整形外科

知ってますか?ヘルニコア

理学療法士のだいきです。

皆さんは臨床で「ヘル二コア」という言葉を聞いたことがありますか?

腰椎椎間板ヘルニア治療の新たな選択肢として期待される治療です。

臨床で最近個人的に問い合わせもちょくちょく出てきています。

理学療法士として、どういうものか正しく説明する知識も必要だなと感じています。

 

今回はヘルニコアについて少し書いてみようと思います。

 

腰痛の治療に関わる臨床家の方は知っておいて損は無いと思います。

ではよろしくお願いします。

 

 

 

ヘル二コアの概要

「ヘルニコア」は実は正式名称ではなくて、正式にはコンドリアーゼと言う成分の薬で、椎間板ヘルニアの主成分であるグリコサミノグリカンを分解する酵素です。ヘルニコア椎間板注用1.25単位(一般名:コンドリアーゼ)は2018年3月23日に承認されました。

医学的には「化学的髄核融解術」と呼ばれる治療になります。

椎間板ヘルニアの主成分であるグリコサミノグリカンは、その高い保水性能によって大量の水分を含んでおり、椎間板のクッションとしての役割を高めています。

ヘルニコアはそれらを分解することでその保水力を減少させ、椎間板の縮小化を誘導し、症状の改善をもたらします。(下はイメージ図です)

 

 

 

ざっくりした説明になりますが、

酵素を直接椎間板に注射することで、ヘルニアを分解して神経の圧迫を取り除いてしまおう

という治療法です。

 

治療の流れとしては
来院、ヘル二コア投与

ヘル二コア投与後30分は医師監視下の観察(アナフィラキシーショックに備えて)

投与後2~3時間 退院
(当日の入浴は避ける、アナフィラキシーショックが認められた患者は入院推奨)

投与後1週間は腰に過度の負担がかかる動作の禁止

運動は約三週間後を目途に開始できる

術後三か月後に効果を確認のために来院

 

とこんな感じの流れですが

投与後2~3時間で自宅に帰れるというのが大きな特徴ではないでしょうか。外来への通院の感覚でヘルニコアの治療を受けることができます。

手術よりはかなり手軽に施行できると思います。

 

ヘルニコアの治療効果

ヘルニコアの地領効果に関しての文献があったので以下に記載しております。

臨床試験ではコンドリアーゼ(ヘルニコア)と効果のない薬を、
それぞれ椎間板の髄核内に1回投与した結果、投与後13週の症状改善率は
コンドリアーゼを投与したグループで72%、効果のない薬を投与した
グループで50%と有意な差が認められています。

 

報告ではコンドリアーゼ注射後、概ね2週間ほどで効果を実感できるようです。
(プラセボ群と優位に差が出始める)

 

開発元である生化学工業株式会社は、(一部のタイプのヘルニアで)ヘルニアを
摘出する手術と同程度の優れた下肢痛改善効果を示し、
運動機能の改善や生活の質を示したとしています。

 

他にも開発元がヘル二コアに関しての資料を載せています。参考文献を参照してみてください。

 

 

ヘル二コアの適応

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン

に載っているMcnab分類では腰椎椎間板ヘルニアは、その形態や位置によりいくつかに分類されています。

膨隆突出型、遊離脱出型…等々です。

 

ヘルニコアの適応は、

「保存療法で十分な改善が得られない後縦靱帯下脱出型の腰椎椎間板ヘルニア」

となっています。

 

ヘルニアが繊維輪から出ているが、後縦靭帯は超えないものとなります。

 

その他の種類のヘルニアには適応外とされています。

 

ここまでの話も含め、ヘルニコア治療のメリットを挙げると、

 

・ヘルニアのタイプを適切に選ぶことで、ヘルニアを摘出する手術と同程度の治療成績が

 期待できる可能性がある

・手術に比べ、治療の難易度が低い

・麻酔を使用したり切開する必要がないため、患者さんの負担が少なく済む

 

などになるでしょうか。

 

 

一見良いこと尽くめのように見えますが、メリットがあれば当然デメリットもあります。

 

 

ヘルニコアの効果は、標的とするヘルニアだけでなく、隣接する組織の一部にまで及ぶ可能性があります。可能性は低いですが周りの組織に与える影響が無いとは言い切れません。

 

 

 

カニクイザル(ヒトと椎間板の構造が類似している)の椎間板にコンドリアーゼ(ヘルニコア)を投与した実験において、「背骨の基本構造や全身機能に影響を及ぼすものではなく、時間の経過とともに一部の変化は回復を示し、沈静化することが確認された」として、一定程度の安全性を確認しているようです。

 

また、ヘルニコアが分解するグリコサミノグリカンは、その高い保水力によって椎間板のクッションとしての役割を高めています。

そのため、ヘルニコア投与後のグリコサミノグリカンが分解された椎間板は、通常よりクッションとしての性能が弱まった状態となっている可能性があり、背骨の変性などを進行させてしまう可能性が考えられます。

 

 

その他、成長期の患者さんへの投与は軟骨等の成長の阻害や背骨の不安定性を誘発する可能性があります。

 

これらの根拠となる実験では、本来の投与量の 12~494 倍相当量を投与していることから、ヒトに対する適切な投与量での影響は分かりません。

 

また、骨粗鬆症や関節リウマチなどの病気を持つ患者さんには、周辺組織に対してそれらの病気の影響が強まる可能性が否定できないとされています。

 

そして再投与できないというのがヘル二コアの治療です。

大袈裟ですが人生で一回しかこの治療は行うことができません。

 

おわりに

腰椎椎間板ヘルニアの治療は保存療法改善が得られない患者さんは更に保存療法を追加・継続しながら症状の軽減を待つ改善しない場合は手術を行う以外に治療選択肢がありませんでした。

 

腰椎椎間板ヘルニアの診療ガイドラインにも

「発症当初に著しい疼痛が認められていても、手術をせずに支障なく生活できるようになることも多いので、治療の基本は保存治療になる」

 

ということが書いてあります。

 

手術を選択した患者さんの中には時間と共に症状が改善することが予測されても「症状が強すぎて耐えられない」「仕事や家事の早期復帰が希望で保存療法なんてできない」などを理由に手術に踏み切ったという患者さんも多くいらっしゃいます。

 

今後は「切らずに済むならヘル二コアをお願いします」

なんてケースが増えてくるかもしれません。

患者さんが手術を回避する手段として、ちょうど良い選択肢が出来たという印象です。

 

我々理学療法士はヘル二コアのことを知り、保存療法の限界や手術適応についても知識を深めていく必要がありそうですね。

 

実際、僕もここ最近臨床で患者さんに質問されたことがありました。

 

「何も知りません」

 

と答えると患者さんの信用を失いかねません。

最新の医療技術や知識を常に持っていれるように心がけたいものです。

 

以上、長くなりましたがヘルニコアについて、その効果や副作用等について解説しました。

今回僕が投稿した内容は主観が入っており、説明したこともごく一部です。

 

詳細は参考文献を参照してさらに理解を深めていただけると幸いです。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

 

参考文献

ヘル二コア 科研製薬株式会社

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版 [ 日本整形外科学会 ]

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だいき
だいき
理学療法士・フットケアトレーナー/常に相手への笑顔と感謝を心がけてます。臨床では相手に満足していただく、納得していただく、そして治すという部分に尽力しております!自分もですが周りの方達を良い意味で巻き込んで臨床を楽しくやってるつもりです。生まれ育った町で勤務しています。地域とともに歩んでいく気持ち、地域に寄り添う気持ちで頑張り続けています。
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