こんにちは、認定糖尿病理学療法士のようぞうです。
糖尿病を説明する上で外せないキーワードには前回お話した血糖(血糖値)と、そして今回お話するインスリンがあります。
思い出してもらうと、学生の頃に解剖学や運動学は好きだけど、生理学や内科学は好きじゃなかった、という人は多いのではないでしょうか。
実は僕も好きではありませんでした。特にホルモン分泌のあたりを覚えるのに苦労したことを思い出します。
でも安心してください。
糖尿病に関するホルモンは大きく2種類しかありません。
血糖値を上げるものと下げるもので、その代表はグルカゴンとインスリンです。今日はこの2つについて、そしてそこからみた糖尿病の類型、そしてインスリンと運動の注意点についてお話ししていきます。
ざっくり内容を見る
血糖の出し入れ管理
前回お話したように血糖はエネルギーです。
したがって体を使う時には血液中にエネルギーを浮かべて、各器官に送り込まなければいけません。
ただし、余計な量のエネルギーを浮かべておくことはなく、保管庫にしまっておく必要があります。
その管理を行うのが、上に挙げたホルモンの役割なのです。
以下にホルモンの役割を簡単に説明していきます。
血糖値を上げるホルモン(血液中にエネルギーを送り込むもの)
コルチゾール
いわゆるステロイドホルモン。体内のいろんな器官を”元気”にするホルモン。体を”元気”な状態にするためにエネルギーを送り込む
カテコールアミン
交感神経を活性化させるホルモン。交感神経が活発になるため、エネルギーを送り込むことが必要。
成長ホルモン
体を成長させるホルモン。体を大きくするにはやっぱりエネルギーが必要。
グルカゴン
糖が必要な時に血液中に送り込むホルモン
血糖値を下げるホルモン(エネルギーを使うために取り込む、または保管庫にしまい込む)
インスリン
血液中のエネルギーを保管庫である肝臓や脂肪にしまい込む。また筋や脂肪はエネルギーとしても糖を取り込む。
そう!そういうと思ってわざと挙げてみました。笑笑
ただ、元気になるために糖が必要という機序が分かれば全部覚える必要はないです。
ここで一つだけ覚えてほしいのは、血糖を体にしまい込む、すなわち血糖を下げるホルモンは”インスリンだけ”なのです。
ちなみにこれら2種類のホルモン達は、アクセルとブレーキのようにどちらか一方が働くのではなく、コーヒーとミルクを混ぜ合わせたカフェオレのような形で混在していると考えてください。
糖尿病の類型とインスリン
お聞きになったことはあると思いますが、糖尿病には1型と2型があります。
一般に僕たち理学療法士が関わる臨床で出会う糖尿病はほとんどが2型です。
この違いは様々ありますが、おおざっぱにいえばインスリンが体から出るか、出ないかの違いです。
▶︎1型糖尿病・・・インスリンが出ないもの(注
▶︎2型糖尿病・・・インスリンがちょっとでも出るもの
※注)1型糖尿病でも発症初期はインスリンが出ますが徐々に出せなくなります。
したがって1型糖尿病ではインスリンが必須となります。
このため子供の頃に発症することが多い1型糖尿病ではインスリンとの付き合い方が大事になってくるのです(この話は療養指導のことになるので詳細は省きます)。
一方で皆さんが日頃出会う患者さんはほとんどが2型糖尿病です。
インスリンを打つ人や打たない人が混在するのはインスリンの出る量がそれぞれで異なることからこのように混在するのです(インスリン強化療法という一時的にインスリンを集中的に使用することもあるので出る量だけに依存するわけではないですが・・・)。
どの類型にしてもインスリンは体内にエネルギーを取り込むために必要なものであり、非常に大切なものです。
特に1型糖尿病ではインスリンを作り出せないですから、インスリンによって栄養を摂取できないことは直接死につながります。
インスリンとリハビリテーション
上記ではインスリンの役割と効果をお話ししてきました。
繰り返しになりますが、インスリンはエネルギーとして筋などがとりこむことや保管庫にしまいこむことがその役割ですので、このホルモンが分泌されると結果として血管中の血糖値が下がります。
前回の記事で高血糖は知らず知らずのうちに血管壁を傷つけてしまうのでよくないことだと記載しました。
このため、インスリンが血糖値を下げてくれることはとてもよいことなのです。
しかし、体外からのインスリン投与量が多すぎる場合、またはインスリンが効きすぎる場合は逆に低血糖という大きな問題を引き起こします。
特に、私たち、リハビリテーションに関わる仕事は患者さんに運動をしてもらうことです。
つまりはエネルギーを使ってもらうことが仕事ですから、自然と血糖値は下がります。
インスリンを摂取している方の運動療法時には、インスリンの血糖降下作用に加え、運動による血糖降下作用も加わることから、低血糖という状態を引き起こしてしまいやすくなる点に注意が必要です。
この低血糖というのは、実は高血糖状態が続くことよりもたちが悪く、認知症発祥のリスクが向上すると言われています。
またエネルギーが体にまわっていない、すなわち足りない状態なので意識が消失したり、ひどいケースでは命に関わることもあります。
以上のことから、インスリン投与中の患者さんにリハビリテーションを行う際には、以下の点にしっかりと注意を払って実施することが大切です。
インスリン投与中の患者さんにリハビリテーションを行う際のポイント
▶︎運動前の血糖測定をできるだけして下さい
血糖値100mg/dl以下であれば、1単位(80kcal)程度補食してから実施(「科学的根拠に基づく運動療法ガイドライン」より引用)
※注)70mg/dl以下はすでに低血糖ですので運動するべきではないです。
▶︎運動後にも筋へのブドウ糖取り込みは継続します。このため、長時間経ってから低血糖が起こることがあります(場合によっては夜間に)。このため、激しい運動後は低血糖出現に注意(病棟看護師に連絡しておくとよいです)。
▶︎少なくなってきたとは思いますが、インスリン注射を四肢にする人がいます。運動を行う際にはインスリン注射は四肢を避けて腹壁にするよう指導してください。
まとめ
少し長くなりましたが、今回のお話をまとめます。
▶︎血糖値を上げるのは4種類のホルモンであり、下げるのはインスリンのみ。
▶︎1型糖尿病はインスリン投与が必須であり、2型糖尿病では必ずしも必須ではなく、その人の状態による。
▶︎インスリン投与中の患者への運動指示は低血糖に特に注意する必要がある。
最後までお読み頂きありがとうございました。
内科Drや看護師さんから
「この人、インスリン打ってるから気をつけてね」
なんて言われることがあると思います。
そんな時に今回の内容を少しでも思い出してもらえると、皆さんのお役にたてるのではないかな、なんて思います。
患者さんからの信頼はもちろんですが、同僚からの信頼も大事です。
リハビリ関係者が代謝の事を知ってることを分かっている内科Drや看護師はまだまだ少ないです。
少しでも理解できていると彼らの信頼も得られやすくなりますよ。
充実の“note”で飛躍的に臨床技術をアップ
CLINICIANSの公式noteでは、ブログの何倍もさらに有用な情報を提供しています。“今すぐ臨床で活用できる知識と技術”はこちらでご覧ください!
実践!ゼロから学べる腰痛治療マガジン
腰痛治療が苦手なセラピストは非常に多く、以前のTwitterアンケート(回答数約350名)では8割以上の方が困っている、35%はその場しのぎの治療を行っているということでしたが、本コンテンツはそんな問題を解決すべく、CLINICIANSの中でも腰痛治療が得意なセラピスト(理学療法士)4名が腰痛に特化した機能解剖・評価・治療・EBMなどを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する整形疾患は勿論、女性特有の腰痛からアスリートまで、様々な腰痛治療に対応できる内容!臨床を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、腰痛治療が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる足マガジン
本コンテンツでは、ベテランの足の専門セラピスト(理学療法士)6名が足に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する足の疾患は勿論、小児からアスリートまで幅広い足の臨床、エコー知見などから足を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、足が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!
実践!ゼロから学べる肩肘マガジン
本noteマガジンはCLINICIANSメンバーもみんな認めるベテランの肩肘治療のスペシャリスト(理学療法士)5名が肩肘の治療特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術として提供してくれます。普段エコーなどを使って見えないところを見ながら治療を展開している凄腕セラピストが噛み砕いてゼロから深いところまで教えてくれるので肩肘の治療が苦手なセラピストも必見のマガジンです!
YouTube動画で“楽しく学ぶ”
実技、講義形式、音声形式などのセラピストの日々の臨床にダイレクトに役立つコンテンツが無料で学べるCLINICIANS公式Youtubeチャンネルです。EBMが重要視される中、それに遅れを取らず臨床家が飛躍的に加速していくためにはEBMの実践が不可欠。そんな問題を少しでも解決するためにこのチャンネルが作られました。将来的に大学や講習会のような講義が受けられるようになります。チャンネル登録でぜひご活用ください♪登録しておくと新規動画をアップした時の見逃しがなくなりますよ!
※登録しておくと新規動画をアップした時に通知が表示されます。
なお、一般の方向けのチャンネルも作りました!こちらでは専門家も勉強になる体のケアやパフォーマンスアップに関する動画を無料で公開していますので合わせてチャンネル登録を!