整形外科

仙腸関節障害による疼痛の特徴と神経根由来の疼痛との鑑別法まとめ

こんにちは、理学療法士のこじろうです!

以前に仙腸関節障害による疼痛の特徴についてまとめました。

前回は言葉が多く分かりづらかった箇所があると感じたので、今回はイラストや写真を用いて分かりやすくまとめてみました。内容が重複するところもありますが、+αの内容も含めて仙腸関節障害による疼痛の特徴と神経根由来の疼痛の鑑別方法とともに更に分かりやすくしたつもりなので、ぜひ最後までご覧頂けたらと思います。

仙腸関節障害~骨盤アライメント評価と鑑別テストまとめ~仙腸関節障害の評価について知りたいですか?本記事では、仙腸関節障害の骨盤アライメント評価と鑑別テストについてわかりやすく丁寧にまとめています。仙腸関節由来の疼痛の鑑別をしたい方は必見です!...

 

腰痛に占める仙腸関節由来の痛みの割合

報告者間で異なりますが、腰痛に占める仙腸関節由来の疼痛は3,5%~30%と言われています。意外と腰痛患者には仙腸関節由来の原因が多いことが分かります。

また、仙腸関節における変性は中部~下部に、30歳代以降で発症しやすいとも言われています。仙腸関節中~下部の支配神経はS1,2後枝、L5前枝、上殿神経があります。

梨状筋の支配髄節はS1,2のため、中~下部に変性が生じると梨状筋にも影響が出てきます。

 

仙腸関節病変の特徴的な疼痛域

仙腸関節の神経支配はL4~S2の下部腰部神経根から仙骨神経根までの広範囲の神経により支配されています。そのため、腰下肢のあらゆる部位に多彩な症状が出現します。

「臀部、鼠径部、大腿後面、足関節」まで広範囲に疼痛が生じ、疼痛部位から一見、腰椎由来の大腿神経痛、坐骨神経痛と鑑別が難しい例もあります。

その中でも仙腸関節障害の特徴的な疼痛部位は「上後腸骨棘(PSIS)周囲の臀部」であります。(図1)。

PSISにまず最初に疼痛が生じ、その後大腿部あるいは下腿部に疼痛が放散していくこともあります。

 

仙腸関節由来の関連痛

手術をしていない100例の仙腸関節障害例の疼痛部位の領域について示したものがあります。

図2のように、PSIS周囲に疼痛が出現する割合は9割以上であり、鼠径部周囲にも2割以上、また大腿外側部や足部周囲まで多彩に疼痛が出現します。

そして以前投稿した「仙腸関節障害~疼痛の特徴と評価のポイント」にも記載していますが、仙腸関節障害の疼痛の特徴として神経根の疼痛と違い、連続性でなく分節的に疼痛が出現するという点が特徴的です。

また、仙腸関節由来の疼痛やしびれの部位は神経根症状と類似しており鑑別が難しいですが、仙腸関節由来ではデルマトームに一致しない例が多いことが分かっています。デルマトームをしっかりと把握しておくと症状の鑑別に役立ちます。

例えば、通常L5神経根障害では疼痛部位は「下腿外側~第1趾」ですが、仙腸関節障害では「大腿外側・下腿外側から第5趾」に出現することがあります。またS1神経根障害では通常「下腿後面~第5趾」にかけて疼痛が出現しますが、仙腸関節障害では「下腿後面~第1趾」にかけて出現することがあります。

このようにデルマトームに一致しない症状は仙腸関節障害を疑うポイントになります。

 

仙腸関節の病態

仙腸関節痛者の疼痛分布について、仙腸関節上部から0~3の4つのセクションに区画化し、関節外ブロックを用いて区画ごとの疼痛分布(関連痛)を調べたものがあり参考になります(図3,4)。

ブロック注射の場所を図3に、それに伴う関連痛の場所を図4に示しています。

“たけ”
“たけ”
これは図3の0に注射をすると腸骨稜に沿った上臀部痛が消失したということを示しているね!つまり、逆にいうと腸骨稜に沿った上臀部痛がある場合、この0の領域に問題がある可能性があるということだね。

 

スポーツ障害と仙腸関節痛

若年者ではスポーツが仙腸関節由来の疼痛と関連している例が多く、鼠径部痛が特徴的であるとの指摘もあります。

特に腰臀部痛を伴う鼠径部痛は仙腸関節障害の可能性が高いと言われています。

 

仙腸関節障害の診断手順

仙腸関節障害の診断手順は以下の通りです。

  1. 一本指さしテストで腰臀部痛が仙腸関節外側縁部にあたるPSIS周囲にあれば疑う

※「仙腸関節障害による疼痛の特徴」の記事に詳細記載

  1. 仙腸関節への疼痛誘発test(Newtonテスト変法、Gaenslenテスト、Patrickテスト)の1つ以上が陽性であれば仙腸関節由来の可能性が高い

※「仙腸関節障害 ~骨盤アライメントと鑑別テストまとめ~」の記事に詳細記載

  1. 仙腸関節ブロックにてその効果が高ければ仙腸関節障害による疼痛と診断

 

このように①~③の流れで大まかには診断できると思います。

更に、これらの前回・前々回の投稿を踏まえて見て頂ければ、より仙腸関節障害の特徴や神経根由来の疼痛との鑑別方法を理解できるかと思いますので臨床に活かして頂ければ幸いです。

 

本日は以上で終わりです。

最後までご覧いただきありがとうございました!

 

参考文献

仙腸関節の痛み 診断のつかない腰痛 [ 村上栄一 ]
・村上栄一:仙腸関節由来の疼痛の診断と治療
・小椋浩徳:3D-MRIに基づく骨盤の歪み(マルアライメント).Sportsmedicine2017 No189:7-12

 

関連動画

CLINICIANSでは仙腸関節障害に関する評価や治療に関する動画も多数掲載しております。本記事と類似する以下は臨床でかなり役に立つので必ず押さえておきたいものです。

“たけ”
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👇仙腸関節疼痛誘発テストの4つの方法👇
①仙腸関節疼痛誘発テスト:前方開解と後方圧縮
https://www.youtube.com/watch?v=bS8MT0kOIbM
②仙腸関節疼痛誘発テスト:後方離解と前方圧縮
https://www.youtube.com/watch?v=bcTn3BW9wdU
③仙腸関節疼痛誘発テスト:大腿スラストテスト
https://www.youtube.com/watch?v=p7bFQs1cLN4
④仙腸関節疼痛誘発テスト:仙骨スラストと4つの疼痛誘発テストの解釈方法
https://www.youtube.com/watch?v=m3UhC8J4Zds

※4つのうち2つ該当すると仙腸関節性の疼痛ありと判断できます。全て覚えておきましょう。

👇関連テスト👇
・後方骨盤疼痛誘発テスト(P4)
https://www.youtube.com/watch?v=35U6fHPCFhU
・仙腸関節荷重時不安定性の評価:ストークテスト
https://www.youtube.com/watch?v=uVNvlGtU1mM

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