こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fractureprevent)です!
みなさん、高齢者の転倒というとどのような場面が思い浮かぶでしょう?
滑る、段差に引っかかる?などではないでしょうか?
今日は監視カメラに移った介護施設での転倒事故の様子を分析したLancetに掲載された論文を紹介したいと思います!
ざっくり内容を見る
世界五大医学雑誌の一つ医学雑誌Lancet
医学雑誌Lancetの名前を聞いたことがある方は多いと思いますが、この医学雑誌は世界で最も評価の高い五大医学雑誌の一つです。
そのインパクトファクター(どれだけその雑誌に掲載された論文が引用されたかといった指標)は45と非常に高く(ちなみにリハビリテーション関連の雑誌のインパクトファクターは一桁)、世界中の医療職に与える影響力が大きい雑誌ともいえます。
その雑誌に2013年に掲載された非常にインパクトのある論文をご紹介します。
介護施設内の監視ビデオカメラで転倒事故の映像を分析
2つの高齢者施設内のリビングや廊下といったありふれた場所216箇所に設置された監視カメラの映像を三人の調査者が分析し、施設入所者の転倒事故が映った場面を割り出し、いくつかの転倒場面と転倒原因にカテゴリーに分類しました。
転倒場面
・歩行で前進している時
・静的立位
・立ち座り時
・歩き始め
・起き上がり時
・後ろ歩きもしくは横歩き時
・歩行中の方向変換
・車椅子に座る時
・リーチ動作時の転倒
転倒原因
・重心移動で不意にバランスを崩す
・つまずく
・障害物にぶつかる
・支持物を失う
・意識消失
・スリップ
二つの施設の入所者と平均年齢はそれぞれ180名、81歳(そのうち67%が女性)、191名、82歳(61%は女性)でした。
なお、アルツハイマー病の方がそれぞれの施設で17%、38%含まれていました。
227ケースの転倒場面について分析
2施設内でインシデントレポートではそれぞれ45%、34%が転倒で、
さらにその内、それぞれ65%、25%の転倒事故を監視カメラが捉えていました。
2施設で監視カメラに映った転倒事故の合計227ケースについて分析を行いました。
転倒の場面では歩行で前進している時の転倒が24%と最も多く、歩行で前進している時の転倒が13%、歩き始めの転倒11%と多く、その他は少ないといったのが現状でした。
A 歩行中の方向変換
B 歩き始め
C 後ろ歩きもしくは横歩き時
D 歩行で前進している時
E 車椅子に座る時
立位での重心移動で不意にバランスを崩すことが多い
転倒の原因では多くは立位での重心移動で不意にバランスを崩して転倒しているケースが最多で41%を占めました。
次に多かったのはつまずきで21%でした。
意外と、滑ったり、急な膝折れなどは4-11%と少ない結果でした。
みなさん、リハビリテーションの場面で患者さんに
「つまずかないように、つま先を上げて」
「段差に引っかからないように段差昇降の訓練をしましょう」
などという練習をルーチンにしていないでしょうか?
当然ながらその人ごとに、
どんな場面で転倒しやすいのか身体機能の評価を行った上で訓練を行うのが当然です。
なぜなら、一般の高齢者、施設入所者、疾患のある患者など対象者の背景が異なる転倒場面や原因は大きく異なるからです。
画一的な訓練を行なっていては高齢者の転倒、骨折を予防はできません。
施設入所者の転倒では“立位での重心移動で不意にバランスを崩して転倒”するケースが最も多く、安定性限界を維持するバランス機能やステッピング機能が大きな問題のようです。
この論文にアクセスすると実際の動画も見ることができますので、実際の場面を見ることで大変勉強になります。
“転倒予防“という言葉は理学療法士の中で、一般的になっていますが、
十把一絡げにとらえず、対象者の背景を踏まえて上で、オーダーメードの介入をしていきたいものです。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
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