整形外科

腰椎骨盤リズムから臨床疑問を紐解く(同側腰椎骨盤リズム/対側腰椎骨盤リズム)

こんにちは!たくみ(@TakumiRodriguesです!

本日は腰椎骨盤リズムについてお話したいと思います。

日々の臨床の中で、目の前で起こっている現象に対して「なぜ?」という疑問を持つことが多くあります。

Q.FFD(指床間距離)同じ0cmでも脊柱~股関節の動態が違う?

Q.後方脱臼リスクがある人工股関節全置換術(THA)後症例の前方リーチは安全?

 

このような疑問から、一度運動学の基礎にかえり、腰椎と骨盤の関係性を明らかするために、今回は腰椎骨盤リズム、さらに同側腰椎骨盤リズム対側腰椎骨盤リズムについても合わせて解説します。

 

ではさっそく本題に入っていきましょう!

 

腰椎骨盤リズムとは?

矢状面での運動時の腰椎と股関節との運動学的関係のこと。

健常成人では腰椎屈曲約40°とほぼ同時に股関節(大腿骨上の骨盤)での約70°屈曲を行う組み合わせとなります。

 

上図の①が、正常な腰椎と股関節の屈曲です。

特徴的な部分として、正常な腰椎骨盤リズムが起きていると、脊柱のきれいな彎曲が観察されます。

そして②③に示すものが、正常パターンから逸脱したものです。

 

②では股関節屈曲の可動域制限を伴っています。

ハムストリングスの伸張性低下などの理由で股関節屈曲が制限されている場合、体幹をより前屈させるためには腰椎及び下位胸椎の屈曲を大きくする必要があります。

この腰椎や下位胸椎の屈曲が過剰になると、脊柱後方の組織に常に伸張ストレスが加わり、弱化します。それにより、さらなる屈曲に対しての抵抗力も低下します。

腰椎の屈曲が増加するような姿勢を慢性的にとってしまうと、椎間板に対する応力も大きくなるため、椎間板の変性する可能性が高まってしまいます!

 

一方で、③では腰椎屈曲の可動域制限を伴っています。

脊柱後方の組織の伸張性低下などの理由で腰椎屈曲が制限されている場合、体幹をより前屈させるためには股関節の屈曲を大きくする必要があります。

この股関節の屈曲が過剰になると、股関節伸筋に対する要求が高まりますので、股関節にかかる圧迫力が増大します。

基本的には、この程度の股関節に対する圧迫力には耐えることができますが、高齢者や股関節に障害の既往がある場合は、股関節に疼痛が生じ、変形プロセスが加速される可能性もあります!

 

これらのことから、正常な腰椎骨盤リズムの重要性が伺えます!

そして正常パターンを獲得するために、股関節、腰椎それぞれの可動性確保が必要です!

臨床的には体幹前屈のみで、腰椎骨盤リズムのエラーを捉えることができれば、制限が起きている部位を予測することができ、それによって起りうる二次障害予防にもつながるため、頭の片隅に入れておくと便利です!

 

同側·対側腰椎骨盤リズムとは?

ここからが股関節疾患を多く見てきた僕が最も臨床上大切だと感じる内容になりますが、腰椎骨盤リズムには2種類存在します!

一つずつ解説していきます!

 

同側腰椎骨盤リズム

まずは上図左の同側腰椎骨盤リズムから。

同側腰椎骨盤リズムとは、骨盤と腰椎が同じ方向に回転する運動のことです。

下肢に対する体幹全体の角度変化を最大化し、上肢のリーチを広げるのに効果的な戦略です。

 

そのため、先程から度々出てきている腰椎骨盤リズムは、同側腰椎骨盤リズムのことです。一般的に使われている腰椎骨盤リズムはこれに当てはまると思います。

 

一方で、上図右の対側腰椎骨盤リズムは聞き慣れない言葉だと思いますが、以下でこれについて解説します。

 

対側腰椎骨盤リズム

対側腰椎骨盤リズムとは、骨盤が一方向に回転するときに腰椎が反対側に回転する運動のことです。

この運動の特徴は、骨盤が大腿骨上を回転する際、腰椎上の体幹(第1腰椎の上に位置する身体部分)がほぼ不動であるということです。

対側腰椎骨盤リズムは、腰椎より上部体幹の肢位が、骨盤の回転とは独立して、空間中で相対的に固定される必要がある時に使われます。

簡単に言うと、歩行動作やリーチ動作の際です!

 

臨床疑問を紐解く

これら2種類の腰椎骨盤リズムにより、人間は無意識下で円滑的なADLが行えています。

ここで冒頭での話に戻りますが、

 

Q.後方脱臼リスクがある人工股関節全置換術(THA)後症例の前方リーチは安全?

という臨床での僕の疑問が、この腰椎骨盤リズムを見直したことで解決しました!

 

答えとしては、

THA症例における前方リーチ動作は危険です!!!

 

先程もお伝えしたようにリーチ動作では、対側腰椎骨盤リズムが起きます。

前方リーチ時に対側腰椎骨盤リズムが起きると、リーチ距離が増大するにつれて、腰椎は伸展し、骨盤は前傾していきます。つまり相対的に股関節屈曲角度は増加します!

この股関節屈曲が過度に起きてしまうと、後方脱臼リスクがあるTHA症例では脱臼してしまうリスクは高くなります。

これらのことを踏まえると、ADLの中では床のものを拾う動作(同側腰椎骨盤リズム)よりも、前方のものを取る動作(対側腰椎骨盤リズム)のほうが脱臼リスクは高い可能性があるということです!

THA症例では最も注意が必要です!

“たけ”
“たけ”
非常に面白い視点ですね。こう考えると、下に落ちたものを骨盤を捻りながら(股関節を内旋させながら)拾う動作も危険ですが、かなり低い位置にあるものを遠くからリーチして拾おうとするのもかなりリスクが高いと言えますね。

ただ、誤解がないように補足したいのですが、手術時の人工関節の種類や設置角度、術後麻酔下で確認される脱臼肢位角度を確認した程度にもよって脱臼角度は大きく変わるので、その辺りの話は基本知識だという程で話されておられます。

なので、危ないから日常生活上で前方リーチしないでって指導はおかしいですよね。患者さんの状態をしっかり確認してこのような知識を活用すると良いのではないでしょうか?

 

まとめ

今回は、腰椎骨盤リズムについて解説しました!

しっかりと関節の動態を捉えることで、評価・治療につながるだけでなく、適切なリスク管理にも繋がります。

そして日々の臨床では、常に目の前の現象に「なぜ?」という疑問をもちながら取り組むことで、普段見えていなかったことが見えてくることが多々あるので心掛けて頂ければと思います!

 

なお、僕自身日々のこのような臨床での疑問をもとに、note有料マガジン運動器リハのすべてを運営し情報を発信しております。先日、月額¥980から¥500に変更したばかりですので興味がある方は是非ご覧下さい!

最後までご覧いただきありがとうございました!

 

Writer Profile

たくみ

人工膝関節センターを経て、現在は整形外科クリニックに勤務しております! 研究をはじめとしてEBMの重要性を日々学んでおります。

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たけ
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理学療法士&ピラティスインストラクターをメインに姿勢・パフォーマンス改善のプロとして活動中! 過去には世界で最も患者が多い病院、某大学病院で超急性期のリハビリテーションに貢献。その他にも認定脳卒中、呼吸療法認定士、ガンリハなどの資格を保有。 現在PHIマスタートレーナーを目指しつつ、超急性期から障害予防までの多岐にわたる分野の記事を執筆中。 SNSフォローやメッセージお気軽に下さい♪Youtubeのチャンネル登録もお忘れなく!
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