整形外科

人工膝関節全置換術の基礎〜耐用年数/適応/CR型・CS型・PS型インプラントの違い

こんにちは、理学療法士のたくみ(@TakumiRodriguesです!

変形性膝関節症患者が増加している今、それに伴って人工膝関節全置換術(以下、TKA)の手術件数も増加の一途を辿ることが予想されます

そこで今回は、人工膝関節全置換術の基礎〜耐用年数/適応/CR型・CS型・PS型インプラントの違いについて簡単に解説します。

TKAについて理解し、リハビリに活かすことのできる情報をお伝えできれば幸いです。

 

人工膝関節全置換術(TKA)とは

TKAは変性した膝関節を人工物に置換する手術のことです。

TKAの2013年の手術件数は82,000となっています。

これのデータは少し古いですが、現在では更に手術件数が増加しており、それに伴いリハビリテーションの件数も急増しています。

セラピストのTKAに対する理解が必要不可欠となってきております。

 

手術方法

手術方法は、膝関節の内側と外側および膝蓋大腿関節の3関節を人工関節に置換します

人工関節の構成部品の基本は大腿骨コンポーネント、脛骨ベースプレート、インサートの3種類で、膝蓋骨を置換する場合は膝蓋骨コンポーネントを使用します。

 

インプラントの詳細

もう少しパーツを見ていくと、

大腿骨コンポーネントはその名の通り、大腿骨側に設置するインプラントです。

CR型やPS型によって形状が異なりますが、骨に接触する内側面の形状はどのメーカーもほとんど差がないと言われています。

脛骨ベースプレートもその名の通り脛骨側に設置されるインプラントです。どのメーカーも形状は同じものを用いています。

インサートは大腿骨コンポーネントと脛骨ベースプレートの間に設置され、インプラントの関節面となる部分です。

 

膝蓋骨コンポーネントは膝蓋骨に取り付けられます。膝蓋骨の変性がある場合や膝蓋大腿関節での痛みが強い症例は膝蓋骨が置換されています。膝蓋骨の骨棘の除去は行う場合がほとんどですが、膝蓋骨置換を行わない医師も少なくありません。

実際に私が以前勤めていた病院の医師も、膝蓋骨置換施行については行うこともあれば、行わないこともあるという現状でした。

 

耐用年数と適応年齢

TKAの問題点であるサーフェイスの摩耗やインプラントの緩みは、ポリエチレンの製造法の進歩により改善され、20年程度の長期成績は期待できるため、高齢者の平均寿命を考慮すると70歳程度が適応です。

“たけ”
“たけ”
この情報は患者さんから聞かれることが多いので覚えておくといいですね!ただ、伝えても良いかどうかは病院の方針で判断した方が良いと思います。

 

TKAの目的

TKAの目的は以下の通りです。

末期の膝OAで高度に変形した関節を人工関節に置換し、膝関節の疼痛、機能の改善を図ること

リハビリをする上で、この目的は絶対に忘れてはいけません。

なぜ患者が手術したのかをしっかりと理解して下さい。

ただ膝が曲がって、伸びればいいという訳ではありません。

私は、病院によって様々なプロトコルがあり、術後のリハビリが作業化してしまっている印象を持っています。

人それぞれ主訴は違って、セラピストのアプローチも人それぞれ違うはずです。

プロトコル通りのリハビリは素晴らしいことですが、少し寂しい気がするので、TKAの基礎をしっかりと理解し、一歩上のリハビリを提供していきましょう!

“たけ”
“たけ”
おっしゃれる通りですね。僕も別の視点からこのTKAを行う目的はしっかりと覚えておいた方が良いと思います。これについては異論がある方がおられると思うので僕の考えとしてご理解いただきたですが、TKAをするということは痛みは改善するということです。

僕は3箇所ぐらいのTKAのopeをしている急性期病院で多くの症例を見させていただきましたが、今までいた病院でTKA術後に術前と同じような関節直近の疼痛が出ることはほぼありませんでした(※通常の歩行に限定しマイナートラブルを除いて考えると)。

TKAをするということは疼痛は無くなるので術前と同じような機序の疼痛は術後の制限因子としてはそもそも考えなくて良いということも考えられませんか?それに由来する問題は術後にほっておいても改善していきます。ただ、これはリハをしなくても良いというわけではないです・・手術侵襲の影響や病前からの不良アライメントで筋・筋膜の疼痛・癒着による疼痛が発生することはありますのでそのところは要チェックですね。リハビリテーションプラン・予測を立てる上でどんな問題はなくなって、どんな問題が出てくるのかということがここからもわかってくるので個人的に重要だと思います。

 

インプラントの種類

TKAは、paradoxical motion(奇異性運動)を引き起こしたり、中間屈曲位の安定性を十分に得ることができないという特徴を持っています。

それぞれの機種で、屈曲・伸展の回転軸や回旋の許容性が異なり、術中の操作も大幅に変わり、PTとしてもこの部分の理解をしているか、していないかで介入効果に差が生まれると思います。

インプラントの種類は術後リハビリにおいてかなり重要であり、患者のインプラントの種類は医師への確認や、カルテ情報よりしっかりと収集しておく必要があります。

CR型(Cruciate – Retaining)

このインプラントのメリットは、前十字靭帯(ACL)は切除するものの、後十字靭帯(PCL)を温存しているということです。

PCLが温存されていることは、

後方の安定性は保たれておりroll back機構(大腿骨が後方へ転がりながら屈曲が起こる)が残存しているということです。

また、靭帯が温存されているため屈曲位や回旋時の安定性が高く、固有感覚も温存されます

PS型(Posterior-Stabilized)

このインプラントではACLPCL共に温存しません

前後安定性およびroll backはサーフェイスのpost-cam機構によって得ることができる仕組みとなっています。

post-cam機構とは、

脛骨上の突起(post)が大腿骨側のcamに入ることにより関節の安定性と人工的なroll backを誘発する機構です。

 

また同様に脛骨の後方移動に対して物理的な安定性をつくっています。

術前の靭帯の状態を受けないので、再現性の高い運動パターンを獲得できます。

このpost-cam機構は膝屈曲約60°以上で作動します。つまり、60°以下ではPCLの代償機能が再現されないため不安定性が生じることになります。

なお、大腿骨からの荷重はpost-cam機構を通じてそのまま脛骨へ伝達されるためpost-cam機構のポリエチレン摩耗や骨・インプラント間の剪断力は増大すると言われています。

CS型(Cruciate Substituting)

上述するCR型とPS型のデメリットを解決するアプローチとして作られたのがこのCS型です。

このインプラントはサーフェイス自体の深いリップ形状によって前後安定性を獲得できます。

CS型はACLを切除しますが、PCLは切除か温存の選択が可能です。

これはインサートのリップが前方、後方共に隆起し、大腿骨コンポーネントとの適合性が高く、post-cam機構なしに前後の制動が得られるためです。

さらに、回旋の自由度も減少させず、優れた前後安定性を得ることができるという特徴があります。

その他にもACL機能を温存するBCR、BCS型も存在しますが、これらも自分自身がまだ使用している患者を診たことはなく、まだ疑問点も多く、今後の長期的な臨床成績報告などに注目していかなければなりません。

 

 

終わりに

今回は、人工膝関節全置換術(TKA)の基礎〜耐用年数/適応/CR型・CS型・PS型インプラントの違い/リハビリ時のチェックポイントということで、セラピストとして知っておいた方が良いこと掲載しました!

知らなかった方は少しでも臨床に活かして頂ければ幸いです。

なお、今回のような内容はこちらのマガジンでも丁寧に解説しています。併せてご覧いただければ幸いです!

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参考資料

・山田英司,井野拓実:人工膝関節全置換術の理学療法,文光堂,2018
・勝呂徹,井上一:人工膝関節全置換術「TKAのすべて」,メジカルビュー社,2007

“たけ”
“たけ”
この二冊目の人工膝関節全置換術「TKAのすべて」は以前に僕も記事でご紹介しました!この本はめっちゃ痒いところまで手が届く面白い本なのでぜひ読んで見てください。

TKAを担当する方必見のおすすめ書籍!「人工膝関節全置換術[TKA]のすべてー安全確実な手術のためにー」をレビュー!

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たくみロドリゲス
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