脳・神経

日本脳卒中外科研究会のCT分類(被殻出血・視床出血) 

こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

今回は日本脳卒中の外科研究会のCT分類(被殻・視床出血)について詳しく解説します。

 

脳出血による脳損傷(部位、出血量、脳室穿破、mass effectやmid line sift)の程度は、治療方法や予後を決定する有用な情報になります。

被殻・視出血では、血腫の進展部位や脳室穿破有無を用いて脳損傷の程度を示すものとして「日本脳卒中の外科研究会のCT分類」があるので、以下に分類方法をご紹介します。

 

日本脳卒中の外科研究会のCT分類

血腫の進展方向により分類が行われ、数値が高いほど重症となります。

被殻出血ではⅠ~Ⅴ視床出血ではⅠ~Ⅲに分類されており、いずれも脳室穿破の有無で「無=a」「有=b」とさらに細かく分類されます。

被殻出血Ⅰ~Ⅴの定義は以下の通りです。

<被殼出血の分類定義>

内包外側に限局したものをⅠ

内包前脚に進展したものをⅡ

内包後脚に進展したものをⅢ

内包前脚と後脚の両方に進展がⅣ

視床または視床下部まで進展したものがⅤ

 

 

視床出血Ⅰ~Ⅲの定義は以下の通りです。

<視床出血の分類定義>

視床に限局しているものをⅠ

内包に進展したものをⅡ

視床下部または中脳に進展したものがⅢ

 

まとめるとこのようは表になります。

脳画像を提示できない場合などでも、このような分類を用いて損傷程度を表現することで他者に正確な情報を伝達できます

 

CT分類と予後

この分類は、損傷の程度を表現できるだけではなく、CT分類と治療方法(保存的or外科的)によって大まかなADL予後の割合もわかります。

以下の図の赤線では、ADL自立と介助の境界ラインを示しました。

 

被殼出血のⅠ(内包外側に限局した病変)では、家庭内自立となる確立が保存的加療で80%、外科的加療で50%になるということがわかり、保存療法で予後が良いことがわかります(※ここでは出血量は考慮していない点に注意!)。

保存療法の場合でもⅢa以上の皮質脊髄路が通る内包後脚部を含む損傷になると顕著に予後不良となっています。

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ただし、視床出血の外科的治療に関しては症例数が少なく有用な情報かどうかは微妙なところです(※視床出血は、視床が脳深部に位置しており、外科的手術が困難であることから症例数が少ないものと思われます)。

予後を予測する際には、上記のように画像所見に関する変数を投入した方がより予測精度が高くなるといわれています。

 

 

本日は以上で終わります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

 

CT分類を普段から使う事で「視床出血」「被殼出血」だけ言うよりも他者により詳しい情報を伝達することができます。また、この分類データを取って解析対象に含めれば研究の一助にもなり得るかもしれません。

簡単なのでぜひ使ってみてくださいね!

 

なお、出血量の計算や予後予測に関しては以下で詳細にご説明していますのでこちらをご参照ください。

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https://connect-clinicians.com/brain-nerve/acute-assessment-abms2/

 

参考資料

1)金谷春之,湯川英機,他:高血圧性脳出血における新しいneurological gradingおよびCTによる血腫分類とその予後について.高血圧性脳出血の外科Ⅲ,第7回脳卒中の外科研究会,265-270,にゅーろん社,東京,1978
2)後藤文男,福内靖男:脳血管障害の治療と予後に関する多施設共同研究第2報  視床出血.脳卒中.1992; 14:72-78.

 

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本日は以上で終わりです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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