その他

在宅の入浴動作-どう評価するか-

入浴の福祉用具

こんにちは、cascade @cascade1510 )です!

私はこれまでに約10年間、訪問リハビリテーションの業務を行ってきました。

そして、訪問リハビリテーションに関する記事も書かせていただいています。

訪問リハビリは効果があるのか⁈〜論文ベースのガイドラインや国の調査から読み解く〜訪問リハビリテーションは実際のところ効果・エビデンスがあるのか知りたいですか?本記事では、論文ベースのガイドラインや国の調査から訪問リハビリって効果があるのか⁈といったことについて丁寧に解説しています。そして、実際に臨床に携わる私たちはこれをどのように利用していくかをお伝えしています。地域リハに携わる方は必見です。...

実際に月に平均約100件の訪問で、これまでに延べ約1万件以上の数で対象者のご自宅を訪問して生活環境を見させていただいてきたわけですが、その在宅での生活の中で最も重要度が高いといっても過言ではないのが、入浴についてです。

我々が普段何気なく行っている入浴動作ですが、実はトイレ動作や行為動作など他の日常生活動作(ADL)と比べても、高い筋力や高いバランス能力が要求されます

こういった理由から、介護保険で「要介護度3」などの認定をおこなう市町村の介護保険認定調査員が要介護度を判定するときに重視する指標として、この入浴動作が使われているのではないか、と私は勝手に思っています笑。

入浴動作を行っているときの介助量はどのくらいか

手すりや浴槽内などの福祉用具はどうか

そもそも浴槽に入っているのか、それともシャワー浴しかできないのか

このような事がらが要介護度に大きく影響するはずです。

 

浴室内の福祉用具・自助具

理学療法士・作業療法士などの我々セラピストとしては、その入浴動作の動作確認や姿勢評価はしておく必要があります。

今回はその評価方法や注意すべきポイント等について書いてみました。

 

評価のポイント

入浴動作を評価するにあたって、まずは入浴の流れを確認しておきましょう。

入浴の流れ

  1. 浴室までの移動
  2. 脱衣
  3. イス(シャワーチェア)に座る
  4. 洗体
  5. 浴槽へのまたぎ
  6. 浴槽内の姿勢
  7. 浴槽外へのまたぎ
  8. 体を流す
  9. 体を拭く
  10. 着衣
  11. 浴室からの移動

と、このように入浴には実に多くの過程があることがわかります。

理学療法士・作業療法士などのセラピストとしては、これらの過程すべてについてチェックする必要があります。

それぞれの過程において、

●姿勢はどのようになっているか

動作はどのようになっているか

なぜその姿勢や動作になっているのか

介助者はどのようにおこなっているか

住居などの環境はどうなっているか

どんな危険性(リスク)があるか

そのリスクを回避したり軽減する方法はあるか

などをすべて考えていく必要があります。

では、それぞれについてもう少し細かく見ていきましょう!

姿勢はどのようになっているか

まず「姿勢」についてですが、入浴に関わる一連の動作の中で上記のように分割したそれぞれのシーンに対して姿勢をチェックしていきます。

例えば

  • シャワーチェアに座っているときの姿勢
  • シャワーを浴びているときの姿勢
  • 浴槽につかっているときの姿勢

等についてチェックしていきます。

これらの姿勢ひとつひとつが、次の動作につながっていきます。

これらの姿勢の評価については、ある程度その人の普段の動作から予測することも可能ですが、実際に入浴に関する動作をやってもらうとより詳細に姿勢を観察することができます。

動作はどのようになっているか

次に「動作についてのチェック」です。

この動作については特に、実際の入浴動作をやってもらう方が良いです。

在宅でリハビリをおこなう際などに、浴槽にお湯を溜めない状態でいいので、危なくない程度に実際に普段おこなっている動作と同じ動作をしてもらうとよいです。

例えば、「浴室に入ってからシャワーチェアに座るまで」の動作。

この動作の際に不自然な動きはないか。不安定な動きをしていないか、などを確認したりします。

浴槽をまたぐ時の動作については特に注意が必要です。

●手すりをしっかりとした体勢で持っているか。

●どちらの足からまたいでいるか。

●ふらつきなどはないか。

など安定性・安全性についてチェックしていきます。

なぜその姿勢や動作になっているのか

上記の姿勢や動作の評価をおこなうのと並行して、その姿勢や動作になっている原因を探っていきます。

つまり、「なぜそのような姿勢や動作になってしまっているのか」ということを考察します。

  • 筋力低下が問題なのか。
  • 可動域制限か。
  • 痛みによるものなのか。
  • 失認や失行などの高次脳機能障害があるのか。
  • 視力に問題があるのか。
  • 恐怖感など、本人のメンタル面に問題があるのか。
  • 浴室内の空間など家屋状態に原因があるのか。

このような原因を総合的に探ることで、それを補ったり対処する可能性を探っていくことができます。

すでにある程度のスクリーニング評価を行っているはずなので、それができるはずです。

介助者はどのように介助しているか

家族やヘルパーさんなどが実際に入浴を介助している場合、その「介助方法はどのようにおこなっているのか」も評価の対象です。

  • どのような姿勢で行っているか。
  • 危なくない動作で行えているか。
  • 介助者の熟練度、つまりどれだけ慣れているか。
  • 介助者のパーソナリティーやメンタリティーはどうか。

これらを評価することで、介助者に対してのアドバイスをすることができ、よりスムーズに入浴動作が可能になることもあります。

住居や浴室などの環境はどうなっているか

本人の住んでいる住居そのものの「家屋状況や動線」についても評価は必要です。

  • 車いすで浴室に向かうとした場合、安全に移動できる環境にあるか。
  • 脱衣所と洗い場の段差などはあるか。
  • 浴槽の形や縁の高さや深さはどのくらいか。
  • 浴室内の床面はどのような素材か。滑りやすいのか。
  • 排水の水はけはどうか。

これら家屋状況把握することで、場合によっては手すりの設置や住宅改修等の必要性も考慮に入れることができます。

どんな危険性(リスク)があるか

上記の姿勢や動作や環境状況などから得られた情報を元に、これらによって「どのようなリスクがあるか」を考えます。

重大な事故につながりかねない入浴動作ですので、起こり得る全てのリスクについて検討する必要はあります。

そのリスクを回避したり軽減する方法はあるか

 

「どんなリスクがあるか」を評価したら次は、「そのリスクを回避したり軽減する方法はあるか」を考えます。

たとえば筋力低下が原因であれば、その筋力を強化することで動作の安定性を図れることもあります。

福祉用具の導入や場合によっては住宅改修についても検討する必要があるかもしれません。

ただし、大きな費用が発生する可能性もあるので、費用面についても十分に考慮し、自己負担で購入するのか、買い物券や助成金を充当するのか、なども考慮に入れておく必要があります。

まとめ

今回は日常生活動作のセルフケアの中でも最も重要と思われる「入浴」について、その評価方法や注意すべきポイント等について書いてみました。

次回はこの入浴動作を助ける環境面、さしずめ福祉用具や福祉機器についてまとめていきたいと思いますのでお楽しみに!

最後までお読みいただきありがとうございました!

 

ABOUT ME
cascade
cascade
2020年4月より大学教員/Physical Therapist /Ph.D in rehabilitation/ 大阪大学理学部高分子科学→修士(M.S.)→Teijin Limited研究職→大学リハ学科→博士/介護予防/訪問リハ/研究や国試の勉強などを発信 理学療法士として何ができるか、理学療法士の枠にこだわらずに何ができるか、ワクワクするような新たな可能性を追い求めていきましょう!
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