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臨床現場から考える医療機器開発

みなさんあけましておめでとうございます。

リョウ(@HealthCare_ryo)です。

 

今回お話する内容は一見、臨床的ではないようなテーマかと思うかもしれませんが、実はとてつもなく臨床に直結する話ですのでご安心ください。

  • 医療機器開発に必要な考え方
  • 臨床現場のニーズとは
  • 現場で働く人の情報はものすごく価値がある

 

あなたはニーズを把握できていますか?

突然ですが、

 

「あなたはニーズを把握できていますか?」

 

日々臨床の現場で働いておられる方々には少々失礼な質問かと思いますが、

 

でもこれ、

 

患者さんのニーズだけではなく『臨床場のニーズ』だとしたらどうですか?

 

「あなたは臨床現場のニーズを把握できていますか?」

 

こう聞かれると、

 

・管理職の立場の人間の仕事
・若手には関係ない
・新人にはもっと関係ない

 

と感じる人が多いかと思います。

 

でもそんなことはありません。

 

だってこれは『医療機器開発の視点』の話なのですから。

 

 

少し私の話をすると、

 

私は現在、急性期の総合病院で勤務しながら医療機器開発の活動も行っています。

 

医療機器開発と言うと大それた感じがするかと思いますが、そんなことはありません。

 

大事なことは

 

現場のニーズを把握すること

 

対象者(患者さんや働き手)の困りごとを解決すること

 

です。

 

これが出来れば医療機器開発への一歩が踏み出せます。

 

これが出来ればあなたの情報の価値は一気に飛躍します。

 

逆にこれが出来ていなければ医療機器開発への一歩が踏み出せませんし、

 

あなたの情報の価値はありません。

 

 

現場のニーズを把握することとは?

 

では『現場のニーズを把握すること』とはどう言うことか?

 

例を出して考えてみましょう。

 

有名な話ですが、

 

 

「ドリルを買う人は何が欲しいと思いますか?」

 

そんなもの決まってる!!

 

ドリルが欲しい人はドリルが欲しいだけでしょ!!

 

・・・

・・・

・・・

 

これではダメです。

 

・なぜその人はドリルを欲しがっているのか?
・ドリルでなにをしたいのか?
・ドリルを手にした先になにを求めているのか?

 

ここを考えないといけません。

 

では、

 

Let’s thinking time!!

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

どうでしょうか?

 

ドリルのその先が見えたでしょうか?

 

では答え合わせです。

 

「ドリルを買う人は何が欲しいか?」

 

それはです。

 

え?と思う方や、

 

なるほど。と思う方さまざまでしょうね。

 

なぜ答えが「穴」なのかと言うと、

 

あなたがドリルを使う時というのはどういう時ですか?

 

おそらくどこかに「穴」を開けたい時ではないでしょうか。

 

つまり、ドリルを買う人が欲しいのはドリルを使って開ける「穴」なんです。

 

穴を開けてDIYしたり、物を通したりです。

 

 

では最初の質問に戻ります。

 

『あなたはニーズを把握できていますか?』

 

これに当てはめると、

 

ドリルはニーズではありません。

 

ドリルはニーズを達成するための手段(商品)です。

 

ここでのニーズは穴を開けることです。

 

ニーズは=『課題です。

 

ニーズを把握して解決すると言うことは、

 

課題を把握して解決すると言うことです。

 

ここに機器開発の原点があります。

 

つまりニーズ=課題は「穴を開けること」ですので

 

手段はドリルじゃなくてもいいんです。

 

ドリルって重いし、うるさいし、危ないし、もっといい手段ないかなー。

 

こう考えてドリルよりも軽くて、静かで、安全な商品を作ることができたらそれはきっと

 

『価値のある商品』です。

 

穴を開けるにはドリルを使う。

 

この今ある一般的な価値を革新することができたならばそれは、

 

新たな機器開発へと繋がるイノベーションです。

 

 

例から考える医療機器開発

 

なんとなくイメージが付いてきたと思うのでもう一問いってみましょう。

 

あるカフェの話です。

 

あなたはそのカフェの店長です。

 

「お店の売り上げを拡大したい」と思っています。

 

さて何をしますか?

 

とりあえず、

 

・色々なメニューを追加してみる
・若者受けを狙ってタピオカドリンクを試してみる
・味を改良してみる
・値段を安くしてみる
・量を増やしてみる

 

などしてみましたが売り上げは変わりませんでした。

 

ではどうするか?

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

・・・

 

もちろん、メニューを追加したり、流行に乗ったり、味や値段、量を改善したりすることが有効な事もあります。

 

でも『とりあえず』ではダメです。

 

店頭に立ってお客さんの動向を確認して、

 

・どんな客層の人が
・どんな目的で
・どんなメニューを
・どういった理由

 

で購入しているのか?

 

最低でもこのくらいは現場を観察する必要があります。

 

普段まったく若者が来店しないし、

 

近くに若者が集まるスポットがないのに流行に乗ってタピオカドリンクのメニューを作ってもおそらく成功しにくいです。

 

そして可能ならお客さんに実際にインタビューをしてください。

 

すると、

 

毎朝7時〜9時に一人で来店してハンバーガーだけを頻繁に購入している人が多い。

 

その人たちはテイクアウトで購入して車で走り去っていく人がほとんど。

 

話を聞いてみると、

 

「ここのカフェは高速道路の入り口の近くで、職場までは遠いし、高速道路にはあまりお店がないから、高速道路に乗る前に腹持ちのいいものを買いたい。」

 

というニーズが見えてきました。

 

すると、

・駐車場を広くして駐車しやすくする
・ドライブスルーを始めてみる
・腹持ちのいいハンバーガーへ味を改良してみる
・朝の時間帯はドリンクとセットで販売してみる

 

などの売り上げを拡大するための対策が見えてきました。

 

結果、これらの対策を実施すると売り上げが拡大しました。

 

 

いかがでしょうか?

 

このように現場を適切に観察して、

 

現場のニーズ=課題を把握することの重要性

 

が伝わったでしょうか。

 

医療機器開発への道すじ

 

では医療機器開発の話に戻りましょう。

 

医療機器開発でも同じく現場のニーズの把握はとても重要です。

 

というか必須です。

 

・患者さんのニーズ(困りごと)はなんなのか?
・患者さんはなにを求めているのか?
・現在の方法で困っている、手間だと感じていることはなんなのか?

 

しかし現実では医療機器開発と現場のニーズに隔たりがあることが多々あります。

 

それはなぜかと言うと、

 

『医療現場ってすごく閉鎖的』

 

だからです。

 

これはよくある例え話なのですが、

 

企業の方が高名な教授の医師のもとを訪ねて医療機器開発の相談をします。

 

すると高名な教授医師は企業に対して「この医療機器の持ち手が持ちにくいから改良したら売れるよ」と言いました。

 

企業側は高名な教授医師の言う事なら間違いないと思い、現場のニーズを把握する事なく持ち手を改良した医療機器を作成し販売しました。

 

しかし、高名な教授医師以外にはほとんど売れませんでした。

 

なぜかと言うとその高名な教授医師は身長が195㎝もあって手がめちゃくちゃ大きかったんです。

 

もちろん手の大きい教授医師には売れますが世間一般にはあまり売れない事は想像できますよね。

 

もう一つは

 

企業側が「ウチの技術を使えばこんな製品が作れる!これはきっと売れるはずだ!」

 

と言って現場のニーズを把握せず製品を作って売れないパターン。

 

 

この二つは例え話としてよくされるのですが、

 

正直なところ本当に実在します。

 

私も機器開発についての相談を受けることがあるのですが、

 

現場のニーズを把握せずにすでに製品が作られていた、

 

なんて経験があります。

 

 

医療現場に出入りする企業はそもそも限られますし、出入りしている目的もほとんどは営業や販売・納品などです。

 

実際の医療現場の中を見学して分析してなんて事はほぼありません。

 

また、医療スタッフ側も医療関係者以外の企業の方達と接する機会って職業柄少ないのが現状です。

 

この背景には患者さんの個人情報保護や感染・衛生環境面への配慮などももちろん影響しています。

 

そのため医療現場って『閉鎖的』なんです。

 

ただ、閉鎖的であったからこそ医療現場の声って貴重なんです。

 

実は最近では病院側が企業向けに医療現場を有償で公開する取り組みなんかも始まっています。

 

しかも数十万円以上するんですよ。

 

 

医療現場で働いている人の情報って実はものすごい価値のあるものなんです。

 

自分が担当している目の前の患者さんの困りごとや

 

その困りごとを解決するための手法というのは、また新たな別の人の困りごとを解決するための手段になるかもしれません。

 

普段の臨床でのニーズの把握や患者さんの困りごとの発見、その困りごとに対して自分なりに実践している解決手法。

 

それら全て実は医療機器開発への第一歩となるかもしれません。

 

普段の臨床に医療機器開発の視点も持ってみてはいかがでしょうか^^

 

まとめ

今回は『臨床現場から考える医療機器開発』についてお話しました。

 

普段、医療機器開発に関わっている人は少ないかと思いますが、

 

実はあなたが日々感じている臨床現場の困りごとやそれに対して実践している解決方法なんてのは医療機器開発への第一歩となるかもしれない貴重な情報です。

 

当たり前になっていて気づいていないかもしれませんが、

 

医療現場という特殊な環境で仕事をしているというのは非常に貴重な要素です。

 

あなたの知識・経験が新たなイノベーションとなるかもしれませんよ。

 

そしてそれはあなたの臨床の幅を広げてくれるものかもしれません。

 

要点まとめ
  • ニーズとは課題
  • 医療機器開発において現場のニーズ把握はとても重要
  • ニーズを適切に把握しないとミスマッチが起こる
  • 臨床現場で働く人の医療機器開発の視点での情報はとても貴重

※現場での情報は秘密保持や会社の規約等あるので安易な発信には注意して下さい※

 

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