こんにちは、理学療法士のたくみ(@TakumiRodrigues)です!
前回は、人工膝関節全置換術(以下、TKA)の基礎として耐用年数や、適応、CR型・PS型・CS型インプラントの違いについて説明しました。
そして今回は、この基礎知識を踏まえ、インプラントの種類から考える人工膝関節全置換術後のリハビリテーションについて解説していきたいと思います!
明日からの臨床に活かすことのできる情報をお伝えできれば幸いです。
CR型インプラントのリハビリテーション
CR型インプラントの特徴は前十字靭帯(ACL)を切除するものの、後十字靭帯(PCL)を温存しているということです!
そのためroll back機構(大腿骨が後方へ転がりながら屈曲が起こる)が残存しており、更には回旋動作が術前と同様に起こります。
リハビリのポイントとしては、
roll back機構を意識して可動域練習を行うこと
が大切です!
また回旋動作も術前と同様に起こるということは、
medial pivot motion(屈曲時の下腿の内旋)
screw home movement(伸展時の下腿の外旋)
も起こる
ということです!
そのため、下腿の徒手誘導も大切になってきます!
変形性膝関節症は下腿外旋症候群を呈している人が多いため、medial pivot motionが起きにくい人が多く存在します。
そのため術後はしっかりと下腿の内旋を意識しながら可動域向上に努めましょう!
PCLが正常でなければ、roll backが上手く誘発されず、可動域が十分に確保できない場合も少なくありません。
PCLを温存することはCR型のメリットではありますが、PCLに機能異常や組織異常があると大きなデメリットにも成り得るため、術前の綿密な評価とDrへの術中所見の確認が必要となってきます。
PS型インプラントのリハビリテーション
PS型インプラントの特徴はACL、PCL共に温存しないということです!
前後安定性およびroll backはサーフェイスのpost-cam機構(詳しくは前回コラムをご覧下さい!)によって得ることができる仕組みとなっています。
このpost-cam機構は膝屈曲約60°以上で作動します。
つまり、
60°以下ではPCLの代償機能が再現されないため不安定性が生じる
ことになります。
リハビリのポイントとしては、CR型と違い、roll backは誘導しなくてよいということです。
roll backはpost-cam機構により物理的に起きるため、むしろ誘導してしまうとpostとcamの衝突を繰り返してしまい、摩耗が起きやすくなってしまいますので控えましょう。
また過度な回旋動作においてもpostとcamの衝突が起きてしまうため注意が必要です。
CS型インプラントのリハビリテーション
CS型インプラントの特徴はACLを切除しますが、PCLは切除か温存の選択が可能ということです!
また近年徐々にCS型インプラントの症例が増加しており、簡単に言うと、CR型とPS型のいいとこ取りをしたようなインプラントになります。
PCLが切除されているのか、温存されているのかによってアプローチは少し変わってきますが、基本的には脛骨の回旋も正常膝に近い状態で再現されるため、CR型と同じようなアプローチとなります。
セルフトレーニング
最後に、私が人工関節センターに勤務していた頃に膝関節屈曲可動域向上を目的として行っていたリハビリの考え方を紹介します!
TKA後の動作に必要な屈曲可動域は、疼痛のない安定した歩行には128°~132°必要であり、安定した階段昇降には133°から150°必要とされています。
よって、患者の術前の状態にもよりますが、私の中での退院時の屈曲可動域の目標は基本的には最低130°としていました。
私は急性期病棟に務めていたので、手術〜2週間で屈曲130°を獲得しなければなりませんでした。
そこで徹底しなくてはいけないのは、病室でのセルフトレーニングです!
私は主にこのヒールスライドを全TKA症例に指導していました。
CR型やCS型インプラント症例には、上記のようなポイントを確実におさえながらヒールスライドを実施してもらいます。
PS型については特に上記ポイントを意識しなくても良いと思います!
終わりに
今回はインプラントの種類から考える人工膝関節全置換術後のリハビリテーションについて解説しましたがいかがでしたでしょうか?
これらの内容はあくまでインプラントの種類だけを考慮したアプローチとなります。
本来であれば、インプラント以外にも、術前の状態や術式などの意識しなくてはいけないポイントが多く存在します。
医師と上手く情報共有・連携を取りながらリハビリテーションを展開して頂ければと思います。
なお、もっと詳しいTKAの内容については以下のライタープロフィールに記載している有料マガジンreha note〜リハビリの「なぜ?」を紐解く〜内で丁寧に説明しています。
是非ご覧ください!
最後までご覧いただきありがとうございました。
参考文献
・山田英司,井野拓実:人工膝関節全置換術の理学療法,文光堂,2018
・勝呂徹,井上一:人工膝関節全置換術「TKAのすべて」,メジカルビュー社,2007
・小野志操,吉澤隼人:膝関節伸展機構の癒着予防を考慮した人工膝関節置換術後の運動療法の効果―Cruciate-Retaining型における従来の運動療法との比較検討―,日本理学療法学術大会,2011
Writer Profile
たくみ
人工膝関節センターを経て、現在は整形外科クリニックに勤務しております!
研究をはじめとしてEBMの重要性を日々学んでおります。
Twitter:@TakumiRodrigues
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