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臨床で役立つ認知機能評価 ~長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の評価方法と解釈のポイント(カットオフ値掲載)~

“たけ”
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こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

担当患者を評価する際、身体機能とあわせて認知機能の評価も行われると思います。

しかし、評価をするとき、意外と検査者によってやり方が違ったり、解釈が違ったりすることがあると思いませんか?

同じ評価を行なっても、やり方や解釈が異なればその評価の有用性は低くなることもあります。

そこで、今回は認知機能のスクリーニング検査として広く用いられている評価方法について掲載します。 

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)作成までの経緯

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS)は1974年に長谷川らによって作成され、認知症のスクリーニングテストとして最も歴史が古く、病院や施設など幅広い範囲で用いられてきました。

HDS作成後年数が経過し、質問項目が時代背景と適合していない、質問項目が統一性にかけるなどの問題点が指摘されるようになり、1991年に加藤らが認知症の鑑別力のより高いスケールの作成を目的に、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)を作成しました。

改訂にあたり痴呆審査スケールの条件として、以下の6点が挙げられました。

①出来るだけ短時間で施行できること
②回答には制限時間のないことが望ましい
③動作性テストは、老人には不向きであること
④可能なかぎり視覚的テストは避けること
⑤集団的テストではなく、個別的テストであること
⑥知的機能の正常な老人なら回答できるが、痴呆性老人には回答が困難な設問群であること

設問の中からは模写や書字などの動作性検査を排除された形式となっています。

また、設問はHDSから計5項目を削除し、新たに「3つの言葉の記銘」「3つの言葉の遅延再生」「言葉の流暢性」の3項目が追加されました。

HDS-Rとしての設問は、時間・場所の見当識、言語性の即時・遅延記憶、視覚性記憶、計算、逆唱、語の流暢性の9つの下位項目からなります。

HDS-Rの実施方法と採点法について

問題1:「年齢」

満年齢が正確に言えれば1点を与え、2年までの誤差は正答とみなす。

問題2:「日時の見当識」

「今日は何年の何月何日ですか?」と問う。続けて聞くのではなく、「今日は何月何日ですか?」と聞き、「何曜日でしょう」「今年は何年ですか?」とゆっくり別々に聞いてもよい。年・月・日・曜日それぞれの正答に対して各1点を与える。年については、西暦でも正解とする。

問題3:「場所の見当識」

「私たちがいまいるところはどこですか?」と問う。被検者が自発的に答えられれば2点を与える。病院名や施設名、住所などは言えなくてもよく、現在いる場所がどういう場所なのかが本質的にとらえられていればよい。もし正答が出なかった場合には約5秒おいてから「ここは病院ですか?家ですか?それとも施設ですか?」と問い、正しく選択できれば1点を与える。

問題4:「3つの言葉の記銘」

「これから言う3つの言葉を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください」と教示する。3つの言葉はゆっくりと区切って発音し、3つ言い終わったときに繰り返して言ってもらう。使用する言葉は2系列あるため、いずれか1つの系列を選択して使用する。1つの言葉に対して各1点を与える。もし正解が出ない場合、正答の数を採点した後に正しい答えを教え、覚えてもらう。もし3回以上言っても覚えられない場合にはそこで打ち切り、問題7の「言葉の遅延再生」の項目から覚えられなかった言葉を除外する。

問題5:「計算」

100から順に7を引かせる問題。「100引く7はいくつですか?」「それからまた7を引くといくつになるでしょう?」と問う。「93から7を引くと?」というように検査者が最初の引き算の答えを繰り返し言ってはならない各正答に対して1点を与えるが、最初の引き算の答えが誤ったものであった場合はそこで中止し、次の問題へ進む。

問題6:「数字の逆唱」

「私がこれから言う数字を逆から言ってください」と教示する。数字は続けて言うのではなくゆっくりと約1秒ぐらいの間隔をおいて提示し、言い終わったところで逆から言ってもらう。正解に対して各1点を与えるが、3桁の逆唱に失敗した場合にはそこで中止し、次の問題に進む。

問題7:「3つの言葉の遅延再生」

「先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください」と教示する。3つの言葉の中で自発的に答えられた者に対しては各2点を与える。もし答えられない言葉があった場合には少し間隔をおいてからヒントを与え、正解が言えれば1点を与える。たとえば、「桜」と「電車」が想起で着なかった場合、「1つは植物でしたね」というヒントを与え、正解が言えれば1点、その後に「もう1つは乗り物がありましたね」というヒントを与える。ヒントは被験者の反応を見ながら1つずつ提示するもので、「植物と乗り物がありましたね」というように続けてヒントを出してはならない

問題8:「5つの物品記銘」

あらかじめ用意した5つの物品を1つずつ名前を言いながら並べて見せ、良く覚えるように教示する。次にそれらを隠して「思い出す順番はどうでもよいですが、今ここになにがありましたか?」とたずねる。物品はとくに指定はないが、「時計」「鍵」「タバコ」「ペン」「硬貨」など相互に無関係なものを用いる。正答に対してそれぞれ1点を与える。

問題9:「野菜の名前:言語の流暢性」

「知っている野菜の名前を出来るだけたくさん言ってみてください」と教示する。具体的な野菜の名前を検査用紙の記入欄に記入し、重複したものを採点しないように注意する。この問題は言語の流暢性をみる質問であるため、途中で言葉に詰まり約10秒程度待っても次の野菜の名前がでてこない場合にはそこで打ち切る。採点は5個までは0点であり、以後6個=1点、7個=2点、8個=3点、9個=4点、10個=5点、となる。

HDS-Rの結果の解釈と注意点について

HDS-Rにはカットオフポイントはあっても、重症度区分は設定されていません。

その理由をざっくり言うと、重症度区分を設けることで誤った認識を生じさせないためです。詳しくは最下部の参考資料に掲載があります。

HDS-Rのカットオフポントは20/21に設定されています。

HDS-Rカットオフ値

20/21

これは、カットオフポイントを20/21に設定した場合、感度が0.90、特異度が0.82となり、検出率が最も高くなることが明らかとなったためです。

従来のHDSはカットオフポイントが24/25の場合に、感度が0.83、特異度が0.82であったそうです。

次に重症度区分に関してですが、先ほど述べたように基本的に設定されていません。

ただし、原著ではHDS-R作成時の対象者の認知障害の重症度をGDS(Global Deterioration Scale)を用いて評価し、その結果から「非痴呆」「軽度」「中等度」「やや高度」「非常に高度」の5段階に区分しています。

更にその区分ごとのHDS-Rの得点結果を、重症度別平均得点として出しており、各群間の有意差(p>0.01)も認められています。

そのため、臨床での検査の得点を判断する際に参考値として活用してもいいかもしれません。

ただし、得点だけで認知症であると判断するのは危険ですので、多角的・総合的に評価をすることをお勧めします。

一般的に知能検査は、教育暦との相関が高いとされていますが、HDS-Rにおいては「得点と年齢」「得点と教育年数」で、ほとんど相関が認められていないとされています。

これは、HDS-Rが加齢や教育年数に影響を受けにくい検査であると言い換えることもできます。

まとめ

ここまで話してきたように、HDS-Rは動作性検査を排除して記憶・見当識項目に重きを置いた評価スケールになっています。

そのため、記憶や見当識に影響を受けやすいアルツハイマー型認知症の患者では、検査結果が低く出やすい傾向にあります。

その反面、レビー小体型認知症やパーキンソン病型認知症の患者では、検査結果が高く出る場合もあります

よって、ひとつの認知機能検査の結果だけで、また1回の検査結果だけで認知機能低下の有無を判断するのではなく、患者の症状や検査の特徴などを考慮して、経時的に評価した結果をもとに、総合的に判断していく必要があると思います。

参考資料

1)加藤伸司,下垣 光,他:改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の作成.老年精神医学雑誌.1991;11:1339-1347.

今回、認知機能検査のHDS-Rについてお話をしました。認知機能検査に特徴があることがご理解いただけたかと思いますが、臨床現場で評価を行う際には、患者の状態に適したものを選択する必要があります。

今回のお話がその一助になれば幸いです。

本日は以上で終わりです。

最後までお読み頂きありがとうございました!

ABOUT ME
たけ
たけ
理学療法士&ピラティスインストラクターをメインに姿勢・パフォーマンス改善のプロとして活動中! 過去には世界で最も患者が多い病院、某大学病院で超急性期のリハビリテーションに貢献。その他にも認定脳卒中、呼吸療法認定士、ガンリハなどの資格を保有。 超急性期から障害予防までの多岐にわたる分野の記事を執筆中!
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