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サルコペニアは高齢者の転倒と骨折に関連するか?-2つの最新のメタアナリシスを解読-

こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@sxLdzuP2W3uE5D1です!

サルコペニアという言葉はもうみなさんご存知かと思います。

1989年にRosenbergが提唱した加齢による筋肉量減少を表した比較的新しい概念です。

定義としては以下のように示されています。

“筋量と筋力の進行性かつ全身性の減少に特徴づけられる症候群で身体機能障害、QOL 低下、死のリスクを伴うもの”1)

 

サルコペニアがきっかけで様々な病気の進行を加速させたり、介護や死に至る場合もあるということになります。

 

サルコペニアの原因と診断

サルコペニアの原因は大きく一次性(加齢によるもの)と二次性(他に原因があるもの)に分けることができます(図1)。

1次性:加齢によるもの

2次性:他に原因があるもの

 

多くの理学療法士は病院で働いていますので、入院中で不適切な栄養管理をされた患者さん、心疾患、呼吸器疾患などで筋肉量が減少している方、がんによる悪液質の患者さん、廃用症候群の方をイメージされるのではないでしょうか?

 

サルコペニアは筋肉量が減少した原因には関係なく筋肉量の低下を認めたかつ運動機能が低下した場合に診断されます。
筋肉量の減少のみはプレサルコペニアといわれます。

 

アジア人での診断基準を以下(図2)に示します。

 

筋肉量を必ず計測しないといけないのが難点です。

DXA法は病院でないと計測不可能で、体組成測定器によるインピーダンス法も機械が施設にないと計測できません。

その代用として一般的には下腿周囲計が参考になります(図3)。

サルコペニアと転倒、骨折の関連性をメタ解析した2論文

我々の調査でも、一般高齢者でサルコペニアがあるとその後2年間のうちに転倒しやすいことがわかっています4)が、このテーマに関する質の高い論文を集めて、対象者を増やしてまとめて解析する手法、いわゆる“メタ解析“を行なった2つの論文が有名雑誌に同時期に掲載されているので紹介したいと思います。

 

最初に2019年1月一般住民と介護施設の高齢者におけるサルコペニアと転倒との関連に関してメタ解析した論文がClinical Nutritionという英文誌に発表されています5)

PubMed、EMBASE、Cochrane CENTRAL Libraryといったデータベースから2018年までの文献で、なおかつ①サルコペニアの診断がはっきりしており②前向きに調査された質の高い論文を集めています。1689の論文を精査し10論文に絞り込み、10,073名についてまとめて解析しました。

 

以下の図は地域と介護施設の高齢者でサルコペニアが転倒に関連したかどうかの結果です(図4)。図の上側が地域高齢者、下が介護施設の高齢者についての結果です。図右下の数値が、10論文の対象者をまとめて解析した結果です。

全体で1.69となっていますので、サルコペニアでない人と比較しサルコペニアであると将来転倒する確率が1.69倍になるということがいえます。

一方、図下の介護施設の高齢者の結果では3論文をまとめましたが、統計学上は有意な差はなかったようです。メタ解析には最低3つ程度の論文数が必要ですが、介護施設での質の高い調査研究が少なかったので十分な解析とはいえませんね。

介護施設内でのサルコペニアと転倒の関連性の結論は持ち越しといえるかもしれません。

 

さらに、時を同じくし2019年の1月にJournal of Cachexia, Sarcopenia and Muscleという英文誌にもサルコペニアと転倒との関連をまとめたメタ解析研究が掲載されていました6)

この論文は転倒に加え“骨折発生”も解析していること がポイントです。

上記論文と同様のデータベースからサルコペニアと転倒・骨折に関する論文を検索しています。4129の論文をチェックし、33の論文を解析の対象にしています。

調査対象が上記と異なり“前向き調査”のみでない分、論文数が多いようですね。対象者も病院入院、施設、地域と様々のようです。

上記の論文と比較するために、前向き調査だけの解析結果をみてみます(図5)。赤いカッコ内ですが、全体で1.89倍という結果でサルコペニアは転倒を予測しました。数値も上記の論文と変わらないですね。

 

一方、骨折発生とサルコペニアの関連性について、対象者の背景ごとに解析した結果を見てみます(図6)。

一部有意差がないものもありますが、どの背景の高齢者でもサルコペニアがあると将来骨折する確率は1.3-2倍程度上がるということがわかりました。

 

なぜサルコペニアになると転倒しやすいのか?

当然ながら歩行能力や筋力が低下しているのでバランスを崩した時の反応が遅いということになりますが、それは高齢者全般にいえることです。

根本的な要因として、おそらくサルコペニアは不活動に加え、栄養不足から生じていることから、特に筋肉や神経の働きに作用するビタミンD不足の影響があると思います。

また、筋量減少でもサルコペニアでは、特に速筋線維が減少し反射的な動きができないため転倒するのではないかと考えられますね。

一方、骨折については筋肉が少ないと転倒した時の衝撃に耐えることができないという物理的な要因もありますね。

しかし、一番の要因は筋肉量が減り、筋肉による活動も減少することで破骨細胞による骨吸収が増加し、骨粗鬆症が進行することが骨折の要因と思われます。

逆に骨を作る骨芽細胞は筋肉の活動によってその活動を強めます。つまり筋肉と骨は実はコインの裏表ですね。

骨は外から見ることができませんし、骨量の検査も病院でないとできませんが、理学療法士は筋肉を触ることや筋力評価は得意なはず!

筋肉の評価し、サルコペニアを見つけ出せば、骨粗鬆症も合併している可能性も高いはずです。

そういう方には栄養状態や食事摂取量の評価もしつつ、転倒予防に対する運動処方をする必要がありますね。

 

本日は以上で終わります。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

 

参考文献

1)Cruz-Jentoft AJ,et al,. Age Ageing 39 : 412-423,2010.
2)Miyakoshi N, Hongo M, Mizutani Y, Shimada Y :Prevalence of sarcopenia in Japanese women with osteopenia and osteoporosis. J Bone Miner Metab 31 : 556-561, 2013
3)Di Monaco M, Castiglioni C, Vallero F, et al : Sarcopeniais more prevalent in men than in women after hip fracture : a cross-sectional study of 591 inpatients. Arch Gerontol Geriatr 55 : e48-52, 2012
4)Matsumoto H, Tanimura C, Tanishima S, et al :Sarcopenia is a risk factor for falling in independently living Japanese older adults : A 2-year prospective cohort study of the GAINA study. Geriatr Gerontol Int .2017
5)Zhang X, Huang P,et al.: Falls among older adults with sarcopenia dwelling in nursing home or community: A meta-analysis. Clin Nutr.2019
6)Yeung SSY, Reijnierse EM,et al.: Sarcopenia and its association with falls and fractures in older adults: A systematic review and meta-analysis. J Cachexia Sarcopenia Muscle.2019; 10: 485-500.

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たけ
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理学療法士&ピラティスインストラクターをメインに姿勢・パフォーマンス改善のプロとして活動中! 過去には世界で最も患者が多い病院、某大学病院で超急性期のリハビリテーションに貢献。その他にも認定脳卒中、呼吸療法認定士、ガンリハなどの資格を保有。 超急性期から障害予防までの多岐にわたる分野の記事を執筆中!
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