神経剥離術を行うこ
ともあります。
・中殿皮神経の単独ブロックにて改善することもありますが、上殿皮神経との複数ブロック
にて改善することもあると報告されています。
・腰椎病変との合併もあるため、腰椎病変が認められた場合には腰椎病変なのか?それとも
絞扼性の末梢神経障害なのか?を鑑別するのに難渋することもあります。
終わりに
今回は中殿皮神経障害についてまとめました。なかなか中殿皮神経についての文献は少ないですが、報告によっては上殿皮神経障害と同様に臨床にて決して少なくない症状の1つです。神経ブロックにて確定診断が行えれば症状の鑑別が行いやすいと思いますが、なかなかそうでない場合も多いと思います。圧痛部位や症状の出現の仕方など、今回まとめた内容が少しでも臨床のお役に立てると幸いです。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
・脊椎脊髄ジャーナル2019.Vol.32.No2「中殿皮神経障害」
・脊椎外科.2018.Vol.32.No.2「下肢絞扼性末梢神経障害に対する外科的治療」
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