こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians )です!
今回はギランバレーの亜型のビッカースタッフ型脳幹脳炎について解説します。
ギランバレー症候群については過去記事をご参照ください。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎とは
ビッカースタッフ型脳幹脳炎(Bickerstaff brainstem encephalitis:BBS)は眼球運動障害や運動失調、意識障害を3主徴とし、脳幹を病変とする自己免疫疾患となっています。
そのほかの症状として、口咽頭筋麻痺、腱反射の低下・消失、四肢末梢での感覚障害を呈していることがあります。
意識障害を欠いても錐体路徴候や半側性感覚障害などの中枢神経徴候があればビッカースタッフ型脳幹脳炎と許容されることが多いです。
疫学
ビッカースタッフ型脳幹脳炎は本邦において年間約100例と推定されています。
人口127万人あたり1人とされており、ごく稀な症例だと思います。
男女比は約1.3:1と男性に多く、30歳代にピークはありますが、乳児を除くあらゆる年齢層で発症します。
症状と検査所見
ビッカースタッフ型脳幹脳炎の症状は前述している通り、外眼筋麻痺、運動失調、意識障害、中枢神経障害です。
これらの神経所見は急速に進行し、4週以内にピークに達します。
これらの徴候を除いた特徴は、1~2週間前にみられる上気道炎などの先行感染症状、口咽頭筋麻痺、腱反射の低下・消失、四肢末梢の感覚障害などです。
また、約6割が発症後1週間以内に症状がピークとなり、約2割が人工呼吸器管理となります。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎の診断に重要な検査は血中IgG抗GQ1b抗体の測定です。
しかし、この抗体はギランバレー症候群やFisher症候群でも検出されます。
そのため、抗体が陽性となった場合でも神経症状や検査所見に基づいて診断をする必要があります。
一方で、この抗体のビッカースタッフ型脳幹脳炎の陽性率は約7割程度であり、抗体が陰性となってもビッカースタッフ型脳幹脳炎を否定する根拠とはいえません。
以下にビッカースタッフ型脳幹脳炎の診断基準を示します。
治療と予後
ビッカースタッフ型脳幹脳炎に対して確立した有効な治療は発見されていません。
しかし、ギランバレー症候群と似ている所見や、自己免疫疾患という点を踏まえて、免疫グロブリン静注療法や単純血漿交換療法を中心に行うことが妥当と考えられています。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎は一般的に予後良好とされています。
完全に回復するまでの期間は発症後1年以内といわれています。
しかし、症例数が少なく、必ずしも予後が良好とはいえないと思います。
事実、急性期に突然死となる症例や完全回復していても四肢の筋力低下が残存する症例も報告されているようです。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎とFisher症候群の違い
ギランバレー症候群の亜型としてビッカースタッフ型脳幹脳炎がありますが、一番似ている疾患はFisher症候群となっています。
二つの似ている点や違いをここから掲載していきます。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎やFisher症候群の病態機序として、GQ1bガングリオシドが動眼をつかさどる脳神経〈動眼・滑車・外転神経〉や筋紡錘、後根神経節大型細胞などに高発現することで、IgG抗GQ1b抗体が結合し、眼筋麻痺や運動失調をきたす機序が考えられています。
ビッカースタッフ型脳幹脳炎とFisher症候群の違いは、抗GQ1b抗体の微細反応性の違いが挙げられています。
もう一つは、血液脳関門に対する液性因子の影響の違いが挙げられています。
しかし、これらはあくまで想定されている内容であり、確立された内容ではありません。
そのため、ビッカースタッフ型脳幹脳炎だけで明らかな中枢神経障害をきたすのかはわかっていません。
まとめ
ギランバレー症候群の亜型、ビッカースタッフ型脳幹脳炎はいかがでしたでしょうか?
臨床症状は違いますが、同じ自己免疫疾患ということで、治療法は同じみたいです。
聞きなれない疾患ですが、ギランバレー症候群やFisher症候群と同様に現在の医学的治療と病態把握すれば、理学療法も行えると思います。
これらについては以下の記事で解説していますのでこちらをご覧ください。
本日は以上で終わります。
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考資料
本田真也、古賀道明、他:ビッカースタッフ脳幹脳炎の疫学と診断基準、新薬と臨床J.New Rem.&Clin,Vol.65 No.2 2016;80-82.
2)古賀道明:Bickerstaff型脳幹脳炎、日本臨床、73巻、増刊号7、2015;638-642
3) 桑原智:フィッシャー症候群とビッカースタッフ脳幹脳炎:BRAIN and NERVE 67(11)、2015;1371-1376
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