脳・神経

脳出血の画像診断:CTで簡単に出血量を算出する方法

こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

今回はCTで簡単に出血量を算出する方法について詳しく解説します。

出血量の推定値を算出する有名な方法で、誰でも簡単にできますのでぜひ読んでみてください。

 

脳出血の出血量を計算するメリット

脳出血における出血量は、医師の立場から見れば手術加療の参考になることは勿論、私たち理学療法士の立場としては、脳出血の重症度の表現や予後予測、離床の可否を判断する際に役立ちます

出血量が少なければ脳損傷の程度は軽いですが、出血量が多ければそれだけ脳損傷の程度が重度となるため、出血量はよく重症度の程度を表現したり、予後予測に用いたりされているんですね。

予後予測に関する論文はかなりたくさんのものが散見していますがので当ブログでもまたの機会にご紹介したいと思います。

 

なお、前述した「出血量は離床の可否を判断する際に使用できる」という点に関しては、意味がわかりにくいので具体例を挙げさせていただきます。

 

脳出血症例では、発症後~24時間程度は血腫の増大リスクが非常に高い時期になるため、リスク管理として発症した翌日に再び頭部CTにて出血の増大有無を確認するのが一般的です。

つまり、患者さんが入院してリハビリの処方が出た後にさぁ離床をスタートするぞ!といった判断を行う場合にも、血腫量を計算し血腫の増大がないかどうか(状態が安定しているか)を判断するのに役に立ちます

プログラムの例)

血腫が増大していれば積極的な離床は行わず、呼吸理学療法やROMex、受動的な座位程度までの内容に留め、血腫が増大していなければ、活動性の出血はなく安定しているものととらえてVitalに応じて積極的に座位や立位などの離床を進めていきます。

 

血腫の増大有無は、経験のある優れた読影者であればわざわざ算出して求める必要もないかもしれませんが、血腫は一枚の画像の一方向(たとえば前後方向)への伸展だけではなく、あらゆる方向への伸展(たとえば前後、左右、上下)をチェックしないといけません。

なので、経験がない方は使用した方が変化の参考にチェックした方がより確実性のある評価ができると思いますし、新人セラピストなどの経験がない方への指導を行う際にも役立つかと思います。

それでは、前ふりが長くなりましたが、以下に出血量の算出方法を例を挙げながら紹介します。

 

血腫量の計算方法

血腫量の計算方法はこのように行います。

「血腫量(ml)=縦径(cm)×横径(cm)×高さ(cm)÷2」

縦径と横径は血腫が一番広いスライスを選んで測定します。

 

具体的に、以下のスライスで見てみましょう。

 

血腫成分は、1~7のスライスに認められます。

そして、先ほど述べた“血腫が一番広いスライスは4のスライス”になります。

よって、これを使って縦径と横径を求めてみましょう。

 

1は縦径 約4.5cm

2は横径 約2.2cm

 

数式に当てはめると・・

血腫量(ml)=縦径4.5(cm)×横径2.2(cm)×高さ?(cm)÷2

っとなるので、あとは高さを求めましょう。

 

 

高さは 血腫を認めるスライス枚数×スライス厚 で求められますので、

高さ=7(スライス)×0.5(cm)=3.5cm

となります。

スライス厚は頭部CTを撮影される施設や医師の指示で異なると思いますので、確認をしてください。

僕の務めていた病院では今は全体を5mm間隔で撮影しているようですが、以前はテント上8mm、テント下4mmで撮影されていました。撮影方法が異なると計算する数値の結果が異なるので事前に確認しておきましょう。

 

 

さぁ、それでは、必要なすべての数値がそろったところで血腫量を算出してみましょう。

血腫量(ml)=縦径4.5(cm)×横径2.2(cm)×高さ3.5(cm)÷2=約17ml

※脳室穿破した血腫量は、この方法では求めることができません(求める必要性は感じたことがありませんが…)。

 

どうでしょうか?

これで血腫量をご自分でも求められますよね!

今回は、非常に丁寧に説明を行ったために時間がかかるようですが、臨床上は脳画像を開いてパッパと1分かからない時間で計算できますので、またご自身で症例を通してやってみてください。

 

血腫量を日本脳卒中の外科研究会のCT分類と合わせて重症度を表現する

ちなみに、上記で覚えた出血量の計算方法と、以前の記事で解説した日本脳卒中の外科研究会のCT分類と合わせて使用し、今回の使用した画像例をどのように臨床上表現するのかやってみましょう。

病名:脳出血
損傷半球:右
病巣:被殻
日本脳卒中の外科研究会のCT分類:Ⅰa
出血量:17ml

このように表現できます。

今回は先に脳画像を見ていますが、この情報を脳画像を見ずに聞いたらどうでしょうか・・

 

「右の被殻部分が損傷していて内包前脚や後脚部、視床の損傷はない外側方向への出血を呈しており、脳室穿破も伴っていない、そして大きさも小~中くらい程度」

 

とったように、画像を見ていなくても、どんな感じの出血の仕方をしているか想像がつきませんか?

このように、日本脳卒中の外科研究会のCT分類や血腫量を使って状態を表現すると、他者に症例の状態がより的確に伝えることができます。

さらに、日本脳卒中の外科研究会のCT分類の予後のあたりのデータや、出血量の予後のデータなどの知識も前もって知っていると、この症例がどんな帰結になるかがなんとなく見えてくるようになります。

脳卒中リハを行う者として、強い武器になる知識ですので、気になる方はまた見てみてください。

 

なお、当ブログではその他にも予後予測に関する記事を書いていますので興味がある方はこちらもご覧ください。

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https://connect-clinicians.com/brain-nerve/acute-assessment-abms2/

 

参考資料

1) Kwak K, Kadoya S, et.al : Factors affecting the prognosis in thalamic hemorrhage.Stroke 14 : 493-500, 1983.
2) 金谷春之,遠藤英雄:高血圧性脳出血の外科的療法と治療成績.脳神経 36: 847-857, 1984.

 

 

脳画像を見るためのおすすめ書籍

病気がみえる 〈vol.7〉 脳・神経

初心者~中級者向け。脳神経の解剖、疾患の病態・生理や医学的管理や内服治療など、広く浅く掲載されています。しかし、浅いといっても内容は十分。脳神経疾患に携わる看護師や療法士は必ず持っている、もしくは見た事があるというぐらい有名で万能な著書

 

脳卒中ビジュアルテキスト

初心者向け。フルカラーで図が多く、内容も読み易い。広く浅くといった感じではあるが、必要最低限のことが掲載されていると思います。個人的には、最初に掲載されているスライス毎の構造物と脳血管の支配領域の図があったことが素敵だと思います。

 

 

初心者~中級者向け。名前の通り高次脳機能障害のことに関して書かれています。高次脳機能障害というと分かりにくい本が多い印象かと思いますが、これはスラスラ読めますね。脳画像のスライスに関する項があり、責任病巣に関してもちゃんと書いてあります。また、高次脳機能障害の評価法や対応も書かれているので参考になりますよ。

 

脳の機能解剖と画像診断

上級者向け。本当に画像オンリーのことが書いてあるといっても良いのではないでしょうか。実際のCT、MRIと対応させて脳の構造物が細かく掲載されています。水平面だけではなく、前額面、矢状面の画像もちゃん細かく掲載されています。血管の支配領域も脳幹部まで細かく掲載されていたりと、とにかく細かいところまで手が届く感じで僕は結構好きです。これが逆に分かりにくい人もいると思いますが・・

 

CT・MRI画像解剖ポケットアトラス(1)第4版 頭部・頚部

初心者~上級者向け。脳画像のみかたの本というよりは、脳画像のカンペですね。臨床で脳画像をみていて、これってなんだったけ?と思うときにかなり重宝します。今回紹介する本は、全てA4サイズ以上ですが、これはポケットに入っていつでも見られる本です。

 

脳画像からみた脳梗塞と神経心理学

中級者~上級者向け。脳梗塞に限定されて掲載されており、内容は全体的にみて濃い。上記で紹介した高次脳機能障害学と似ているところはあるが、こちらの方が医者目線が強くマニアックな印象。頻回に症例の実際の画像がでてくるので症例報告などが好きな人はこちらの方が読み易いかもしれません。

 

 

 

 

 

 

本日は以上で終わりです。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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