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【論文紹介】10歳代での1日コップ1杯以上の牛乳摂取は高齢期での大腿骨近位部骨折を防ぐのか?-JAMA Pediatrics掲載の論文紹介-

こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fracturepreventです!

といえばカルシウム!

カルシウムといえば、、、、

 

牛乳

 

を思い浮かべる人が多いと思います。

 

骨のために牛乳を!と言われつつ、子供の時に苦手でなかなか飲めずに給食が終わらない子がいましたね、、、笑

 

さて、本日は

 

“牛乳を若い時から飲んでいた方が大腿骨の骨折をしないのか?”

 

そんなありふれた疑問の解決のヒントになる論文を

JAMA Pediatricsから見つけましたので紹介します。

 

10歳代に牛乳を多く飲んでいた方は将来骨折しなかったのか?

果たして、どのような結果だったのでしょうか?

 

研究の対象になった人たち

アメリカで閉経後女性と50歳以上の男性、合わせて96000名が研究に参加しました。

なんと22年間の追跡調査を行っています。

 

なお、The Nurses’ Health Studyというデータベース研究らしく、登録者は男女とも看護師さんのようですね。

追跡調査も90%以上と高い調査率を誇っているのはすごいですね、、、

 

調査の内容

13〜18歳での牛乳摂取量とその他の食べていた食事を聞き取り調査しました。

さらに最近でのダイエット、身長、喫煙、身体活動、服薬状況、その他の骨折の危険因子を調査しています。

50歳代から22年追跡調査し、最初の大腿骨近位部骨折の発生と10歳代の牛乳1杯(240ml)摂取量の関連性を解析しました。

 

結果

登録者のうち、追跡期間中に大腿骨近位部骨折が発生したのは

▶︎女性の1226名

▶︎男性の490名

でした。

90%以上が転倒によって骨折を生じていました。

 

表1に対象者の10歳代に摂取していた牛乳以外の食べ物について示します。

男女で牛乳をよく飲んでいた人は、他の食べ物もよく摂取していますね。

 

さて、

牛乳1杯(240ml)以上の摂取は骨折の、危険を減らせたのか?ですが、、、

なんと、、、逆に男性では9%骨折の危険性を上げていました

 

さらに身長やその他の要因を加えて解析すると、表2のように両者に牛乳の関係性は認められませんでした

 

この研究の結論は

 

10歳代(13-18歳)での1日1杯(240ml)以上の牛乳摂取は将来の大腿骨骨折を予防することはできなかった!

 

ということになります。

 

 

子供の頃の高いカルシウム摂取は高い骨密度に影響を与えることは周知の事実なのですが、この研究結果から言えることは“適正量”についてはまだ議論の余地があるということです。

 

今回は10歳代の牛乳摂取についての調査でしたが、特に女子では10歳未満での牛乳摂取量の方が重要だったかもしれないと著者らは考察しています。

 

他の研究でも女子だと5歳から12歳、初潮が始まる前の運動や栄養がその後の骨量に大きく影響を与える事も報告されています。

 

ですので、この研究結果は牛乳摂取を否定するものではなく、摂取時期や適正量についての検討について一石を投じた格好になったとものと思われます。

 

子供の時から継続して十分な栄養と運動を行うことは骨量を急速に増加させ、20歳前後での最大骨量の増加に大きな影響を与えます。

 

しっかりとカルシウムを蓄えることは将来骨折しないための貯金のようなもので、最大骨量を10%あげると高齢期の骨折リスクを半分にできる報告もあります。

 

一方で、将来の骨折発生には成人期以降の悪い生活習慣(タバコ、過度の因子)、病気(二次性の骨粗鬆症)、ステロイド剤の服用歴など骨密度以外の因子も大きく関係します。

 

ですので、

 

子供の時期の栄養、運動に加え、生涯を通して骨の健康に留意することこそ、高齢期の骨折を防ぐ要因

 

となります。

 

カルシウムは骨を形作るだけでなく筋肉の働きにも関与します。

牛乳が苦手な方はチーズや小魚など他の食品からも摂取することが必要ですね。

 

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

ABOUT ME
まっつぁん
まっつぁん
岡山で大学教員をしています。日々骨粗鬆症患者の診療にも携わりながらどうすれば骨折を減らせるのか、転倒を防げるのかを臨床、研究を通して考えています。 理念は社会貢献と人材育成。セラピストとしては骨粗鬆症の理学療法を確立することが目標です。学士(教育学) / 博士(保健学)/ 専門理学療法士(運動器)/認定理学療法士(運動器)/ 骨粗鬆症マネージャー / 転倒予防指導士 / 日本骨粗鬆症学会評議員 / 日本転倒予防学会評議員
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