こんにちは。
藤沢肩関節機能研究会の郷間(@FujikataGoma)です。
今回、7月1日にリリースした第2弾note『肩インピンジメントに起因する軟部組織に対する理学療法-肩関節前上方組織編-』で少しだけお話しさせていただいた肩関節周囲炎の炎症期と拘縮期について解説させていただきます。
ざっくり内容を見る
肩関節機能研究会リンク
ちなみに私たちが運営している肩関節機能研究会HPでは肩関節に関する記事を50記事以上投稿しています(^-^)
こちらに肩関節機能研究会HPのリンクもありますのでぜひご覧ください。
上前方関節包複合体とは
上前方関節包複合体とは
(1)棘上筋前部線維 ※棘上筋筋内腱より前方を指す
(2)腱板疎部
(3)関節包靭帯 ※上関節上腕靭帯(SGHL)を指す
1)木村裕明:肩痛・拘縮肩に対するFasciaリリース 肩関節周囲炎を中心に.出典:株式会社 文光堂,2018
これらの組織は肩関節運動においてとても重要で、炎症による瘢痕化や癒着性関節包炎、軟部組織の柔軟性低下が生じると凍結肩(frozen shoulder)となる可能性が非常に高くなります。
そもそも炎症期という言葉がありますが
皆さんはどのような流れで炎症➡拘縮になるかご存じでしょうか?
炎症から癒着までの流れ
まず、肩峰下滑液包炎や腱板炎が生じた場合、炎症してすぐに癒着が生じるものではありません。
炎症の程度により癒着・瘢痕化の時期や程度は異なるものの、その修復過程で肩峰下滑液包や腱板は癒着します。
この時、腱板は肩峰下に引き込まれた形で癒着・瘢痕化するとされています。
林 典雄:五十肩における疼痛の解釈と運動療法.関節外科(30):1226-1232,2011.
では、炎症した場合に何もしないべきなのか、それとも運動をするべきなのか。
新人の方は特に炎症期や拘縮期などタイミングが把握できず、炎症期にもかかわらず関節運動を積極的に行ってしまい中々炎症期を終えることができないという負の連鎖に陥りやすいです。
私も陥った経験が何度かあります(^-^;
では最も炎症期を把握するのに有用なツールとはなにか?
答えは肩関節周囲炎評価推奨グレードAの関節鏡検査、病理検査です。
しかしどこの施設でも、誰でも、いつでも検査ができるとは限りません。
侵襲のみならず、時間や金銭的な面も含めて第一選択というのはほどんど聞いたことがありません。
私の知る限り、よっぽどのことが無い限り肩関節周囲炎という診断のみで関節鏡検査や病理検査に送ることはないと思います。
また、MRI造影検査も推奨グレードAですが、同じく肩関節周囲炎の患者さん全員にMRI造影検査をするというのは非現実的ですよね。
ではほかにどのような方法で炎症期を把握すればいいのでしょうか?
はい。答えは超音波所見です。
超音波所見は推奨グレードBであり、簡易的に検査できるレントゲンの推奨グレードCに比べても被爆侵襲、科学的根拠においても有力な評価ツールであると言われています。
⇩肩関節周囲炎 理学療法診療ガイドライン⇩ ※検査はP239 ‐241
http://www.japanpt.or.jp/upload/jspt/obj/files/guideline/10_shoulder_periarthritis.pdf
炎症期と拘縮期の進行パターン
もし超音波検査もできない環境かつ、リハビリ室での理学療法評価のみで炎症期を把握する場合はどうすればいいのか?
最も簡便なのはVAS(ビジュアル・アナログ・スケール)やNRS(ヌーメリック・レイティング・スケール)などの安静時痛の有無です。
少し経験談になりますが炎症期の場合は、安静時痛が顕著に表れますので、炎症期の把握として私は重宝しています。
もしNRS1以下でしたら積極的な運動療法を行いますが、安静時から痛みが2以上の場合は1~2週間は肩甲胸郭関節運動や肘関節運動など間接的な介入を行うようしています。
なぜ炎症期に患部を動かさないか?
炎症期に患部運動を行うことで炎症をさらに増悪させてしまい、組織の瘢痕化や肥厚を助長してしまうからです。
一般的な肩関節疾患の場合は、炎症期を順調に終えれば拘縮期へと移行するため、炎症期にいかに炎症を増悪させないかというリハビリや生活指導が重要となっていきます。
イメージできない場合は擦り傷をイメージしてみてください(^-^)
擦り傷をつくる
⇩
かさぶたになる
⇩
治りかけで剥がしてしまう
⇩
治りが悪くなる&傷跡が残りやすい
いかがでしょうか?これなら少しイメージしやすいですよね♪
私は患者さんにこのように説明して炎症期のリスク管理&回避を行っています。
このように、炎症期の時点(拘縮する前)でリハビリが開始できればいいのですが、皆さん口を揃えて
「放っておけばすぐ良くなると思った」
「知人は自然と良くなった」とおっしゃいます。
拘縮肩になってから来院される患者様が非常に多いです(^-^;
みなさんも炎症期と拘縮期の線引きに注意して介入してみましょう!
最後に
肩関節周囲炎のみならず、
炎症による痛みや拘縮による痛み(ここではインピンジメント)、器質的な損傷など様々な病態が複雑に絡み合って痛みになることも少なくありません。
症状が中々良くならない、むしろ悪化してしまう原因が
もしかしたら私たちセラピストの誤った介入方法によるものかもしれません。
自分ひとりで悩まず、先輩セラピストや主治医に相談しながら最善の治療を提供できるよう心がけていきましょう(^-^)!
以上、藤沢肩関節機能研究会 郷間でした。
今後も皆様の肩関節ライフの一助となりますように。
参考書籍
- 木村裕明『肩痛・拘縮肩に対するFasciaリリース肩関節周囲炎を中心に』株式会社 文光堂,2018
- 林典雄『運動療法のための運動器超音波機能解剖拘縮治療との接点』株式会社 文光堂,2015
肩関節機能研究会リンク
ちなみに私たちが運営している肩関節機能研究会HPでは肩関節に関する記事を50記事以上投稿しています(^-^)
こちらに肩関節機能研究会HPのリンクもありますのでぜひご覧ください。
実践!ゼロから学べる肩肘の臨床マガジン
今回執筆した『ガイドラインに基づく肩関節周囲炎治療のススメ』のような内容をより詳しく丁寧に解説した記事を提供しています。
肩肘関節治療に従事している理学療法士5名が肩肘の治療に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術共有する『肩肘マガジン』は毎月5記事以上投稿しています。
興味のある方は是非ご一読ください(^-^)
肩関節関連記事
⇩藤沢肩関節機能研究会note第一弾⇩
研究会で普段使用している資料の全てを公開しています。
https://note.com/fujikatasociety/n/nc09076ef960b
⇩藤沢肩関節機能研究会note第二弾⇩
研究会で普段使用している資料の全てを公開しています。
https://note.com/fujikatasociety/n/n2544677b87fd
藤沢肩関節機能研究会
藤沢肩関節機能研究会では、肩関節を中心にエコーを用いた動態評価から徒手療法を学ぶ研修会を毎月藤沢で開催しています。
ご興味のある先生方はお気軽にご連絡ください(^-^)
肩関節を中心にエコーを用いた動態評価と治療技術を磨く研修会
藤沢肩関節機能研究会LINE@officialaccount
➡藤沢肩関節機能研究会勉強会情報
学生から臨床経験5年前後にフォーカスをあてたハンズオン中心の肩関節セミナー
藤沢肩関節機能研究会フレッシュマンセミナーのLINE@officialaccount
➡藤肩藤肩研究会フレッシュマンセミナー情報
プロフィール
【ライター】
郷間光正(ごうまこうせい)
【主な仕事】
・整形外科クリニックでのリハビリテーション
・パーソナルトレーニング、パーソナルケア(週2~3件)
・藤沢肩関節機能研究会の講師(月1~2回)
【資格】
・理学療法士
・運動器認定理学療法士(スポーツ領域)
・STAR スポーツリズムトレーニングディフューザー
・STAR リズムステップディフューザー
【専門分野・得意分野】
・肩関節(一般整形外科、スポーツ整形外科)
・肘関節(一般整形外科、スポーツ整形外科)
・エコーによる動態評価
・レントゲン、CT、MRI 読影術
【各種リンク】
藤沢肩関節機能研究会ホームページ➡ホームページ
Twitter➡藤沢肩関節機能研究会 郷間(@FujikataGoma)
Note➡藤沢肩関節機能研究会 郷間
マガジン➡肩肘マガジン
充実の“note”で飛躍的に臨床技術をアップ
CLINICIANSの公式noteでは、ブログの何倍もさらに有用な情報を提供しています。“今すぐ臨床で活用できる知識と技術”はこちらでご覧ください!
実践!ゼロから学べる腰痛治療マガジン
腰痛治療が苦手なセラピストは非常に多く、以前のTwitterアンケート(回答数約350名)では8割以上の方が困っている、35%はその場しのぎの治療を行っているということでしたが、本コンテンツはそんな問題を解決すべく、CLINICIANSの中でも腰痛治療が得意なセラピスト(理学療法士)4名が腰痛に特化した機能解剖・評価・治療・EBMなどを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する整形疾患は勿論、女性特有の腰痛からアスリートまで、様々な腰痛治療に対応できる内容!臨床を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、腰痛治療が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる足マガジン
本コンテンツでは、ベテランの足の専門セラピスト(理学療法士)6名が足に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する足の疾患は勿論、小児からアスリートまで幅広い足の臨床、エコー知見などから足を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、足が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる肩肘マガジン
本noteマガジンはCLINICIANSメンバーもみんな認めるベテランの肩肘治療のスペシャリスト(理学療法士)5名が肩肘の治療特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術として提供してくれます。普段エコーなどを使って見えないところを見ながら治療を展開している凄腕セラピストが噛み砕いてゼロから深いところまで教えてくれるので肩肘の治療が苦手なセラピストも必見のマガジンです!
YouTube動画で“楽しく学ぶ”
実技、講義形式、音声形式などのセラピストの日々の臨床にダイレクトに役立つコンテンツが無料で学べるCLINICIANS公式Youtubeチャンネルです。EBMが重要視される中、それに遅れを取らず臨床家が飛躍的に加速していくためにはEBMの実践が不可欠。そんな問題を少しでも解決するためにこのチャンネルが作られました。将来的に大学や講習会のような講義が受けられるようになります。チャンネル登録でぜひご活用ください♪登録しておくと新規動画をアップした時の見逃しがなくなりますよ!
※登録しておくと新規動画をアップした時に通知が表示されます。
なお、一般の方向けのチャンネルも作りました!こちらでは専門家も勉強になる体のケアやパフォーマンスアップに関する動画を無料で公開していますので合わせてチャンネル登録を!