その他

感度(sensitivity)・特異度(specificity)とは?

こんにちは、理学療法士・アスレティックトレーナーの白須達也です。

今回は臨床で大切な感度・特異度について書いていきたいと思います。

みなさん感度・特異度って知っていますか。

また理解していますか。

医療の分野では検査キットやバイオマーカーの開発でよく出てきますが、理学療法を進めていく上でも大切なことになりますので、解説していきたいと思います。

それではいってみましょう!

 

感度(sensitivity)の定義

感度(sensitivity)とは以下のように定義されます。

ある疾患を持つ人のうち、検査で陽性と正しく判断される割合を言います。感度が高いということは、「陽性の者を陽性と正しく判定する可能性が高い」ということになります。(日本理学療法士学会)

 

上記の説明にあるように、感度が高い検査は、その疾患がある場合は陽性になりやすくなります。

具体例)

ACL損傷の疑いのある患者さんが来たとします。
整形外科的テストにLachman testというものがありますが、Lachman testの感度は85%(0.85)と言われています。

 

“白須”
“白須”
高いですね!

Lachman testをして陽性の場合は、ACL損傷の確率が高くなりますが、反対に陽性になりやすいこのテストで陰性になれば、 ACL損傷の可能性はすごく低くなるということです。

そのため、感度が高い検査は、除外診断に用いられます。

 

まとめると、

 

感度が高い検査は陽性になりやすい。

 

感度が高い検査で陰性になると疾患を除外できます。

ゆえにスクリーニングしやすいです。

 

感度の高い検査を組みあわせる

先ほどのLachman testは感度が85%でしたが、15%の人は間違えてACL損傷と判断してしまう可能性があります。

しかし、感度の高い検査を組みあわせることで、その間違える確率を低くすることができます。

 

たとえば、Lachman testに、前方引出しテストを加えてみます。

感度が55%と言われているので、Lachman testだけだと診断ミスをする可能性が15%ですが、検査を2つ行なうと診断ミスをする可能性は6.75%(0.15×0.45=0.0675)に下がります。

 

診断ミスの確率

・Lachman testのみ→15%
・Lachman test+前方引出しテスト→6.75%

 

つまりLachman test、前方引出しテスト両方とも陰性の場合は、かぎりなく ACL損傷の可能性は低いということになります。

ただ注意しないといけないのは、同じような種類の検査ではダメということですね。

MRIなど、関連性の少ない検査を取り合わせる必要が大切になります。

 

特異度(specificity)の定義

特異度(specificity)とは、ある疾患を持たない人のうち、検査で陰性と正しく判定される割合を言います。

特異度が高いということは、「陰性の者を陰性と正しく判定する可能性が高い」ということになります。(日本理学療法士学会)

 

上記のように特異度が高い検査は、陰性になりやすい検査と言えます。

その検査で陽性になるということは、その疾患がある可能性が高いということになります。

ゆえに特異度が高い検査は、確定診断に用いられます。

 

先ほどと同じように、ACL損傷を例に考えてみます。

 

ACLの検査で特異度が高いものにpivot-shift testというものがあります。

pivot-shift testは感度24%、特異度98%という報告があります。

pivot-shift testは特異度が高いので、このテストで陽性であれば、ACL損傷の可能性が非常に高くなります。

特異度は陰性になりやすい検査ですから、その検査で陽性になるということは、「おそらくACL損傷でしょう」と考えることができるわけです。

 

全体的な流れ

「複数の感度の高い検査で除外診断(スクリーニング)」
「除外できなかったら、特異度の高い検査で確定診断

 

 

感度:a / (a + c)
特異度:d / (b + d)

 

感度・特異度のまとめ

感度が高い検査

・陽性になりやすい。
・除外診断に用いる。
・感度の高い検査を組みあわせることで、診断ミスの可能性が低くなる。

特異度の高い検査

・陰性になりやすい。
・確定診断に用いる。

 

実際に鑑別してみよう

あなたの病院に膝に痛みがある患者さんがやってきたとします。

ACL損傷の可能性があるので、検査を実施します。

除外診断(スクリーニング)

ひとまず、さきほど説明したLachman testと前方引出しテストをおこなうことにしました。

両方とも陰性の場合

感度の高い検査(Lachman testと前方引出しテスト)は、陽性が出やすくなっています。

そのため、そのテストで両方とも陰性の場合は、おそらくACL損傷ではないと考えられます。

もちろん、これだけではまだACL損傷の可能性も残っているで、別の検査を組みあわせて判断する必要があります。

一方または両方陽性の場合

こうなるとACL損傷の可能性が出てきます。

しかし感度の高い検査には、ACL損傷じゃない人も含まれている可能性があります。ですので、次は特異度の高い検査で確定診断を行っていきます。

 

確定診断

特異度の高いpivot-shift testを実施することにしました。

pivot-shift test陰性の場合

pivot-shift test陰性の場合は、ACL損傷だと確定することはできません。

しかし、完全にACL損傷の可能性を除外できるわけではないので、他の検査を実施するなどして、さらなる検討が必要になります。

pivot-shift test陽性の場合

ほぼACL損傷であると確定診断できます。

さらに精度を高めたい場合は、ほかの特異度の高い検査をおこなってもいいと思います。

 

おわりに

私たち医療専門職は、自分たちの評価手技について感度や特異度を理解した上で、用いることが大切になってきます。

医療専門職は、患者さんの疾病を診断することができません。

しかし、これらの評価結果から患者さんの機能低下ひいては能力低下の要因を探索する必要があります。

医師のつけた診断名だけではその患者さんが持つ多様な機能障害 (あるいは能力障害) を説明することはできません。

そのため、リハビリテーション専門職も医師の診断と同じように、その要因を正確に突き止めるための評価方法を確立していかなければなりません。

※感度・特異度の数値に関しては文献によって違いがありますので、今回の数値はあくまで例として考えて頂ければと思います。

 

今回はこれで以上になります。

最後まで、お読み頂きありがとうございました。

ぜひ、臨床にて活用してみて下さい。

 

参考文献

 

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白須 達也
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