こんにちはリョウ(@HealthCare_ryo)です。
5月になり4月に入職した方も続々と日々の臨床に向き合っていることと思います。
対象者の個別性に沿った介入を検討し
日々、評価と治療を繰り返す。
臨床の醍醐味ですね。
そんな臨床について、
「みなさん、離床していますか?」
おそらくみなさん
「しているよ!」
と答えると思います。
「ではどうして離床するんですか?」
「離床しないとどうしてダメなんですか?」
「離床すると何がいいんですか?」
急性期にしろ回復期にしろ維持期にしろ
離床は我々の介入手段の一つとしてとても基礎的で重要です。
そんな『離床』について今回はまとめました。
身近で当たり前だからこそ確認程度に読んでみてください。
なぜ離床するのか?
病院で働いている人は1日1回は必ず耳にするであろう『離床』というワード
もはやパワーワードと化している『離床』という単語
ですが、
「なぜ離床するの?」
と聞かれてすぐに答えることが出来るでしょうか。
急性期であれば一度はこのような場面を経験した人は多いはず。
患者:「もうリハビリするんですか?」
家族:「昨日手術したばかりですよ?」
患者:「起きても大丈夫なんですか?」
家族:「手術した箇所が開かないんですか?」
このような場面においては
いかに分かりやすく臥床のリスクや離床の必要性について説明出来るかが求められます。
そのためには上記で挙げた、
・臥床のリスクやデメリット
・離床の効果
について押さえておきましょう。
臥床のリスクやデメリットとは?
安静臥床、つまりは寝たきりや不活動が身体に悪影響であることは周知の事実です。
しかし
「なぜ悪影響なのか?」
「なぜ身体機能が低下するのか?」
については基礎的過ぎて意外と盲点だったりします。
まずは安静臥床が身体に及ぼす悪影響をそれぞれの器官別に分けて考えてみましょう。
・骨格筋への影響
・骨への影響
・呼吸器への影響
・循環器への影響
・消化器への影響
骨格筋への影響
安静臥床により筋力は低下します。
特に抗重力筋となる脊柱起立筋や殿筋、下腿三頭筋などが影響を受けやすいです。
筋肉はタンパク質からなる筋原線維で構成されています。
(アクチン・ミオシンフィラメント)
筋力が発揮されるにはタンパク質の合成が必要ですが
安静臥床では筋蛋白合成率が低下します。
筋蛋白合成率が低下し分解が優位となることで
筋肉量が減少し筋力低下が生じます。
有名な1970年のMullerのギプス固定の研究では
1日の安静で1~4%程度の筋力低下が生じ
3~5週間で50%程度生じるとされています。
【廃用性筋萎縮】
廃用性筋萎縮の予防には一般的な運動では不十分な可能性あり。
それはなぜか?
☑︎1万歩の歩行と同等のベッド上運動
☑︎1万歩の歩行と同等のエクササイズを見ると一目瞭然
日常生活と比較し圧倒的に不足しています‼︎
予防にはいかに運動頻度そのものを拡大するかが重要💪 pic.twitter.com/vGAiXNmjra
— リョウ|ヘルスケア情報発信 (@HealthCare_ryo) January 19, 2020
骨への影響
安静臥床により骨密度が減少します。
これは安静臥床によって骨のリモデリング機構が破綻するためです。
骨のリモデリング機構はここでは詳細を省きますが
簡単に言うと下記のサイクルです。
荷重する(骨への外的刺激)
↓
骨の微細損傷(骨破壊)
↓
骨の再生(骨芽細胞)
↓
骨強度UP
このサイクルが機能しなくなるため骨密度が減少し骨が脆くなります。
このサイクルの破綻はなにも安静臥床のみではありません。
一側下肢の骨折による荷重制限でも生じます。
例えば
受傷前に1万歩/日の活動量の人が右足を骨折し
患側は4週間の免荷となったとします。
単純に考えて1万歩/日というのは片足ずつだと5000歩/日と5000歩/日です。
免荷となれば患肢は5000歩/日の荷重機会が奪われます。
これが4週間(28日間)続くと
5000歩/日×28日間=14万歩
なんと4週間で14万回の荷重機会が失われたことになります。
完全な安静臥床であれば一側下肢だけではないので
4週間で28万回の荷重機会の損失となりますね。
こう考えると骨への影響が大きいことがよく分かります。
これは当然ですが骨への影響だけではありません。
上記の例え話は単純な話ですが
対象者や家族に説明する際には結構有効です。
呼吸器への影響
安静臥床により機能的残気量が減少します。
機能的残気量は『安静呼吸の後に肺の中に残っている肺気量』のことです。
機能的残気量は肺のガス交換に関与します。
機能的残気量が多ければガス交換の量が多いため酸素化に有利です。
しかし、機能的残気量は臥床により15~20%減少します。
(ものによっては半減するとも言われています)
これは臥床により腹部臓器が頭側へ移動し
横隔膜を4㎝程度押し上げ横隔膜の運動を妨げてしまうためです。
機能的残気量の減少は
・酸素化低下
・肺内シャント増加
・換気血流比不均衡
などをもたらします。
また臥位では腹部臓器が横隔膜を押し上げるだけではなく
下側の肺は肺胞が圧迫され、うっ血し、痰などの分泌物が貯留しやすく
下側肺障害や肺炎を生じる原因となります。
さらに安静臥床が続くと呼吸数増加や一回換気量減少を来たします。
循環器への影響
安静臥床により血圧調節システムが破綻します。
【臥位から立位の血圧調節システム】
血液が下肢に移動
↓
静脈還流量低下
↓
心拍出量低下
↓
血圧低下
↓
循環調節中枢に作用
↓
交感神経活動亢進
↓
心拍数上昇
↓
末梢動脈抵抗上昇
↓
心拍出量維持
↓
血圧維持⚠️長期臥床などでシステムが崩壊すると起立性低血圧が生じるので離床時には注意⚠️
— リョウ|ヘルスケア情報発信 (@HealthCare_ryo) January 27, 2020
【臥位から立位の血圧調節システム】
血液が下肢に移動
↓
静脈還流量低下
↓
心拍出量低下
↓
血圧低下
↓
循環調節中枢に作用
↓
交感神経活動亢進
↓
心拍数上昇
↓
末梢動脈抵抗上昇
↓
心拍出量維持
↓
血圧維持
上記ツイートは臥位から立位への血圧調節システムですのでこの逆を考えてみます。
【立位から臥位の血圧調節システム】
臥床状態では下半身の血液が上半身に移動
↓
心拍出量増加
↓
頚動脈洞や大動脈弓の圧受容器に作用
↓
末梢血管抵抗低下
↓
体液量を過剰と判断
↓
交感神経を抑制し抗利尿ホルモン分泌低下・利尿ホルモン分泌増加
↓
利尿促進
↓
体液量減少・循環血液量減少(脱水状態)
つまり、安静臥床により脱水状態を引き起こしやすくなります。
この状態で補液を行わず軽度の脱水状態で離床をすると
血圧調節システムが破綻している上に脱水状態であるため
起立性低血圧を起こし失神してしまうリスクがあります。
また、循環血液量が減少し脱水状態による血液の粘稠性増加を考えると
静脈血栓症のリスクも高まります。
このように臥床による身体の影響を踏まえておくだけでなく
リスクも把握しておかなければなりません。
消化器への影響
安静臥床により腸管の蠕動運動が抑制されます。
臥位では重力の影響が減少するため
食塊の腸管内の通過時間を長くし
空腹感や食欲の減退、便秘の原因となります。
また、重力の影響だけでなく循環血液量減少による交感神経活動の亢進によっても腸管の蠕動運動は抑制されます。
さらに、安静臥床による精神的ストレスの増加は
副交感神経の活動を低下させ腸管の蠕動運動を抑制させます。
まとめ
今回は離床について『臥床のリスクとデメリット』についてまとめました。
急性期にしろ回復期にしろ維持期にしろ
離床は我々の介入手段の一つとしてとても基礎的で重要です。
そして離床を進めるにはまず
『なぜ臥床が良くないのか?』
を理解しておく必要があります。
もちろん、時と場合、治療方針によっては安静臥床が必要な場合もあります。
離床の効果を最大限に生かすためにもまずは臥床のリスクとデメリットについてぜひとも押さえておきたいですね。
次回は『離床の効果』についてお話しますのでご期待ください。
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