今回は血液検査の正常値と逸脱した時に考えられる異常、リハ介入時の注意点に関してです。
たまに忘れてしまうものもあるので、仕事の際にいつでも見れるようにメモとして残しておこうと思ってアップしておきます。
ざっくり内容を見る
- まずはじめにお読みください!
- 赤血球(RBC)
- ヘモグロビン(Hb)
- ヘマトクリット(Ht)
- 白血球(WBC)
- 血小板(PLT)
- 赤沈
- C反応性たんぱく(CRP)
- 総たんぱく(TP)
- アルブミン(Alb)
- ナトリウム(Na)
- カリウム(K)
- 総コレステロール(TC)
- 低比重リポ蛋白コレステロール(LDL)
- 高比重リポ蛋白コレステロール(HDL)
- 中性脂肪(TG)
- アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST,GOT)
- アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT,GTP)
- 乳酸脱水素酵素(LDH)
- アルカリ性フォスファターゼ(ALP)
- γ-GTP
- CPK(CK)
- MB-CPK(CK)
- 血液尿素窒素(BUN)
- クレアチニン(Cr)
- 尿酸(UA)
- 脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)
- 空腹時血糖(BS,Glu)
- 糖化ヘモグロビン(HbA1c)
- 甲状腺刺激ホルモン(TSH)
- 活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
- プロトロンビン時間(PT-INR)
- D-dimer(DD)
まずはじめにお読みください!
記事の内容を見る前に、まずは以下の二点をお読みください。
見る際の注意点
ここでの基準範囲とは、健常者の95%が含まれる範囲の値です。
値から外れたからといって疾患を特定するためのものではありません。
疾患の特定は、その他の検査や診察などを総合的にみて判断しますので、表記はあくまで参考値として考えてください。
各項目の掲載方法
各検査項目は以下のように掲載します。
・基準値
・考えられる異常(低下と上昇)
・リハ時の注意点(特に重要なもののみ掲載)
赤血球(RBC)
男410-530万/μl
女380-480万/μl
低下:貧血、出血
上昇:多血症、脱水
※リハ時の注意点は以下のヘモグロビンと同様
ヘモグロビン(Hb)
男性:14-18g/dl
女性:12-16g/dl
低下:貧血、葉酸欠乏症、ビタミンB12欠乏症
上昇:多血症、脱水
赤血球、Hbなどが低下すると各組織への酸素供給が不十分になることが多く、倦怠感や疲労感が強く出たり、離床時にこれらが増強しやすいことが多いです。このため運動療法に対して患者が拒否的になることもあるので注意。
Hb値(g/dl)と出現しやすい臨床症状
8.5:蒼白
8.0:頻尿
7.5:運動後の呼吸促進
7.0:神経質
6.5:頭痛
6.0:眩暈
5.5:心雑音
5.0:疲労・倦怠感
4.5:食欲不振
4.0:悪心
3.5:発熱
3.0:呼吸困難
2.5:心不全
2.0:昏睡
臨床的に、Hbは6g/dl台を切ってくると歩行を行うと急に脱力したり意識が飛んだりすることが多いです。よって、歩行練習を行うのはこれよりも高い数値の時が安全だと思います。
ヘマトクリット(Ht)
男40-48%
女34-42%
低下:貧血、骨髄異形成症候群
上昇:多血症、脱水
白血球(WBC)
5000-8000/μl
低下:ウィルス性感染症、再生不良性貧血
上昇:感染・炎症
血小板(PLT)
14-34万/μl
低下:血液凝固能低下、肝機能低下
出血時に損傷した箇所の止血するのが血小板の役割なので、低下していると少しの刺激でも出血や内出血をきたす可能性があります。
※臥床時の仙骨や踵部などの摩耗やずれでも出血することがあり!
ROMや介助の際も容易に内出血するので愛護的に行いましょう。
特に、転倒による頭蓋内出血は致命的になるため要注意!
赤沈
20mm/時間
上昇:感染、心筋梗塞、悪性腫瘍
C反応性たんぱく(CRP)
0.6mg/dl以下
上昇:感染・炎症、悪性腫瘍、外傷、急性心筋梗塞、膠原病、各種術後
炎症反応があるときは、栄養や酸素消費が高くなり体力を消耗している状態なので患者も疲れやすいので運動療法の負荷量に注意しましょう。
総たんぱく(TP)
6.5-8.1g/dl
低下:栄養不良、消化管吸収障害、肝機能障害、腎機能障害、脱水
アルブミン(Alb)
4.1-5.1g/dl
低下:栄養不良、消化管吸収障害、肝機能障害、腎機能障害
Alb2.5g/dl以下になると顕著に血管内の浸透圧が低くなることで組織に水分が移動していくため、浮腫、胸水、肺うっ血、腹水などの症状がみられます。
褥瘡、呼吸状態悪化(体位によっても変化あり)、心負荷に注意しましょう。
これらは説明しているときりがないですが、各病態に特有のリスク管理を行いましょう。
また、栄養が不足すると疲労、冷え、筋力低下、気力低下などの症状も出現することが多いです。
ナトリウム(Na)
135-147Eq/l
低下・上昇:糖尿病、高血圧、腎疾患、利尿薬、脱水で変化
カリウム(K)
3.5-5.0Eq/l
低下・上昇:糖尿病、高血圧、腎疾患、利尿薬、脱水で変化
カリウムは低下でも上昇でも不整脈を誘発しやすくなるので注意しましょう。
必要であれば心電図モニターを装着してリハを行いましょう。
総コレステロール(TC)
130-220mg/dl
低下:肝機能障害
上昇:脂質異常症
低比重リポ蛋白コレステロール(LDL)
140ml/dl未満
上昇:動脈硬化、高血圧
高比重リポ蛋白コレステロール(HDL)
40mg/dl以上
低値:動脈硬化、糖尿病、肝硬変
中性脂肪(TG)
50-150mg/dl
上昇:脂質異常症、糖尿病、脂肪肝
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST,GOT)
10-40単位
上昇:肝機能低下、心筋梗塞、肝硬変
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT,GTP)
50-40単位
上昇:肝機能低下、心筋梗塞
乳酸脱水素酵素(LDH)
275-512単位
上昇:心筋梗塞、肝機能低下、貧血、炎症
アルカリ性フォスファターゼ(ALP)
90-298単位
上昇:肝・胆道系疾患、貧血、炎症
γ-GTP
50単位
上昇:肝機能低下、脂肪肝、胆石
上記に挙げた肝機能低下の指標が上昇していて肝機能障害がある場合、肝臓の機能である老廃物の蓄積・エネルギー貯蓄や配給能の低下などから、患者は倦怠感、脱力感、かゆみ、嘔気、体重減少、消化管出血、浮腫などを定することが多いので、離床意欲が低下することもしばしばあります。
特に、心機能が低下している場合などに離床を行う際には、骨格筋に血液供給が増える分、肝臓の血流が低下しさらに肝臓に負担をかけてしまうこともあるので過負荷に注意しましょう。
CPK(CK)
30-200単位
上昇:急性心筋梗塞、筋の炎症損傷、脳血管障害
MB-CPK(CK)
5%以下
上昇:急性心筋梗塞、急性心筋炎
血液尿素窒素(BUN)
8-20mg/dl
上昇:腎機能障害、消化管出血、心不全、脱水
クレアチニン(Cr)
0.5-1.3mg/dl
上昇:腎不全、慢性腎炎
BUNやCrは老廃物であるため、これらの値が上昇して体内に溜まっていくと、疲労感、嘔吐、皮膚のかゆみ、浮腫、不整脈などの症状が出現することがあります。
さらに腎機能が低下している場合は、腎臓から出るホルモンの作用に夜骨髄での赤血球の産生や骨の発育・維持などの機能も低下してしまうために貧血や骨折が発生しやすくなったり、電解質の乱れ(特にNaやKの低下、K上昇)によって水分貯留、高血圧、浮腫、不整脈、筋力低下などをきたしやすい。
慢性腎不全患者の腎機能の評価は糸球体濾過料(eGFR)を用いて行いますが、eGFRは日本腎臓学会が推奨しているCrを用いた計算式を用いて算出と臨床でも使いやすいです。
eGFR(ml/分/1.73㎡)=194×Cr-1.094×年齢-0.287(女性の場合はこれに0.739をかける)
丁寧にも糸球体濾過量の早見表のPDFをネットに掲載してくれているサイトがあったのでリンクを貼り付けておきます。
尿酸(UA)
4-6mg/dl
上昇:高尿酸血症、痛風、過食
脳性ナトリウム利尿ポリペプチド(BNP)
18.4pg/mL以下
上昇:心不全、心筋梗塞、弁膜症
空腹時血糖(BS,Glu)
110mg/dl未満
低下:膵臓腫瘍、甲状腺機能低下症、肝硬変
上昇:糖尿病、膵炎、甲状腺機能亢進、ステロイド剤使用中
運動療法を行う際には低血糖に注意しましょう。
一般的には血糖値が70ml/dlを切ると自覚症状が出現する場合が多いです。
低血糖が進行した際の症状は以下を参照。特に高齢者の場合は自覚症状が乏しい場合があるので、注意深くこれらのサインを見ましょう。
血糖値(mg/dl)低下と出現しやすい臨床症状
80:インスリン分泌低下
70:インスリン拮抗ホルモン増加(グルカゴン、カテコールアミン、成長ホルモン)
60:交感神経刺激症状出現(発汗、動悸、手の震え、身体の違和感、不安・焦燥感)
50:中枢神経症状の出現(頭痛、目のかすみ、眠気、脱力)
30:傾眠、意識障害、痙攣、昏睡
脳はブドウと酸素を栄養源としているため、低血糖は重症化すると不可逆的な脳へのダメージを与えます。
血糖値低下時のこのような生体反応は、中枢神経にダメージを与えないようにするための警告信号とも言えます。
運動療法中にはこのような順番で症状が出現することが多く、特に交感神経症状は観察していてわかりやすいので要チェック!
糖尿病の運動療法を行う際には、患者さんにブドウ糖を持参していただくと低血糖時の対応がすぐにできます。
糖化ヘモグロビン(HbA1c)
4.3-5.8%
上昇:糖尿病、腎不全
HbA1cは過去1-2ヶ月の平均血糖値を反映する指標でばらつきが少なく、血糖コントロールを評価する上で重要な指標です。
細少血管障害(腎症、網膜症)の発症予防や進展抑制のためには、以下の「優または良」の範囲で管理することが望ましい。
血糖値コントロールの指標:JSD値(%)
優 :5.8未満
良 :5.8-6.4
可(不十分):6.5-6.9
可(不良) :7.0-7.9
不可 :8.0以上
甲状腺刺激ホルモン(TSH)
0.5-5μU/ml
低下:甲状腺機能低下症
上昇:甲状腺機能亢進症
活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)
30-45秒
上昇:肝機能低下、DIC、ワーファリン使用時
プロトロンビン時間(PT-INR)
0.80-1.20INR
低下:肝機能低下、DIC、ビタミンK欠乏症、血液凝固因子欠損症、ワーファリ
ン使用時
ワーファリンによる抗凝固療法のコントロールの推奨値はPT-INR=2.0~3.0(70
歳以上の高齢者などの出血の合併症のリスクが高いときにはPT-INR=1.6~2.6)
であり、これを見る際に用いることが多いです。
心原性脳梗塞症例の離床を行う場合には、心内血栓の有無の評価と共にPT-INRの値がこの範囲まできちんと高くなっているかを見るとより安心して離床できます。
心原性脳梗塞の早期離床に関しては以前にも関連する記事を投稿していますのでそちらもご参照下さい。
D-dimer(DD)
5 ng/ml未満
上昇:深部静脈血栓症、肺塞栓、DIC、心内血栓、大動脈解離
この指標は、深部静脈血栓症の診断を臨床的に行う際に有用です。
これに関しては以前に記事を投稿しているのでご参照ください。
⇒深部静脈血栓症の臨床所見
本日は以上で終わりです。
血液検査値はこの他にもたくさんありますが、日常的に使うものはこのぐらいだと思いますので今日はこれまで。
血液検査の正常値を理学療法で利用する際には、患者さんの病態が良い方向に向かっているのか、それとも悪い方向に向かっているのかを判断する際に使うことが多いですね。
「異常値だったら離床をしない、運動負荷をかけない」
ではなく、
・病態が良い方向に向かっていれば、プログラムを進めて(負荷を上げて)いく
・逆に悪い方向に向かっていれば、をプログラムを進めない、もしくはプログラムを戻す(負荷を下げる)
というよう風に、血液検査値は利用します。
ただし、上記のデータは丸暗記して単発でそのデータを見てもほぼほぼ役に立たないので、いろんな臓器を含めて全身的に病態の変化を考えたい場合に判断材料の一つとして使用すると良いでしょう。
なお、急性期のリスク管理の書物は色々な物が出ていますが、あまり詳しくない人でも理解しやすい“鉄板”といえば以下の2つでベテランの方も異論はないと思います。
急性期を経験したことがある人なら誰しも見たことがあるのでは?っと思うぐらいの有名な良い本ですね。
今回の検査値の内容の大半はこちらにも含まれていますのでご参考までに!
最後までお読みいただきありがとうございました。
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