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訪問リハビリは効果があるのか⁈〜論文ベースのガイドラインや国の調査から読み解く〜

こんにちは、cascade (@cascade1510 です!

私は普段、理学療法士として訪問リハビリテーションの業務に従事しながら、研究などを行っています。

そして普段このブログでは主に地域リハビリテーションについて記事を書いたりしています。

今回は、そもそも訪問リハビリって効果があるのか⁈といったことについてエビデンスや論文ベースで迫っていきたいと思います。

そしてさらに重要なこととして、実際に臨床に携わる私たちにとって、ここで出てきたエビデンスとはどのようなものか、そしてどのように利用していくかの考え方を述べていきたいと思います。

それでは順に解説していきます!

 

地域理学療法ガイドライン

皆さんは、診療ガイドラインというものをご存知でしょうか⁈

主に医療現場において病気の予防・診断・治療など診療の根拠についての最新の情報を専門家の手で分かりやすくまとめた指針です。

理学療法の中でもガイドラインというものがあり、その中で「地域理学療法」の枠組みの中に、訪問理学療法について記載があります。

日本理学療法士学会 理学療法ガイドライン第1版

 

2011年のものですが、それまでの論文をくまなく調べ、さらに信頼性が高いと思われるエビデンスレベルの高い研究結果を集めて、総合的に判断されています。

ここでは割と海外の論文が引用されており、その現地で行われている訪問理学療法のやり方が日本での訪問理学療法と同じようにされているか、個人的には少し疑問を感じますが、まあだいたい同じようなものだと仮定した結果だと思ってください。

詳しくはこちらに記載されている通りですが、ここでは自分なりにご紹介します。

1)慢性期障害者に対する長期(6 か月以上)の訪問リハビリの有効性

➡︎推奨グレード B エビデンスレベル 2

 

「推奨グレード」と「エビデンスレベル」の基準については以下の通りです。

引用元:推奨グレードの決定およびエビデンスレベルの分類

 

つまり、慢性期障害者に対する長期(6 か月以上)の訪問リハビリの有効性としては、

推奨グレード B なので、行うように勧められる科学的根拠があり、エビデンスレベル 2なので、1つ以上のランダム化比較試験により判断されているということになります。

その他にも訪問理学療法に関するガイドラインが出てるので紹介します。

 

2)運動機能の維持・向上に対する訪問リハビリ(ホームエクササイズを含む)の効果

➡︎推奨グレード B エビデンスレベル 2

3)生活機能の維持・向上に対する訪問リハビリ(ホームエクササイズを含む)の効果

➡︎推奨グレード C1 エビデンスレベル 1

4)生活機能の維持・向上に対する運動プログラム提供の効果

➡︎推奨グレード A エビデンスレベル 2

5)QOL の維持・向上に対する訪問リハビリ(ホームエクササイズを含む)の効果

➡︎推奨グレード B エビデンスレベル 2

6)転倒予防に対する訪問リハビリ(ホームエクササイズを含む)の効果

➡︎推奨グレード A エビデンスレベル 2

7)介護負担感軽減に対するリハビリの効果(訪問リハビリと通所リハビリの効果)

➡︎推奨グレード B エビデンスレベル 2

どのような論文を引用したのかの詳細は以下のリンク先をご覧ください。

 

このように、ガイドラインでは地域理学療法に関するいくつかの推奨グレードやエビデンスレベルについて評価され記載されています。

さて皆さんなら、この結果をどう受け止めるでしょう⁇

「へぇ〜意外に効果出てるんだな」

と思う方もいるかもしれませんし、

「ホントかなー⁇」

と疑いの目を持つ方もいるかもしれません。

 

でもこの疑いの目を持つことも科学を理解する点では重要だと思います。

ただ単に上部の推奨グレードを見て判断するのではなく、その結論がどこから得られたのか⁇と言う根拠を自分なりに探すこともときには重要です。

 

そう思って引用論文を見てみると、上にもあげたように海外の論文の結果が中心にまとめられていることにも気づきます。

このように、ある種のバイアスがかかった状態であることも理解した上で判断していく必要があります

バイアスという視点から見ると、

「出版バイアス」

というものも実際に存在します。

 

出版バイアスは以下の通りです。

出版バイアス(publication bias)とは、否定的な結果が出た研究は、肯定的な結果が出た研究に比べて公表されにくいというバイアス(偏り)である。 公表バイアスとも言う。 単純には、否定的な結果に関する情報が公にならない。

引用元:Wikipedia

 

その他にも研究にはいろんなバイアスがつきものです。

前回のまっつぁんさんの投稿でもありましたが、このようなバイアスがあることを理解した上で判断していきましょう!

 

厚生労働省の調査

わが国においても、調査がされています。

ここでは厚生労働省による大規模な生活期リハビリテーションの効果に関する調査を紹介します。

 

…すごいボリュームですが、ここでは通所も含めた生活期の事業所が対象です。

評価は調査者の用意した評価項目を行なっています。

 

結果を簡単にまとめると、

「訪問リハに関しては4ヶ月でFIMなどに大きな変化はみられなかった」

としています。

が、これをどう見るかを考える必要があります。

 

おそらく、運動器疾患だけでなく神経難病や退行性疾患などいろんな対象者を全てひっくるめた結果だけを載せているのでなんとも言えません

このように、ただ単に出されたデータを鵜呑みにするのではなく、そのデータが実際問題どのような背景でどのようにして得られたかを考えることで、そこで出された結果を客観的に解釈していく必要があります。

 

臨床家としてどう考えるか

さてここまでは客観的なデータを見てきましたが、我々現場で実際に訪問リハビリの業務を行っている者としてどう考えるか、という臨床家としての役割を考えていきます。

やはり実際に現場で働いている者の肌感覚としては、介入したことによって効果があったと思える人がおおかたではないかなと思っています。

それと同時に、一人ひとりの対象者に向き合いながらそれぞれに対するアプローチを個別的に行っていくことの難しさも感じていることと思います。

ひとえにみんなに同じように筋力運動や、関節可動域運動を行えば良いというものではありません。

それぞれ対象者の身体状況や生活状況、周囲の環境等を考慮に入れながら一緒に目標立てて、その目標に対するアプローチを一緒に計画して、実際にリハビリを進めていく。

仮に、途中の状態変化などによって修正が必要であればその都度内容を変えていきながらその人その人に合わせたリハビリテーションを行います。

そこには必ず個別性が存在し、その一つ一つの個別性が集まってできたものが上に挙げたエビデンスなのだと私は思っています。

我々臨床家としては、やはりそれぞれの個別に合わせたアプローチをしていくことが最終的に最も効果を上げられる方法なのではないでしょうか?

 

みなさんはどうお考えですか??

 

今回は以上終わります!

最後までお読みいただきありがとうございました。

ABOUT ME
cascade
cascade
2020年4月より大学教員/Physical Therapist /Ph.D in rehabilitation/ 大阪大学理学部高分子科学→修士(M.S.)→Teijin Limited研究職→大学リハ学科→博士/介護予防/訪問リハ/研究や国試の勉強などを発信 理学療法士として何ができるか、理学療法士の枠にこだわらずに何ができるか、ワクワクするような新たな可能性を追い求めていきましょう!
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