脳・神経

くも膜下出血① 脳卒中データバンク2015からみた疫学(発症頻度・性差と年齢・動脈瘤部位・予後)

“たけ”
“たけ”
 こんにちは、CLINICIANSの代表のたけ(@RihaClinicians です!

今回は脳卒中データバンク2015で発表された本邦のデータを基に、くも膜下出血の発症頻度、性差、年齢、破裂度脈瘤の大きさと部位、予後について簡単にまとめました。

発症頻度

くも膜下出血は脳卒中全体の5.6%を占めています。

出血性脳卒中だけで見た場合は23.2%の割合を占めていますが、2000年以降は年々減少傾向で推移しています。

これとは逆に、高血圧性脳出血は徐々に増加しています。

性差と発症年齢

男女比は2:1で女性の発症が多いです。

これは、女性の方が平均寿命が長いことが影響している可能性がありますが、閉経後のエストロゲンの減少が関与している可能性が高いことが文献的に示唆されています。

エストロゲンには脳動脈の退行変性を防ぐ作用があるりますが、閉経期以降はこのエストロゲンの低下に伴い、脳動脈のコラーゲンや平滑筋が減弱していくため、脳動脈瘤が新たに発生したり、動脈瘤が増大や破裂しやすいと考えられています。

なお、このエストロゲンの関係もあるためか、男性と女性では発症年齢のピーク時期が異なります。

男性:50歳代がピーク 以降は右肩下がりに発症数が減少
女性:50~70歳代で右肩上がりに発症数が増大し70後半がピーク

破裂動脈瘤の大きさと部位

破裂度脈瘤の大きさは6mm未満が57%、6~14mmが38%、15~24mmが4%、24mmより大きいものが0.7%と、男女伴に6mm未満の小型の破裂が多く大型になるほど破裂は少ないです。

部位は前交通動脈32.9%、内頚動脈-後交通動脈分岐部29.0%、中大脳動脈21.4%、前大脳動脈6.5%の順に多いです。

予後

くも膜下出血の発症後の予後は1/3ルールでおおまかに分類でき、約1/3は死亡、約1/3は後遺症が残る、約1/3はADL自立といった経過をたどります。

転帰に関連する因子としては、脳卒中データバンク2015で4153例を用いたデータが参考になります。

転帰良好をmRS0~2、転帰不良をmRS3~6とし、これを目的変数としたロジスティック回帰分析の結果、以下の項目が転帰に関与する有意なの因子となりました。

ORはオッズ比といって、その因子がどの程度転帰に関与しているかを示しています。

つまり、年齢1.08倍、糖尿病1.07倍、H&KⅡ1.80倍、H&KⅢ3.87倍、H&KⅣ14.05倍、H&KⅤ32.1倍、Fisher分類4 3.31倍、水頭症1.69倍、症候性脳血管攣縮2.91倍、動脈瘤の大きさ15~24mm 2.24倍、転帰が不良になりやすいということになります。

参考資料

本日は以上で終わりです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

くも膜下出血④ 臨床診断と医学的治療~注意すべき臨床所見まとめ~くも膜下出血の臨床診断と医学的治療について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の治療、注意すべき臨床所見を徹底的に解説しています。くも膜下出血をマスターしたい方は必見です!...
くも膜下出血の交感神経過剰緊張状態の評価にStress indexが有用くも膜下出血の交感神経過剰緊張状態やStress index(ストレスインデックス)について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の交感神経過剰緊張状態の病態について解説し、この評価に有用なStress indexの使い方を解説しています。Stress indexやくも膜下出血についてマスターしたい方は必見です!...
くも膜下出血の発症危険因子と再発予防:あなたの指導はそれで本当にいいですか?くも膜下出血の発症危険因子と再発予防について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の発症危険因子と再発予防について丁寧に解説し、再発予防を行う上で注意すべき指導のポイントを丁寧にご紹介しています。くも膜下出血の発症予防をマスターしたい方は必見です!...
アンダーソンの基準(土肥変法):リハビリテーション・運動療法の際のリスク管理、バイタルサインの具体的数値 アンダーソンの基準(土肥変法)について知りたいですか?本記事ではリハビリテーション・運動療法の際のリスク管理、バイタルサインの具体的数値として役立つアンダーソンの基準(土肥変法)について評価上の注意点を踏まえて解説しています。リスク管理についてマスターしたい方は必見です!...
くも膜下出血④ 臨床診断と医学的治療~注意すべき臨床所見まとめ~くも膜下出血の臨床診断と医学的治療について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の治療、注意すべき臨床所見を徹底的に解説しています。くも膜下出血をマスターしたい方は必見です!...
くも膜下出血③ 発症機序、病態と経過~合併症を含めて~くも膜下出血の病態と経過について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の発症機序、病態と急性期〜慢性期に至る経過、合併症について丁寧にご紹介しています。くも膜下出血をマスターしたい方は必見です!...
くも膜下出血② 重症度分類( H&H/ H&K/ WFNS/ fisher )くも膜下出血の重症度分類・評価について知りたいですか?本記事では、くも膜下出血の重症度分類として代表的なH&H、 H&K、WFNS、fisher分類について丁寧に解説しています。くも膜下出血をマスターしたい方は必見です!...
脳卒中リスク管理 概要:自動調節能の破綻と具体的な血圧管理脳血管自動調節能について知りたいですか?本記事では、脳血管自動調節能の破綻とその時期の具体的な血圧管理の方法について丁寧に解説しています。脳卒中リスク管理をマスターしたい方は必見です!...
ABOUT ME
たけ
たけ
理学療法士&ピラティスインストラクターとして姿勢・パフォーマンス改善の専門家として活動中!発信情報や経歴の詳細は以下のリンクよりご覧いただけます。
CLINICIANS公式コンテンツも要チェック!

 

充実の“note”で飛躍的に臨床技術をアップ

CLINICIANSの公式noteでは、ブログの何倍もさらに有用な情報を提供しています。“今すぐ臨床で活用できる知識と技術”はこちらでご覧ください!

≫ noteを見てみる

 

 

実践!ゼロから学べる腰痛治療マガジン

腰痛治療が苦手なセラピストは非常に多く、以前のTwitterアンケート(回答数約350名)では8割以上の方が困っている、35%はその場しのぎの治療を行っているということでしたが、本コンテンツはそんな問題を解決すべく、CLINICIANSの中でも腰痛治療が得意なセラピスト(理学療法士)4名が腰痛に特化した機能解剖・評価・治療・EBMなどを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する整形疾患は勿論、女性特有の腰痛からアスリートまで、様々な腰痛治療に対応できる内容!臨床を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、腰痛治療が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!

マガジン詳細をみてみる

 

実践!ゼロから学べる足マガジン

本コンテンツでは、ベテランの足の専門セラピスト(理学療法士)6名が足に特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術を提供してくれる月額マガジンです。病院で遭遇する足の疾患は勿論、小児からアスリートまで幅広い足の臨床、エコー知見などから足を噛み砕いてゼロから教えてくれるちょーおすすめコンテンツであり、足が苦手なセラピストもそうでない方も必見です!

マガジン詳細をみてみる

 

実践!ゼロから学べる肩肘マガジン

本noteマガジンはCLINICIANSメンバーもみんな認めるベテランの肩肘治療のスペシャリスト(理学療法士)5名が肩肘の治療特化した機能解剖・評価・治療などを実践に生きる知識・技術として提供してくれます。普段エコーなどを使って見えないところを見ながら治療を展開している凄腕セラピストが噛み砕いてゼロから深いところまで教えてくれるので肩肘の治療が苦手なセラピストも必見のマガジンです!

マガジン詳細を見てみる

 

YouTube動画で“楽しく学ぶ”


実技、講義形式、音声形式などのセラピストの日々の臨床にダイレクトに役立つコンテンツが無料で学べるCLINICIANS公式Youtubeチャンネルです。EBMが重要視される中、それに遅れを取らず臨床家が飛躍的に加速していくためにはEBMの実践が不可欠。そんな問題を少しでも解決するためにこのチャンネルが作られました。将来的に大学や講習会のような講義が受けられるようになります。チャンネル登録でぜひご活用ください♪登録しておくと新規動画をアップした時の見逃しがなくなりますよ!

≫ YouTubeを見てみる

※登録しておくと新規動画をアップした時に通知が表示されます。

 

なお、一般の方向けのチャンネルも作りました!こちらでは専門家も勉強になる体のケアやパフォーマンスアップに関する動画を無料で公開していますので合わせてチャンネル登録を!

Youtubeを見てみる