こんにちは、骨折研究をしているまっつぁん(@fractureprevent)です!
みなさん、“骨折”といえば高齢者の問題と思いがちではないでしょうか?
骨折の発生は二峰性で小児期と高齢期に多いことがわかっています。
一方で、スポーツ選手にも骨折が生じることがあります。
強健なアスリートがなぜ骨折するのでしょうか。
今回は、その謎を探ってみたいと思います。
疲労骨折を起こしたマラソン選手:高齢者の骨粗鬆症との違いは?
2018年10月に福岡県で行われた「プリンセス駅伝」で、ある選手が足をひねり転倒しました。
その後、足を引きずりながら棄権せずに四つん這いで進み次の選手に襷を繋ぐ様子がテレビで放映されました1)。
その選手は疲労骨折を起こしていたのです。
“疲労骨折”は
自分自身の動作によって繰り返しかかった小さな力で、骨にヒビが入り、それが進むことで完全な骨折になること
です。
一方で、高齢者の骨折は“脆弱性骨折”と言われ、
骨粗鬆症(加齢等により骨が脆くなった状態)によって転倒などの軽微な外力によって生じる骨折
です。
同じ骨折でもその機序は異なります。
脆弱性骨折が病気や加齢によって生じるものとするならば、疲労骨折は健康な人の骨に起こる骨折といえますね。
疲労骨折後のスポーツ復帰率
疲労骨折後にスポーツ復帰にどれくらいの期間がかかったのかを18歳から23歳の大学生アスリートで調査した最近の研究がありました2)。
この報告によると
驚くべきことに38名のアスリートで57の疲労骨折が発生していました。
疲労骨折別の競技復帰間までの期間は以下の通りです。
表1 疲労骨折別の競技復帰までの期間
骨折部位 | 復帰までの期間(週) |
骨盤 | 13.0 |
脛骨 | 13.3 |
足根骨 | 12.1 |
第2−4中足骨 | 11.7 |
第5中足骨 | 11.7 |
骨盤が意外と期間がかかるように感じました。
骨盤といっても部位にもよりますが、例えば上前腸骨棘の骨折では縫工筋や大腿筋膜張筋の起始ですので、治りにくいかもしれません。
この筋肉はどのようなスポーツでも使用しますし、骨折の再発に注意が必要となりそうですね。
また、当然ながら骨折のグレードが不良な人ほど復帰までに時間がかかることも報告されています(グレード5だと17週)。
高校3年間、大学4年間のうち3ヶ月を無駄にすることは、スポーツ人生の大きな損失になるかもしれません。
しっかりと予防対策を考えていかねばなりません。
どんな人が疲労骨折を起こしやすい?
スポーツ選手といえば、強靭な肉体で、筋肉量も多いので骨も強いのではないかというイメージがあります。
疲労骨折を起こしやすいケースは女性で、階級があり、美しさが審査、得点となるような競技者です。
つまり、身体的な美しさを維持するために“減量”を強いられるような場合です。
アスリートになるためにはハードな練習をこなす必要があり、おそらく1000単位のカロリー消費をしているはずです。
それに見合った食事、栄養素をとっていなければ体は栄養不足に陥ります。また筋肉を動かすのに必要なカルシウムも骨から流出していくかもしれません。
そのような背景があり疲労骨折を起こしやすくなるのです。
ランナーにおける疲労骨折の要因について質の高いいくつかの論文をまとめたメタ解析では、“女性”であること、“過去にも疲労骨折をしたことがあること”が、疲労骨折を起こしやすい要因でした3)。
疲労骨折を防ぐためには?4)
特に女性アスリートにおいて栄養不足にならないことが、重要な予防策といえます。
タンパクやカルシウムだけでなく豆腐、納豆からマグネシウムを取ることも重要です。
マグネシウムはカルシウムの摂取に対して1/2程度摂取すると体内でのバランスが良くなるようです。
特に日本人はマグネシウムが不足しがちですので常に意識が必要ですね。
運動面でいうと、急激に運動量を上げずに段階を踏んであげるようなプログラムが必要です。
さらに下肢のアライメント不良も骨折の原因になる可能性もあるので、OもしくはX足の場合はインソール等の対応も重要です。
最後に
“骨折“といっても様々な種類があり、頻発年齢、原因は異なります。
一方で、共通するのは栄養と運動量のようです。
将来の骨粗鬆症を防ぐためにも運動は重要ですが、栄養とのバランスを考えて行うことが重要ですね。
“予防理学療法“の確立が望まれる中、そのような知識を持った理学療法士が増えることでさらに社会貢献できると感じます。
本日は以上で終わります。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
参考資料
1) https://www.youtube.com/watch?v=ZWkgKilN-As
2) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29240544
3) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26582192
4) 運動器の健康.MOVING: Vol.30.2018
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