整形外科

原因がわからない腰痛は85%というのはもう間違い!?論文からわかる過去と現在の非特異的腰痛の考え方

こんにちは。理学療法士のこじろうです!

以前は仙腸関節性疼痛、椎間関節性腰痛、筋筋膜性腰痛などについて特徴を投稿してきました。

今回はこれらを含むいわゆる原因が特定できない非特異的腰痛について最近の知見を交えつつ話してみたいと思います。

今まで教科書でも当たり前のように言われてきた内容が今では違った見解がされるようになってきていますので最後まで読んで頂けると幸いです。

 

特異的腰痛と非特異的腰痛

まずはじめに、特異的腰痛非特異的腰痛の違いについて知らない方もおられるかもしれないので簡単に触れておきます。

特異的腰痛

脊椎転移癌、化膿性脊椎炎、重度骨粗鬆症、腰椎圧迫骨折などの重篤な疾患による腰痛や、下肢のしびれや疼痛を伴う脊柱管狭窄症、椎間板ヘルニアなど、明らかな腰部の器質的障害を原因とする腰痛のことです。

非特異的腰痛

重篤な疾患もなく器質的障害が明らかでない腰痛のこと。

筋筋膜性腰痛、椎間関節性腰痛、椎間板性腰痛、仙腸関節性腰痛、社会心理的な要因による腰痛などです。

 

腰痛に占める非特異的腰痛の割合

 

「腰痛のうち、非特異的腰痛の占める割合は 85%」

と、書かれている著書や文献をよく見かけることはありません?

“たけ”
“たけ”
あるある!整体とか治療院で原因不明の腰痛は85%もあって、うちはそれが治せます!みたいなんいっぱいいるね。笑
“こじろう”
“こじろう”
僕も本や文献のこの言葉を信じていたけど・・違う見解がでてたから今回紹介しようと思って!

 

2001 年の外国の論文にて、非特異的腰痛の頻度は 80%程度と発表されています。

約20年前の研究結果から、様々な著書や文献にて引用されてきた可能性があります。

そのため、腰痛の85%は原因が分からない、診断できない疾患であると理解されている方が多いと思います。

 

しかし、MRI や脊髄造影、CT など、様々な画像検査の進歩にも関わらず、本当に腰痛の15%しか正確な診断できないのでしょうか?

 

実際には問診と身体所見、理学所見、診断的神経ブロックなどを組み合わせれば正確な診断・治療を行うことが可能であると言われています。

それについて研究された内容がありますので報告させて頂きます。

 

非特異的腰痛に対する研究

2015 年に山口県で行われた多施設共同研究で非特異的腰痛に対するデータが発表されています。

 

対象は 2015 年に整形外科医院を初診された 320 例の腰痛症患者で平均年齢 55,7 歳(20-85歳)、男性 160 例・女性 163 例です。

 

評価内容は問診、身体所見、神経学的所見、画像所見、ブロックなどの確定診断、JOABPEQ、JOA score、Short Form-8、家庭環境や腰痛の程度についてのアンケートなどです。

 

その評価の中で、特異的腰痛と診断されたものは21%で、従来非特異的腰痛といわれてきたものの割合は79%でした。

 

やはり以前から言われてきた数値と大きく変わりはありませんよね?

 

しかし、その 79%からさらに診断のつく腰痛と診断のつかない腰痛に分類して検討を行った結果、腰痛症全体でみると重大な脊椎疾患である腰痛も含めて 78%(250 例/320 例)の患者の正確な診断が可能であったと報告されています。

 

しかも、障害高位まで含めた正確な診断が可能でした。

特異的腰痛 78%(250 例)の内訳は、以下の通りでした。

<重大な脊椎疾患である腰痛>

・腰椎圧迫骨折:10 例

・腰椎椎間板ヘルニア:22 例

・感染:1 例

・腰部脊柱管狭窄症 35 例

 

<それ以外の診断のつく腰痛>

・腰筋膜性:56 例

・腰椎椎間関節性:68 例

・腰椎椎間板性:40 例

・仙腸関節性:18 例

 

まとめ

この研究結果から、従来 85%の腰痛が原因不明と言われていたのは、原因不明なのではなく、診断しづらい腰痛が 85%ということだったのかもしれません。

 

研究結果からも分かるように、現在では正確な評価により約 8 割の腰痛患者の正確な診断が可能といえます。

 

やはり、確定診断にはブロックが有効であり、理学療法士が行えるものではありませんが、問診や画像所見、身体所見、医師との連携によりある程度の正確な診断が行えるのではないかと思います。

 

以前の投稿内容にも、十分ではありませんが仙腸関節痛や椎間関節痛、筋筋膜性腰痛の評価の方法について記載していますので良ければご覧ください。

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本日はこれで終わりになります。

最後まで読んで頂きありがどうございました!

 

“たけ”
“たけ”
もともと言われていた原因不明の非特異的腰痛は割合が少ないということで面白い結果ですよね。実は、これについては僕も以前にTwitterで触れたことがあります。

 

“たけ”
“たけ”
この論文はDiagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study(鈴木ら 2016).で同じ結果を示していますが、心因性は非常に少ないという点は面白すぎますね。腰痛とこれまで原因が分からない腰痛は心因性扱いされていたのですが、違うかもしれないですね(内因性の影響はもちろんありますが・・)。

 

 

参考文献

・嶋田智明:これだけは知っておきたい腰痛の病態とその理学療法アプローチ:109
・鈴木秀典:非特異的腰痛.脊椎脊髄ジャーナル 2019.Vol32.No.2:141-147

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こじろう
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整形外科病院勤務の理学療法士 腰痛/骨盤痛/ピラティス/運動器認定理学療法士/転倒予防指導士 運動器分野、特に腰痛・骨盤周囲の疼痛について発信、吸収していきたいと思います。
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