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介護予防について -リハビリ専門職として何ができるか-

こんにちは、cascade (@cascade1510 です!

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この地域包括ケアシステムの基本構造の5項目、

「住まい」、「医療」、「介護」、「予防」、「生活支援」

の5つの中で、今回は「予防」つまり介護予防についての話です。

 

この介護予防のところがリハビリ専門職(理学療法士PT、作業療法士OT、言語聴覚士ST)のチカラの見せ所です。

そして、国からもリハビリ専門職に対して、大いに期待されている領域です。

 

なぜ介護予防が必要か

まず「なぜ介護予防が必要か」という問いに対して考えてみましょう。

どうでしょう。きちんと説明できるでしょうか。

それは、一言で言ってしまうと、私は今後の医療・介護の負担を減らすためだと思っています。

この「負担」というのは、患者さんやその家族にとっての精神的・身体的負担もそうですが、お金の面での負担も含んでいます。

もし病気になってしまって要介護状態が進むと、もちろん医療費もかさみますし、介護保険の負担量も増えていきます。

そしてこの「負担が増える」というのは国の側からしても同じくいえます

なので、介護予防をすることで患者さんの側の負担を減らすと同時に国の側の負担を減らしていこう、というものです。

 

もう少し詳しく説明すると…

まず患者さんの側としては、各個人がなるべく病気にならないように健康な状態をキープして病気になるのをなるべく先延ばしにしていくこと、いわゆる「健康寿命を延ばす」ということですね。

この「健康寿命を延ばす」ことで、病院などに行く頻度も少なく、医療保険などを使う頻度も少なくなるので、結果的に国の余分なお金の支出を抑えることにもつながっていくわけです。

 

では、病気にならないよう介護予防していくためにはいったい何をしていったらいいか??

大きく、2つあると思います。

 

介護予防のためにできること

介護予防のためにできること。2つあると言いました。

まず1つは薬や栄養の力を使うことですね。

 

たとえば、脳卒中や心筋梗塞など血管障害の原因の1つとされている「糖尿病」。
この糖尿病をしっかり薬や栄養でコントロールすることで、より重篤な病気になって要介護状態となるのを防ぐ。

これも1つの予防です。

この薬剤や食事については薬剤師や看護師さん、管理栄養士さんなどが管理しながら行っていきます。

この1つめについては今回、本筋から外れるので詳細は割愛します。

 

 

そして2つ目。こちらがリハビリ専門職として大いに関係するところ。

運動です。

介護予防のために大切なことはやはりなんといっても運動です。

足腰を鍛えて転倒予防を行ったり、体操など体を動かすことで心肺機能が鍛えられたりするという身体機能面だけでなく、脂肪の燃焼によって内蔵脂肪や血中の中性脂肪やコレステロールを抑え、万病の元となる高脂血しょうや高血圧、糖尿病の改善や予防にもなるため、運動は万能の薬とまで言われています。

 

さらには、運動が精神面や認知症にも効果があると言われてきています。

そして、実際に介護予防の取り組みを行うことによって、要介護に認定される人の割合が減るなど、効果が現れてきている都道府県や地方自治体もあります。

 

たとえば、大阪府大東市では、地域での自治会等が主体となって体操教室などを週に一回程度自主的に行われています。

ここでの参加者の割合は全国平均を大きく上回っており約10%にもなっています。

その結果、大東市全体での要介護認定率が、体操始める前と比べて下がるという結果になっています。

 

また、岡山県総社市では、一般の高齢者も要介護または要支援の高齢者も一緒に集えるような住民主体の通いの場があります。通の場は主に公会堂や個人の家が中心ですが、そこでは主に体操などを行いながら週一回程度定期的に開催されています。このような徒歩で通えるような場所が100会場以上も作られています。

ここでも全体の参加率は10%近くあり、その結果、要介護認定率が下がっていっています。

 

このような例は、全国の中でもほんの一部成功した例であって、全体としてはなかなかうまくいかないことが多いようです。

一部の成功例を真似しようとしてもなかなかほかの土地では風土の違いなどもあり同じように成功はしないようです。

そんな感じで、基本的には単に運動をしていきましょう、という取り組みはなかなか継続しにくいのが現状となっていました。

 

介護予防についての過去の失敗

実は介護予防については10年以上も前から言われ続けてきたことです。

しかしながら、現在あまり進んでいない状態です。

どうしてでしょう?

 

実は1度失敗していたんです。

 

これを読んでいるみなさんは一次予防事業」「二次予防事業といってピンときますでしょうか。

ケアマネジャーの資格を持っている方は知っているかと思います。

昔(といってもつい最近まで)の介護予防事業は「一次予防事業」と「二次予防事業」とに分かれるような区分わけになっていました。

 

 

一次予防事業はいわゆる一般の高齢者全般を対象とした介護予防事業です。介護保険の認定がおりているかに関わらず、全ての65歳以上の方が対象です。

そして二次予防事業は、要支援や要介護認定とならなかった比較的健康な人の中でも筋力が低下していて転倒リスクが高いような人を基本チェックリストによって洗い出し、その人たち(「特定高齢者」と言われていましたが「二次予防事業の対象者」と名前が変わっています)に対して、転倒予防教室を開いたりして要介護状態となるリスクを減らす、という試みが全国的に行われました。

しかしこの二次予防事業として行われた転倒予防教室は実際には参加者が平均として全体の0.5%ほどと少なく、また継続して参加する人も少ないのが現状だったようです。

ある講演で「要するに失敗だった」と厚生労働省の人も話していたぐらいです。

ただ体操だけ、と言う多様性のなさが失敗の原因だったとも言われます。

 

ではこの失敗を踏まえてどうしたら良いか?

 

失敗からわかること

上で挙げた二次予防事業などの失敗に対してどのように変えていくか。

厚生労働省は方針を新たに打ち出しています。

キーワードは、活動参加です。

この「活動」と「参加」については皆さんご存知のICF(国際生活機能分類)の中にありますね。

 

厚生労働省のホームページには以下のような掲載があります。

生活機能(※)の低下した高齢者に対しては、リハビリテーションの理念を踏まえて、「心身機能」「活動」「参加」 のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要であり、単に高齢者の運動機能や栄養状態といった心身機 能の改善だけを目指すものではなく、日常生活の活動を高め、家庭や社会への参加を促し、それによって一人ひとりの生きがいや自己実現のための取組を支援して、QOLの向上を目指すものである。 

 

つまり運動機能を向上させるための体操に限らず、もっと範囲を広げて、高齢者のみんなが足を運んで何か楽しいことをする。

そういった通いの場所を増やすことで結果的に介護予防につながる、といった方針に変わっています。

 

現在、介護保険の仕組みの中では、要介護者や要支援者に対する「介護保険給付」のほかに、地域支援事業というものがあります。

この「地域支援事業」の中には「一般介護予防事業」と「介護予防・日常生活支援総合事業」というものがあります(図1)。

まず、一般介護予防事業についてです。

これは、要介護や要支援の認定を受けていない一般の高齢者に対して、介護予防をしていこうと言う事業です。

 

その中に、地域介護予防活動支援事業というものがあります(ふたたび図1)。

 

これは地域による住民主体の介護予防活動、これを支援していこうという事業です。

これは何をするのか?

何でもいいようです。

 

 

たとえば地域のリーダーが、「体操を毎週火曜日にやっていきましょう」といった取り組みに対して、支援をしていきましょう、という事業です。

最近では地元の人たちが集まって早朝にグランドゴルフなどをされている光景をよく見かけるかと思いますが、そのような集まりに対してもやり方や条件によっては地域介護予防活動支援事業に当てはまると思っています。

申請をすることで補助金を受け取ることも可能かと思います。

こういった住民主体の介護予防活動を支援していきましょうと言うのが地域介護予防活動支援事業です。

そして地域リハビリテーション活動支援事業(みたび図1)。

 

これは先程の地域住民での介護予防の取り組み、これを強化するために、リハビリテーション専門職が中心となって促進していきましょうと言う取り組みに対して支援を行う事業です。

たとえばこれまで地域で開催されてきた「転倒予防教室」などについて、市町村や、地域包括支援センターだけで行っていくには、知識も不足しているし、なかなか推進していくのにも時間がかかってしまいます。

そこで、リハビリ専門職の知識や経験などを借りることによって介護予防を進めていきたい。

そしてそういった取り組みに対して支援をしていきましょうという事業です。

 

ここはやはり我々リハビリテーション専門職の腕の見せ所ではないでしょうか!

もちろん、姿勢制御や運動のプロとして取り組んでいく必要はありますが、介護予防を実現するためには、なにも体操をすることが必要だということだけではないのでは?

 

そのヒントが上で述べた

“「心身機能」「活動」「参加」 のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要”

という国の方針にも表れています。

より良い介護予防の方法を探していくこと、これもPT、OTといったセラピストの大切な課題かもしれません。

 

まとめ

・「なぜ介護予防が必要か」という問いに対しては、「今後の医療・介護の負担を減らすため」。

・介護予防していくために必要なものは「薬や栄養」と「運動」リハ職としては特に「運動」に焦点をあてた取り組みがしやすい。

・転倒予防教室は過去に失敗していた。これを繰り返さないことが大事。

・「心身機能」「活動」「参加」 のそれぞれの要素にバランスよく働きかけることが重要

 

参考資料

1)厚生労働省:地域の実情に応じた効果的・効率的な介護予防の取組事例.(2017年6月20日 アクセス)
2)厚生労働省:介護予防・日常生活支援総合事業.(2017年6月20日 アクセス)
3)厚生労働省:これからの介護予防.(2017年6月20日 アクセス)

 

以上で終わりです。

今回、地域包括ケアシステムの充実にとって欠かせない「介護予防」についての話を、国の方針とともに介護予防事業などの制度の話や、そこから我々リハビリ専門職として何ができるかといったお話をしました。

まだまだ概要の話なので次回以降に具体的な例や方策について話していけたらと思います。

 

 

本日は以上で終わります。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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